峠の小さな物語り　　：Night touring　①

（すべてフィクションです。）

Ｙ県とＳ県の境の峠道。　　　
その手前のパーキング。

「今日もいないのかなっと」

いつもどおり、峠越えの前にパーキングに入る。


半年ほど前から同じ時間帯で、黄色のＦＤ（ＲＸ７）とここで一緒になり、峠を
上がり、Ｍ市側に下りたところまで。

毎週日曜日の夜１０時、約４０分のツーリング。

　　・・・顔も知らないんだけど、おじさん結構楽しみにしてました。

　　・・・今月から見なくなって、今日が４月の終わりだから、もう４回パスかぁ。

「ちゃんと話、しとけば良かったかな？」



ホールの自動ドアを入った所で声を掛けられた。

「すみません、86のドライバーさんですよね」

「えっ、」

「私、黄色のＦＤです」

スタイルが良く、ショートヘア、ライダーズジャケットが似合う、若くて素敵な女性。
ちょっとびっくりです。

「えっ、でもいつもの場所に車は無いけど・・・」
「あっ、黄色の大型・・・バイクもお待ちなんですね」



我々世代は、大型自動二輪免許をお持ちの方には、なぜか敬語になります。

「えぇ、　　 半年ほどですよね、お世話になりました」

「ご挨拶したくて、・・・少しお時間よろしいですか」

「あぁ、はい、先にトイレに行かせてください」

・・・続く