皆様こんにちは。
今日はここ数日間点検をしていたスズキエヴリィのお話を…。
スズキエヴリィ 走行距離299000㌔㍍(もうすぐ30万㌔)。
症状は…。
30分位走行してエンジンを4~5分止めた後に再始動をするとエンジンのかかりがとても悪く、かからなくなってしまう時もある。しかし、1時間ほど放置しておくと普通にかかってしまったり、それでもかからなくなってしまったりと…。
放置している間の時間や気候などは関係ないようです。
走行している間は問題無く、エンジン不調やエンストは起きないそうです。
実はこのお車、10万㌔の時と19万㌔の時にリビルトエンジンに乗せ替えて、今回は3回目のエンジン乗せ替えをしたそうです。
試運転をして良好、1度お客の元へご納車しましたが、数日後に症状が現れて入庫となりました。
取引先の修理工場さんで点検をしたのですが、原因特定に至らず、スズキディーラーへ入庫となりました。
しかし、ディーラーでの点検でも再現性が低い事と走行距離から判断すると、エンジンECUと車体ハーネスやセンサー類インジェクターなどのアクチュエータをすべて交換しないと直らないとの事で見積り出来ないとの解答だったそうです。
とりあえず、エンジンコンピュータを中古にてご用意、車内に積んで(このような診断で中古はちょっと…)。
私の所へ入庫となりました。
とりあえず診断テスターを繋ぎ、故障コードのチェック。
故障コード無し(あれば見てるか…)。
リアルタイムデータも特別異常値を示してはいないのでOK。
まずは基本点検から。
疑わしいのは燃料ポンプ。30万㌔で無交換であることからまずは燃圧点検からスタートしました。
症状の再現性が低いのが一番の悩み所です。
燃圧は2.7~3.0㌔と規定範囲内。エンジン停止30分後にも2.7をキープしています。
この点検数日後かけて10回ほど行いましたがまったく症状が現れず…。
再現性が低すぎるなと感じながらも点検をしていると、ついにクランキングするもののかからなくなりました。
この時の燃圧はしっかりかかっています。
これで燃料ポンプ、燃料フィルターはOKと判断しました。
リビルトエンジンを疑うわけではありませんが念のために圧縮点検。こちらも良好でした。
そしてテスターで診断するも故障コード無し…。
急いでハンディオシロを準備してクランキング。
すると、なんと普通に始動できてしまった…。
むうううう…。車にバカにされているような…。
もしかすると、インジェクターのガソリン漏れ(外ではなくインマニ内部への液垂れ)を疑いました。
エンジン停止後、燃圧低下がなかったのですが、微妙な漏れを疑いインジェクターをすべて外してデリバリーパイプに固定して液垂れのチェックもしましたが、漏れは無し。
そして、水温補正を疑い、水温センサーのチェックもしました。
こちらも正常で、センサーのカプラーの接触不良もありませんでした。
さあ、ここから本腰をいれての点検です。まずはカム角センサーの出力を見ます。
通常時の波形をみてみると、なんかノイズっぽいのが混ざっていますが、きちんと波形が出ています。
何度と無く再現していると、きました。
3秒ほどクランキングしてもかからない。何度かクランキングするもかからない。そして、カム角センサーの出力が無い…。カム角センサーの電源とGNDは取れています。
カム角センサーで決まりかなと思い、数回の点検を繰り返します。すると、やはりかからない時はカム角センサーからの出力が無い。そこで了解を得てカム角センサーを交換してみました。すると結果は良好。これで完治かとおもいきや、またもやクランキングするもののエンジンが不始動。初爆もなくまったく同じ症状に…。
さらに点検を進めます。
取り外したカム角センサーを車両カプラーに取り付けてドライバーをセンサーに近づけて出力をチェックします。
すると燃料ポンプが動きます。う~ん。大丈夫だなぁ。
こうなったら、始動不能な原因となりそうな制御に関するセンサー・アクチュエータ類モニタリングした方が早いと判断。
カム角センサー
プレッシャーセンサー
水温センサー
O2センサー
インジェクター3本
イグニッションコイル
ISCの動作状態
燃料ポンプの状態
が分かるように2chオシロを3台、1chオシロを2台、デジタルテスターと診断機を接続して症状再現時のデータをとらえました。
さすがにこれだけのテスターを繋いだままの走行はできないため、停車状態での再現を願いました。
点検する事数日。
ついに来ました。
症状発生です。
各部パラメーターをチェックします。
センサー系統の電源は良好。
すると、インジェクターは3本とも噴射していません。
カム角センサーからの出力がおかしい(歯抜けとノイズ)
燃料ポンプが動作しない(燃圧は2.8㌔位で保持したまま)
しかしコンピュータの故障コードは出力無し。
やはり、カム角センサーがどうしても怪しいです。
電源・GNDともに良好、出力が不良となるとどうしてもカム角センサーが疑わしいのですが、すでに新品交換済み。
もしかすると、カムプーリーとカム角センサーのギャップ不良か?と思い、タイミングチェーンカバーをはずそうと思いましたが、他人を疑う前にもう少し点検を。
カム角センサー、プレッシャーセンサー、水温センサー等
主要センサー類の電源の瞬断をチェックしてみました。
こちらは問題無し。次にGNDの瞬断をチェック。
すると…。な、な、なんと。カム角センサーと電流センサーのGNDがおかしい。
そういえば、カム角センサーの出力がノイジーだったことを思い出す。
カム角センサーのGNDをテスターリードでしっかりとGNDと接続すると一発でエンジンが始動した。
これでセンサー系統のGND不良があることが明らかになりました。
さあ、GND配線の点検です。すると、インマニの奥下側にあるアースボルトを発見。これを触ってみると見た目には締まっていますが、丸端子は動きます。
やはり、ここで接触不良を起こしているのは間違いなかった様です。
ここを締め付ける前に、1度アースボルトを外して丸端子をチェックしました。すると、何本ものGND配線が集合しており、そのうちの数本が丸端子の圧着部分から断線して切れて離れており、断線した配線同士が接触したりしなかったりしていた形跡がありました。
これらを調べて見たところ、カム角センサー、車速センサー、電流センサー、エンジンコンピュータのGND(一部)であることが分かりました。
これらをすべて修復した所、症状は改善されました。
今回は複数のGND不良があり、他センサー等に回り込んでGNDが取れるときと取れないときがあったためにこのような診断に見回れたようです。
今回の故障の根本は、エンジン脱着時にハーネスが引っ張られた可能性とリビルトエンジンにハーネスを移植した際のボルトの締め忘れが原因だったと思われます。
そういえば…。修理工場様からお車をお預かりするときにナビの調子が悪いと言っておりました。
ナビが勝手に進んでしまう…と。
結果的に、このナビの故障もなおってしまいました。
カム角センサーのGND不良によりカム角センサーの出力が車速センサーに回り込み、車速信号となったのでしょう。
でも、このナビの調子が悪く、勝手に進んでしまうみたいと言った話をきちんと聞いていればもう少し早く発見に至ったかもしれないと思うと情けなく思います。
やはり問診から得られる事は大きいと痛感しました…(-_-)。