雨でも絶大な安心感! 本当に低燃費!?
快適で走りも愉しいミシュラン「プライマシーシリーズ」を徹底比較したら驚きの連続だった!

――近年ますますシェアを高める、ハイブリッド車(HEV、PHEVなど)や電気自動車(BEV)といった電動車(以下電動車)。高重量でタイヤへの負担も大きく、タイヤ選びがますます大事になってきている。さらに、燃費やウエット性能、静粛性や走りの愉しさなど、ユーザーの要求レベルも高まる一方だ。

そこで今回は、快適性や優れた安全性、上質な走りが自慢の「MICHELIN PRIMACY(ミシュラン プライマシー)シリーズ(以下PRIMACYシリーズ)の中から「MICHELIN PRIMACY 4+(ミシュラン プライマシー フォー プラス、以下PRIMACY 4+)」と「MICHELIN e・PRIMACY(ミシュラン イー プライマシー、以下e・PRIMACY)」を、自動車ジャーナリストの今井優杏さんに徹底比較してもらった。長年ミシュランを愛用してきた今井さんが感じた「両者の美点」と「それぞれの特徴」とは?

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CHAPTER. 01

電動車の性能を引き出す賢いタイヤ選び

わたしたちクルマ好きにとって、クルマの性格を決定づける大きな要素のひとつに“タイヤ”が関係しているというのは、実に当たり前の概念だと思う。だけど近年は、“クルマの電動化”によりタイヤにかかる負担はさらに増すばかり、というのをご存知だろうか。

エンジンだけを搭載していた時代と比べ、モーターなどのパワーユニットのほかにバッテリーも搭載しなければいけない電動車は、エンジン車に比べて車重が重い。さらに、電気由来の瞬発的で大きいトルクや推進力、そしてエネルギー回生を含むハードで過敏なブレーキなどが加わり、実はハイブリッド車や電気自動車といったモーターの力を活用する電動車は、タイヤに大きな負担をかけている=タイヤの仕事量が増えているのだ。

つまり、快適なカーライフを決定づけるのに、“賢いタイヤ選び”はますます不可欠という時代になってきているのをまず、知ってもらいたい。

今回、プレミアムタイヤブランドとして幅広いラインナップを誇るミシュランの中でも、プレミアムコンフォートタイヤとして名高い「PRIMACYシリーズ」から、高いウエット性能に加え摩耗してもその性能が長続きする「PRIMACY 4+」と、燃費性能にも優れた「e・PRIMACY」のふたつを比較した。

PRIMACYシリーズは、快適性や安全性を特に重視しており、走りはもちろんのこと、耐摩耗性やウエット性能のバランスにも優れる、という共通の特徴があるが、正直、同じシリーズ内でどれを買ったらいいのか迷っちゃう……という人は多いのではないだろうか。

今回のテストでは、PRIMACY 4+とe・PRIMACY、それぞれの性格の違いをハッキリと体感することができたので、レポートしたい。

「PRIMACYシリーズ」の最新作である「PRIMACY 4+」。「最後まで続く安心感」をコンセプトに、走行性能や静粛性だけでなく、ウエットでの「性能持続性」にもこだわった。

「e・PRIMACY」は、「ミシュラン史上最高の低燃費性能」を謳い、「PRIMACYシリーズ」の中で環境性能に磨きをかけた新モデル。近年増え続ける電動車にもピッタリだが、電動車以外でも、環境性能と快適性を両立したいユーザーにもオススメできる。

テスターは自動車ジャーナリスト、モータースポーツMCとして活躍する今井優杏さん。長年ミシュランを愛用し、フランス本国の本社やテストコースにも取材で足を運んでいるそうで、豊富な経験と知識から「PRIMACYシリーズ」を評価してもらった。

