幸甚の地　行方市玉造町 コロちゃん(タロー)の面影

時は令和5年　茨城県行方市玉造町の
コロちゃん(タロー)の面影を探しに
早春の霞ヶ浦を目指した

何故コロちゃん(タロー)に共感を抱くのか？
自分も前の東京オリンピックの年
家の戸締まりの不始末から
白いスピッツを迷子にしてしまった

生後半年、家に来て2週間
犬は3日飼えば恩を忘れずと
父の言葉を頼りに自転車の荷台に乗せられ
一回4〜5時間、6〜7回の
ご近所捜索をひと月ぐらい続けた
名を叫びあての無い捜索は
夕日の中で疲れた思い出でしかない
最後にはあの犬は借り物だったんでは？
記憶の合理化までする始末
当時6歳、その後見つからないまま
単独で探す術も力も無かった

それから犬を避けるように生きていた
縁あって50歳を過ぎてから愛犬家と
なったが、日頃の散歩中に記憶の中の
白いスピッツへの自責が引っかかって
いた

そんな折、青柳健二氏の著書から
忠犬タローの存在を知った
状況は異なるが迷子の先にある
懸命な再会への努力が身につまされ
以来いつかは玉造町から石岡へ
そんな想いだった


鈴鹿ＰＡドックランにて

京都出発が遅くなり犬連れのため
途中PA、SAのドックランで
長めの休憩を取り
土浦到着が15:30ごろに
土浦の佛照寺にお参り献花ののち

まだ陽に高さもあるので
次の目的である旧鹿島鉄道石岡駅
跡を目指してJR石岡駅へ移動




駅跡はバスターミナルになり
それでも静かな空気の中
JR石岡駅2階連絡通路待合室の
忠犬タローのパネルを見学へ




初めて見た優しく仕上げたタローの姿
コロちゃんはどんな仔犬だったのか？

タローの駅通いの努力の果てに
飼い主が写真を見ることになった
天佑とも思える再会への機会は
年長5歳の記憶で2歳に満たない
仔犬の姿と十数年後の
成犬のタローの姿を
照らし合わせると言う事

チャンスは愛犬と思えずに
終わったという
苦難は姿に反映されていたのか？


夕焼けのJR石岡駅

発車メロディ「ここで君を待ってるよ」が
聞こえた

土浦に戻り宿泊して翌朝
行方市玉造町を目指した



途中、道の駅たまつくりで休憩散歩の
のち旧玉造町駅の跡地に到着



そこは新興住宅地
往時をしのぶものは
土に還る寸前の看板ひとつ…
時間の経過を感じさせる



コロちゃんの送り迎え
ふたりが歩いた駅前通り
彼方の湖面の空が輝いていた



ふたりで08:30に家を出て
気動車の中まで送り
頭を撫でてもらう事で一目散に降車
帰りは15:30に家を出て
到着を改札口でお行儀よく待つ

玉造町駅への送り迎えが
石岡駅で待つことの原点である気がした

そんな幸せな日々が一年続き
習慣がしっかりと身に付いた
飼い主さんが年長の秋

収穫物の行商でごった返す車内
頭を撫でる事が出来ない状況に
ホームに出られずに気動車は発車

二度と共に帰る事のない
最初で最後の小さな旅の始まり…

我々も一路石岡駅へと




途中の浜付近で撤去されて
いない線路跡を見つけた

石岡駅東口到着後
石岡市立東小学校までの
片道およそ2キロを体験するため
散歩してみた

まずは東口を出発


少し歩くと石岡市市役所


国道6号線沿いを進み市役所前
緩い登りが続く



小学校手前の歩道橋
信号を守り歩道橋や横断歩道を
通ったという賢いタロー
老犬には勾配はきつかったと思えた




約30分で石岡市立東小学校正門到着
石岡市の教育政策を反映された
環境の整ったきれいな小学校だった

小学校から昼食のため
善隣幼稚園近くの
日本蕎麦 一成 石岡店へ



関西人にも違和感のない
とてもおいしい昼食

昼食後、2〜300m先の
かつて飼い主が通った善隣幼稚園
飼い主とはぐれた直後
嗅覚にものを言わせて探しあて
3度教室を覗こうと目撃された場所



少し動くとJR石岡駅西口
石岡を離れる前に
みんなのタロー像にご挨拶









タローの歩いた距離は
片道2キロ、それを1日×4回
17年間ほぼ休むことなく行ったという
往復回数は12000回、歩いた総距離は
地球一周を遥かに超えるおよそ5万キロ
片道換算2万回を超える行脚は
亡くなる前日まで続けたという

不世出と思えるこの記録は
ギネスに申請される事もなく、
一般人が目にするのは17年毎日と
簡素に表記する銅像とパネルのみ…
今日も駅を行き交う人を静かに
見守っていた

最後に銅像の首筋を撫でていたら
石岡観光協会関係の方に話しかけて頂き
その方は小学生の頃、タローが
歩いていたのを見たとの事だった。
ご主人は東小学校でご飯をあげる係との事
みんなのタローを身近に感じる瞬間だった



終わりに
最初に墓参のつもりでお参りした
土浦佛照寺はタローが永代供養された
という霊園とは一切関係がなく
埋葬された墓所はもはや存在しない
事を知った

痕跡のように霊園にあった観音像を
供養塔として佛照寺が引きとって
下さりその姿を残すのみだった

玉造町から石岡へ
そこで懸命に生きたタロー
墓所は玉造町をより遠く離れた土浦で眠った

遠い地でタローは土に還り水となり
風となって霞ヶ浦を渡り
ようやく玉造町の飼い主さんの
所へ帰れた様に思えた

コロちゃんに戻るように…