もうナイと思うけど（時効だと思うので）

クルマの免許取って、夜な夜な走り回って
いたころ、まだ昭和だった頃ですけど。

一回りほど年上のＳさんってお方がいた。
いつも昼間っからぶらぶらしてて、まともな
職業じゃないなって思っていたのだが。

実は行政書士だか、個人弁護士だかで堅気な
職業のお方だった。
やってる事は到底堅気とは思えなかったけど。

その一例が、差し押さえ物件の強制差し押さえ。
裁判所から仕事を受けて、執行するのだけど。
相手だってギリギリまで滞納して、それでも
居座るって強者ばっかだから、人数勝負で
やるしかないのよ。

そのアルバイトって事で駆り出された事が
何度かあって、当時で日給二万円ですから
かなりオイシイアルバイトだったんですね。
まともな会社で働くより儲かったかも知れない。
だってさ、月間実働20日としたって40万円
ですよ、当時の物価で40万円ですからね。

とは言ってもそんなオイシイ話がしょっちゅう
有る訳じゃなくて、精々月に二回程度だった。

忘れられないのが、銀行の貸し剥がしにあった
って工場で。
経営者の社長が引き篭もっているのを無理矢理
連れ出して、荷物の整理やったんだよね。
これは、仕事しながら物凄く心が痛かった
っけな、だって自分の父親と大差ない社長
だったから。


もう一つは、これはね。
グロ話が嫌なお方は、どっかに行ってください。

差し押さえが決定したあと、所有者と連絡が
付かない状態が一ヶ月ほどって物件。
カギが掛かっていたけど、令状があるので
ブチ壊して荷物の整理にかかる。

２階の奥の部屋からなにやら臭いがするって
話になって。
確かに玄関ぶち破ったときから、ハエが異常に
多いなって思っていたんだけど。

問題の部屋には布団に入ったままの所有者と
思われる変死体っていうか、布団に肉汁が
しみ出して、そこからハエが湧いてるって
状況、即警察沙汰になりましたが。
結局のところ事件性なし、自然死であろうって
結論になって、一ヶ月後に再度仕切り直した
んですが。
あの臭いが取れてないんですよ、家から。
むしろ強烈になってるんじゃないかって
感じで。

これを最後に、このバイトはやめましたけど。

暫くのあいだ、夜中に一人でトイレにいくのが
恐くて恐くてね。



いまでもあるのかな、そんなバイトって。