CHAPTER. 02

“PRIMACYらしさ”という土台に築かれたそれぞれの個性

PRIMACY 4+とe・PRIMACYを履いた日産「ノートオーラ」で、まずは東京都内の一般道から高速道路を走る。

選んだルートは商用トラックも多く走行するエリアだったが、大きな轍や路面の荒れなども頻発するシーンにおいて、PRIMACY 4+、e・PRIMACYともに、ミシュランらしいインフォメーションの明確さと、ハンドリングに対する素直さをしっかりと感じられた。

どういうことかと言うと、ミシュランのタイヤはどれも「路面の情報をドライバーに伝える」のが上手なのだ。白線・荒れ・欠けなどの情報を、路面からしっかりとタイヤが受け止めて、車体側に正しく伝えてくれる。

にも関わらず、PRIMACY 4+とe・PRIMACYは、プレミアムコンフォートのPRIMACYシリーズらしい個性として、その伝え方にちゃんと角を落としたような“丸み”が与えられているのが印象的だった。ガツガツしたような不快感は微塵もなく、むしろ路面の状況を正しく把握できる程度の角の丸め方は、大きな安心感につながる。

その基本的な性格の上で、PRIMACY 4+はやはり、ミシュランのプレミアムコンフォートタイヤとして非の打ち所のない走りを見せた。

レーンチェンジでは、ねじれ方向の入力が加わっても素早く、かつしなやかに車体を立て直すような素直なスポーティさと、プレミアムコンフォートらしい“アタリの柔らかさ”を非常に高い次元で両立している。高速道路での直進安定性はもちろん、レーンチェンジなどのロードホールディング性も抜群だ。

そして、なにより意外なほどに静かなことにビックリした。静粛性は正直、あまり期待していたかっただけに、嬉しい誤算だった。

対してe・PRIMACYだが、路面からの入力やリアタイヤが跳ねる感じなど、PRIMACY 4+と比べ、やや硬めのコツコツとした微細な入力を感じる。e・PRIMACYはミシュラン史上最高の低燃費性能を誇り、転がり抵抗性能は「AAA」。この“前に進む性格”が、ほんの少しの硬さを感じさせる理由と思われる。

しかしその分、特に高速道路では、わずかなアクセル踏力でもタイヤがコロコロと前に進むような軽快さが心地良く、愉しさすら感じてしまった。とは言え、接地感が薄いというわけではないのでご安心いただきたい。

この愉しさと安心感のバランスが「さすがPRIMACYシリーズ!」と唸るポイントなのだが、e・PRIMACYは、「MICHELIN PRIMACY 4(ミシュラン プライマシー フォー)」比較でなんと18.4%も転がり抵抗が低いのだ。にもかかわらず、きちんと路面を捉えている手応えがあり直進安定性にも優れている。そしてコチラも室内の静粛性は抜群で、快適性は非常に高かった。

今回のドライブに選んだのはノートオーラ。日産自慢の「プロパイロット」のように、近年多くのクルマに搭載される運転支援システムは、実はタイヤとのマッチングがとても重要になってくるのだが、e・PRIMACYの直進安定性は想像以上。プロパイロットをオンにして、高速移動を快適にこなすことができた。

「PRIMACY 4+」の走りのキーテクノロジーが、高いブロック剛性を実現する「スタビリ・グリップ・サイプ」。サイプ内の突起により、ブロック同士が支え合い倒れこみを抑制。安定性とハンドリング性能を両立する。

転がり抵抗を抑えた「e・PRIMACY」。その秘密が「エナジー パッシブ コンパウンド」と呼ばれる新開発の高弾性ゴムと、耐久性を犠牲にすることなく内部構造の薄型化を実現した「スリムベルト」という2つの新技術。

「PRIMACY 4+」、「e・PRIMACY」に採用される「サイレント・リブ・テクノロジー」は、接地面における接地部分と溝部分の比率が常に一定になることで、パターンノイズを抑制する独自の技術。プレミアムコンフォートタイヤとして、どちらも優れた静粛性を誇る。

