2023年03月31日
ある大きな男は玄関の軒先から門を抜け車まで手土産を持つスーツ姿のそれ程恰幅が良いとは思えない彼に傘を傾け笑顔で話しかけてお見送りをしている
その後ろ姿を 挨拶を終えた母と姉と少年は目で追う
少年はあの叔父さん偉いの?
母は 何も言わず少年の頭を撫でた
その記憶は 母と少年から消えることなく数年が経つことになる
少年は一人息子 男は当然のごとく夏休み春休みになると工場に連れて行きアルバイトという名目で継承の道筋を探る それなりに一生懸命頑張り 周りからはボン偉いねと褒められる 自分が気持ち良いからなのか 男の為なのかわからず青年と成長して行く 姉とは大違いだ
当然 高校も理系 大学も工学部選考を余儀なく時間が過ぎる
もう姉は芸大に進学している
高校3年の夏休みの最終志望大三者面談 青年は反乱を企てる
母は肩を落とし三者面談の経緯を男に告げると 男の顔色が変わるのを今でも覚えている 彼は小学生の卒業文集に将来の夢に成りたいもの書いたことがある それになりたいと大学の選考を変えた
言うまでもなく 修羅場と化した 自分に目の前の男を超えられるか自信もないくせに正直にも言えず 何故かあの少年時代の思い出を語り出した 自分が雨に濡れて人に傘を傾ける様になりたくないと・・・ 母の目が一瞬鋭く変わった
その時から男を越えなければと本当の自分の人生が始まったような気がする
その後 姉に養子さんを取り家業を継承した
家業は姉夫婦の努力で順調に成長した
男は引退し 彼の父親に戻った 人生で二度だけ褒めてもらったことがある 本当に嬉しかった
介護している中 母に告げた 今は傘をさしながら肩を濡らした父親を尊敬してると僕は父親を超えられなかったと 我が儘を許してくれた母親と父親に本当に
感謝していると・・・母の目が緩んだ
この数年 両親に出来るだけ寄り添った そして偉大な両親であることを学んだ
・・・愛してくれてありがとう
今週末 母の一周忌と父親の三回忌である
Posted at 2023/03/31 11:42:59 | |
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