ちっぽけな私が、
おもちゃを片手に、
あっちゃらこっちゃら、とんでまわる。
私がカメラに興味を持ち始めたのは、小学生のころ。
祖父がカメラ好きで、いろんなものを撮っては現像してプリントして、
祖母に見せていました。
出張やお出かけの先でのことを、
その写真を広げながら、
祖母にお話ししている景色を、
見ながら育ちました。
二人は本当に仲良しで、
私などは入っていけないくらい、
微笑みあって過ごしていました。
祖母がアルツハイマーを患っていることがわかってからも、
祖父はいろんな写真を彼女に見せて、
いろんな話を聞かせていました。
「これは、何という花なんや?」
「これはね、チョコレートコスモスっていうんですよ。
色がね、チョコレートみたいでしょう」
「本当だね、食べたら、甘いのかな?」
「おばかさんですね、コスモスが甘いわけがないでしょう」
「食べたことがあるのかな?」
「ないけれど、多分、甘くはないでしょう」
「それじゃ、二人で食べてみなきゃねえ」
「そうだねえ、食べてみなきゃ、わからないものねえ」
印象に残っている、二人の会話です。
祖父の写真は、彼の性格からか、
非常に生っぽい質感にあふれた、
そこにそれが触れるような、
緻密な生き生きとしたものでした。
私がカメラをいじり始めてはじめて実感したことですが、
そういう写真を撮るには、
結構な努力が要ります。
努力以上に、思いが要ります。
自分が今見ている、それを、
それに感じている自分の思いを、
なにものかに託して、伝えたい。
共有したい。
そして、
本当は隣にいてそれを一緒にいま見たい。
難しい時代に国際結婚をして、
いろんな苦労を共にして、
手を携えてやってきた、
そんな二人はニコイチで、
一緒にいろんなものを見てきた。
祖父のカメラは、
二人が別々にいる時間だって、
二人が一つであるために、
大活躍をしていたのだと思います。
そんな祖母は他界して、
そんな祖父も他界して、
私の手にはカメラが残り、
二人のほのぼのが残り、
私には大事な友人ができた。
友人・・・
それの定義をなんのかんのは、
今はどうでもいいんですが、
カメラを持って、
そのファインダーを覗く瞬間、
見える人がいる。
それは友人だと思います。
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世界にふれて、
それを美しいと思い、
それを見ていただきたいと思い、
そして本当はもっと近くで一緒に見たいと思い、
シャッターを切る。
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私にとって、
写真とはそういうものです。
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そして、ここのような、
共有できるスペースがあるということは、
写真を撮る大きなモチベーションであります。
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目で見たままを撮ることは、
本当に難しくて、
目で見る以上に何かを表現したい時も、
目で見る以上の匂いとか温度とか味とか、
そういうものを伝えたい時も、
どうしたら伝わるだろうと思い、
私はおもちゃを持て余してしまいます。
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写真でなくても、
物事を伝える手段はたくさんあります。
でも、
言葉にならない瞬間を、
言葉にできない不器用者は、
写真に託してお伝えしたい。
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→だからって、
それによりかかって言葉や表情が貧困になってはいけませんけれど。
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先日、バルバラの訳詞をしていて思ったことがありました。
詞の中に、
誰にも自分の太陽があり、
誰にも自分の悲劇があって、
誰も私の喜びなんて、
誰も私の悲しみなんて、
わかってなんてくれないの。
という一節がありました。
そう、
本当にそうだと思います。
完璧に誰かほかの人と、苦悩や喜びを共有することなんてできないのだと思います。
そんな時、
人間って結局はひとりぼっちなんじゃないかなって思ったりします。
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病に苦しむ人、
災害にあった人、
人に言えないものを持った人、
どんな人だって、
自分の太陽と影を持ったまま生きている。
そしてそれを、完全には共有できなくて、
その違いにさみしさを感じて生きている。
あるいは、あきらめて生きている。
あるいはわかりたくて悩んでいる。
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でも、
わかりあうことはできなくても、
分かち合うことはできる。
私は、分かち合いたい。
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そんな思いで、
シャッターを切ったり、
言葉を紡いでいったり、
そんなやり取りが私を孤独でなくしているということに、
ようやく気付いた、
汗ばむ陽気の一日。
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Posted at 2011/05/21 12:06:10 | |
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