CHAPTER. 03

ワインディングではミシュランらしいスポーティな身のこなし

ミシュランはスポーツ性能の高いタイヤを作るのが非常に上手だ。ソレを求めてミシュランを購入しているという人も多いと思う。そんなイメージをPRIMACY 4+はバッチリと体現している。

ワインディングロードでの機敏な身のこなしや、ブレーキングに対する反応、そしてコーナー頂点でのグリップ感など、「ああもうコレコレ! これぞミシュラン!」な、最高のスポーツフィールだ。

電動車ならではのモーターによる加速は、内燃機関にありがちなトルクの息つぎがない分、登坂のコーナー途中でもクルマをしっかり加速させることができる。しかし、これもタイヤにとって酷な状況であることは間違いない。そんな中でも、しっかりとグリップ力をキープし滑らかにコーナーを攻略する鮮やかな身のこなしに舌を巻く。

こんな最高の手応えに、PRIMACYシリーズらしいコンフォートさまで付いてくるのだから堪らない。もしかして、PRIMACY 4+はミシュランの中でも結構オイシイ選択肢ではないだろうか。

しかし、続いて乗ったe・PRIMACYも、想像を遥かに超える性能を見せてくれた。

確かに、一般道で感じたような、アタリのパリっとしたフィールはあるものの、コーナーで粘るグリップ感や、ブレーキへの明確な反応がとても素直で扱いやすいことに驚いた。そう、e・PRIMACYには、ほかのエコタイヤにありがちなサイドウォールのパツパツ感がなく、実にしなやかに曲がってくれるのだ。

これはレーンチェンジや交差点の右左折時にも感じたが、このしなやかさのおかげで、実にコンフォートな乗り心地を実現してくれている。

ミシュランのタイヤは、「ビード」と呼ばれるリムに噛む部分と、サイドウォールがとてもしなやかで柔らかい。ミシュランのしなやかな足捌きはここに秘密があるのだが、e・PRIMACYとて例外じゃないということなのだ。

高い走行性能でユーザーから人気のミシュランタイヤ。コンフォートタイヤに分類される「PRIMACYシリーズ」にも、そんなミシュランの走りの哲学がしっかりと受け継がれている。

今井さんも思わず「ああもうコレコレ! これぞミシュラン!」と叫んでしまう「PRIMACY 4+」の確かな走りのフィーリング。走り、快適性、安全性、静粛性……タイヤに求められるあらゆる性能をハイレベルでバランスさせた“オイシイ”タイヤである。

低燃費タイヤながら、「e・PRIMACY」の優れた走りを生み出す技術の1つが、「マックスタッチ コンストラクション」。内部構造を最適化し接地圧を均一化することで、走る・曲がる・止まるというあらゆるシーンで接地面が安定し、偏摩耗を抑制するとともに、愉しい走りと安心感を両立する。

CHAPTER. 04

驚愕のウエット性能が絶大な安心感につながる

では、一般道でテストしきれないほどの緊急時や悪天候時での性能はどうか。散水したテストコースにて、60km/hからのフルブレーキと、緊急回避を想定した50km/hでの急激なレーンチェンジをテストした。あまりに凄かったので結論から先に言うと、特にe・PRIMACYは想像以上のパフォーマンスを発揮してくれた。

PRIMACY 4+は、さすがウエットグリップの高さを謳っているだけあって、その性能には風格すら感じさせる。

フルブレーキでは想定の数メートル手前で完全停止してくれるうえ、制動の最初からギュギュという感じで地面にしっかり擦り付けられたかのような密着感があるため、操作がブレず完全停止まで安心してブレーキペダルを踏み抜ける。

レーンチェンジでも、急激なハンドル操作を連続して行っている最中ですらグリップの手応えがあり、まるでドライ路面かのような安心感があった。このあたりは、ミシュランのスポーツタイヤにも通じるモノがあり、同社のタイヤ哲学の片鱗を見せてもらった気分だ。

