禁煙の成功には遺伝子が大きく関わっていることが、新しい研究で示された。米国立薬物乱用研究所(NIDA)のGeorge R. Uhl博士率いる研究グループにより、ニコチン補充療法(nicotine replacement therapy)や禁煙薬bupropionブプロピオン(商品名:Zyban、日本国内未承認)による禁煙治療の成否の可能性を示す指標となる複数の遺伝的変異が特定(同定)されたという。
Uhl氏によると、禁煙の能力に遺伝的要素(inheritable component)が含まれていることを示す多数の証拠があるという。「単独で喫煙に関わる遺伝子はなく、多大な影響を及ぼす遺伝子もないが、禁煙能力の個人差をもたらす複数の異なる遺伝子を特定した」と同氏は述べている。今回の研究は、米国立衛生研究所(NIH)、たばこ会社フィリップ・モリスおよび製薬会社グラクソ・スミスクラインの支援により実施されたもので、医学誌「Archives of General Psychiatry」6月号に掲載された。
Uhl氏のチームは、禁煙に関する研究に参加した喫煙者550人のDNAを解析。被験者には、ニコチン補充療法、喫煙に有効とされる抗うつ薬 Zyban(※編集注=もともとは抗うつ薬として開発されたが、服薬者で喫煙欲が減退する傾向が認められたため、禁煙薬としてリパッケージして販売)ないしプラセボ(偽薬)のいずれかが無作為に割り付けられていた。その結果、41の遺伝子変異体がニコチン補充療法での禁煙に成功した喫煙者と関連しており、 26の遺伝子がZybanによる禁煙の成功と関連していることがわかった。
Uhl氏は、このような遺伝子変異だけでは禁煙治療の成否を予測するには不十分だとしつつも、この知見により、禁煙治療への反応が人によって異なる理由が説明できると述べている。同氏らは現在、この情報を用いて禁煙治療の効果を増大させることができないかを検討中。将来的には、特定の禁煙治療に反応しやすい喫煙者を知ることによって、個人に合わせて治療法を調整できるようになる可能性もある。
米国肺協会(ALA)のNorman H. Edelman博士は、遺伝子情報を禁煙に利用できるようになるのはまだ先のことだと述べる。現在は、遺伝的な関連を調べるための強力なツールが多くあり、常に何らかの発見がされている。禁煙の成否と関連する遺伝子が発見されたとしても驚くことではないという。個々の治療に誰が最もよく反応するのかを遺伝子により見分けられるようになれば価値があるが、臨床的に利用できる日がすぐに来るとは思えないと、同氏は指摘している。
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2008/06/16 13:23:15