この映画の原作である、アメリカのSF作家リチャード・マシスンのホラー小説「
地球最後の男」を高校だか大学の時に読んだことがあります。 書かれたのは1950年代とかなり古い小説ですが、緊迫感と絶望に満ちた前半、そして急転直下に話が進み、価値観が一気に逆転してしまう圧倒的迫力のラストシーン、そこで主人公がつぶやく「
アイ・アム・レジェンド」という台詞。 その台詞の深い意味に強い感銘を受けました。
この「アイ・アム・レジェンド」は、その映画化ということでとても期待していましたし、僕が最も印象に残った台詞をタイトルにしているという事もあり、かなり楽しみにしていました。 ですが、封切前後から「ちょっと、いまいちかもー」という評判をよく耳にするようになり、結局映画館には観にいきませんでした。 それでも、多少気にはなっていて、今回レンタルで借りてきて観ました。 結論から言うと、千円以上出して映画館で観ていたら後悔しただろうなと思います(笑)。
無人になり急速に荒廃するマンハッタンを鹿が走り回るようなシーンや、記念艦として係留されている空母「イントレピッド」の飛行甲板で展示されているSR-71の主翼上でゴルフするシーン等は印象的でしたが、なんとも脚本が中途半端ですね~。 ネタを振っておいて落ちを付けずにほったらかしってところがいくつかあるのは許しがたい。 ゾンビ(厳密には、ウイルスに感染し理性を失い凶暴化した人間)に知能があるのかないのかよく分からない。 マネキンを使って主人公をおびき出そうとするだけの知能がありながら、罠に掛かった主人公を仕留めようともしない。 主人公の放送を聞いて現れる(ウイルスに免疫のある)生存者が主人公をバーモント州にあるという生存者たちの村を目指そうと誘うのは良いんだけど、主人公が「本当にそんな村が存在しているのか?」という当然の質問をしたら「神様のお告げがあった」といった類の回答をして、そりゃウィル・スミスでなくても信用できないって(^^;。
極めつけは
「レジェンド」の意味。 原作では、価値観や善悪がいつの間にか180度ひっくり返ってしまった世界では主人公が「レジェンド」になってしまうのは必然であり、主人公はそれを諦念と共に静かに受け入れ死と向き合う。 映画では、絶望的になった瞬間(映画的ご都合主義で)たまたまワクチンが完成し、それを完成させたということだけで「レジェンド」になる。 原作では必然で、映画では偶然。 同じ「レジェンド」という言葉を使っていても、意味は原作とは全く違い、中身はとても薄っぺらい。 それなりにヒットしたようですし、原作とは全く異なる娯楽作品としてはそれなりに楽しめるかもしれませんが・・・原作に近いテイストを期待した僕は楽しめませんでした(^^;。
Posted at 2009/02/24 00:11:14 | |
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