少々細かい話になってしまうのですが……
最近、みんトモさん方々の Lamborghini AVENTADOR Track Day に参加された様子やある方のCountach所有経験などをお伺いするうちに、私もどのくらいランボ、特にガヤルドに憧れていたのかを思い出したのでした。
そのしばらく前から噂が絶えなかったベイビーランボ、2003年の初頭だったはずですがある日のプレスリリースを見た時の衝撃と言ったら、、分野としては畑違いの私ですがデスクの前に全てのリリース写真を並べて貼ったのでした。
1979年からのランチア デルタはもともとが1975年のゴルフに続くジョルジェット・ジウジアーロのデザインです。私もこれにどうしても憧れてオシャレなミッソーニの内装の 1988年式デルタ HF インテグラーレ8Vに…
おそらくは皆様と同じく恋い焦がれた挙句の付き合いに疲れてしまいました。
次にこれまた憧れだったAUDI TTに乗り換えた頃、とにかくガヤルドに大きな衝撃を受けたんですね。
主に1995年ごろから始まってフォード フォーカスに代表された「ニューエッジデザイン」という概念、これに続いたのがジェイ・メイズ (J Mays、アメリカ) 担当だったVWConcept1(まあ初代ニュービートルですね)、その時のアシスタントが「ジーニアス」フリーマン・トーマス(Freeman Thomas) 、TTの生みの親です。ニュービートルよりさらにストイックに振ったデザインはバウハウス的などと評される場合もありますが実態ははたして、こちらもアメリカ人の彼はスタジオから帰ってからも一人アパートのキッチンでスケッチを描いていたと言われています。1998年のTT発表時にはキッチンカー出て来たゼ、と揶揄されたとか。現代AUDIの基礎を作ったのはAVUSかもしれませんが、21世紀自動車デザインの基礎を作ったのはTTで間違いございません。極端に言うと現代の車は、TT以前と以後に分けてしまっても良いぐらい…
ジーニアスのその後はWikipediaでも参照いただくとして、前述のように私個人の興味は突然に再びジウジアーロ(と当時は報道されていた)に持っていかれました。ラップトップでも3Dサーフェイスモデラーが動かせるようになりつつあった時代のことです。この安価で精度の良いサーフェイスモデラーの普及と様々な分野のデザイントレンドの変化は一体のものだったものと思っています。
私にはTTが3Dサーフェイスモデラー入門教材の第一章とするならば、ガヤルドが早くもその最終章ほどにも思えたのでした。半ば平面的な面をエッジでつないで行った「ニューエッジデザイン」から「曲面と曲面をフィレットする…曲面によるエッジ」へ、5年間ほど間での大きな進化。次に進むお手本、イタリアンの血が混ざると?まだこんなにも豊かな方向に展開出来るのかと感嘆したものでした。
改めて検索してみるとガヤルドがどういう経緯でデザインされたのか幾つかの記述がありましたが、イタロデザイン・ジウジアーロのアイデアをベースにランボルギーニ・チェントロ・スティーレのルク・ドンカーヴォルケ (Luc Donckerwolke ベルギー)によってまとめられたものという説に信憑性がありそうな気がしています。
なぜならドンカーヴォルケは時期的にTTからごくわずか遅れてこれまた歴史に残る革新さを提出したA2のデザインを担当していたはずですし、TTはゴルフベースのコンベンショナルなスチールシャーシですがA2はアルミのアウディスペースフレームテクノロジー。デザインと技術の双方がガヤルド開発の背景にあったのでは無いかと推測できるからです。蛇足ながら、今はこの方、個人的に注目の(笑)ベントレーに在籍しているようです!
クリス・バングル (Chris Bangle、またもアメリカ) も微妙にシンクロするように徐々にBMWのラインナップを整理していきます。強く批判されながらもガヤルドと同じ2003年のE60・5シリーズあたりまででネガアールという手法までも一般化することに成功した希代のスーパースターも同じくサーフェイスモデラーのノウハウや使用基準のような考え方を持って部門全体のコントロールを図ったように思えてなりません。BMWへ移籍前の代表作が1993年発売のクーペフィアット、新しさはあったもののまだ古典的な造作方法に見えます。
実際には彼を軸に据えたバイエルンモーターワークス社のカスタマーからの抗議ですら手段にしてしまうようなアグレッシブな賢さが際立ったというのが正確なところかとは思いますが、デザイングループの先進的ビジョンは彼がBMWを離れる直前の2008年にGINAとして結実します。もちろん「i」以前の話です。
サーフェイスモデルデータは今やiPadですら表示が出来るほど、こんな時代が来るとは思ってもいませんでした。それでも3Dサーフェイスモデラーの癖のようなものはTTからほぼ変わってはいないように思えます。3次元的に曲げられた仮想の枠の中にコントロールポイントを持った面を張るという手続きに世界中の(自動車に限らず)デザイナーがごっそりのっかっている状況。
ただ、その後の経過をもう少し良く観察してみると特に意識の高いメイクスでは、そのように一度作った面をもう一歩豊かにするような後処理プロセスを加える、再び車体をサーフェイスの部位の集まりから大きなソリッドなボリュームとして捉えなおすようなプロセス、ディテールではクレーを筋肉質に盛るかような処理を考えつつあるのだろうかと思ったりしています。アルゴリズミックデザインの上に再び人間の手で加筆するような感じ、ルネサンスからマニエリズム?でしょうか、いつの世界でも当たり前かもしれませんが、反動、また反動のスパイラルですね。
長くなってしまいましたが、個人的には10気筒の車に乗ったことが無い (考えてみたらミドエンジンAWDも経験無い) のが心残りなんです!
いつかあのプレスリリースで見た黄色の初代ガヤルドを、できればマニュアルで手に入れたい。
この夢が叶うとしたら子供が成人する頃でしょうか、程度のいい車と自身の体力が残っていてくれると嬉しいのですが…
ところでこんなことを書いたのは、もうちょっとで次に考えてるエントリのネタが届きそうな感じだからです。一部のマニアの方だけにでも喜んでいただけると嬉しいのですが、さてさて
Posted at 2014/06/28 20:39:27 | |
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