しかし、e・PRIMACYこそ想像以上だったのだ。

勝手な思い込みで申し訳ないけれど、エコタイヤ=止まらない、もしくはウエット路面が苦手というイメージがある(し、実際グレーディングにもそう記載されていたりする……)。

しかし、「嘘だと思うなら同時公開されている動画を観てくださいよ!」と握り拳で訴えたいほど、呆気なくビチっと完璧に停止してくれた。

確かにPRIMACY 4+に比べると、少し空走距離は出てしまっているものの、何度試しても充分想像以上に短く停まる。制動感覚はPRIMACY 4+と少し特性が違って、タイヤの溝を倒しすぎず、ABSを上手に使いながらカチっと停まるイメージだ。

レーンチェンジも同じで、タイヤ自体の倒れ込みが少なく、シャキっと曲がり、シャキッと停まる。溝の排水がうまくいっている証拠に、タイヤの回転が止まったあとにズズズ……と前にズレるような滑り感はあまり感じなかった。タイヤの回転が止まる=完全停止というのは、なによりの信頼感につながると思う。

さらに、むしろ挙動が軽やかにも感じるので、パワーのない内燃機関のクルマに乗っている人にもオススメしたいほどの軽快なブレーキと身のこなしに感激した。

これは元ミシュランユーザーとしての私の経験則でもあるのだが、実は、ミシュランは摩耗してからの性能が圧倒的に落ちにくい。性能(つまり安全性とも言い換えられる)が長く続くのだ。

あんまり大きな声では言えないけれど……フランス人は実に堅実な性格だ。出費を極端に嫌うという国民性が、ユーザーの声として長年ミシュランに蓄積されていることを疑う余地はない。性能が長続きするタイヤしかフランス本国では売れなかったのだ。つまり、性能が長続きするのはミシュランの歴史に裏付けられているとも言える。

今井さんに「ドライ路面かのような安心感」と言わしめた圧倒的なウエットグリップを誇る「PRIMACY 4+」。トレッド下部にウェット性能の高いコンパウンドを使用し、摩耗した状態でのウェットグリップを向上させる「エバーグリップ・テクノロジー」を採用する。

先代「PRIMACY 4」と比較し、残溝2mmの状態でのウエット性能が約3.7%向上した「PRIMACY 4+」。「エバーグリップ・テクノロジー」のおかげで、履き始めだけでなく、溝が減ったタイヤ交換時まで安心感が長く続くのが嬉しいポイントだ。

低燃費タイヤとは思えないほど、十分なウエット性能を誇る「e・PRIMACY」。「U字グルーブ」を採用し、高い排水性能を確保しながら、摩耗による急激な性能低下も抑制する。

CHAPTER. 05

PRIMACY 4+とe・PRIMACY、選び方のポイントは?

今回のテストで実感したのは、まずプレミアムコンフォートタイヤとしてPRIMACYシリーズの完成度の高さ、そして走りの味が、性格の違うふたつのタイヤの根底にしっかりと流れていること。快適で静か、そしてミシュランらしい走行性能を存分に発揮してくれた。

そのうえで、それぞれをどんなユーザーにオススメかと言えば、PRIMACY 4+はやはり、乗り心地も妥協したくないし、走りも積極的に愉しみたい! という人にオススメしたい。ウエット性能もピカイチなので、どんな天候でもあなたの走る気持ちを盛り上げてくれるだろう。

e・PRIMACYは、普段から高速道路をたくさん走る人や、燃費を大事にしたい人にオススメだ。再度言うが、PRIMACY 4比較で18.4%の低転がり抵抗は伊達じゃない。この前に進む感じ、転がる感じは実際に体感すると目から鱗が出ちゃうほどなのだから。

“エコタイヤ”という言葉自体はごく最近生まれたように感じるけれど、実はミシュランは、30年以上も前から燃費向上に取り組んでいる。PRIMACYシリーズとしての基本性能を落とさず燃費がいい=CO2削減にも効果的ということで、今やe・PRIMACYがたくさんの新車に純正装着されているという事実が、高い信頼性の証ではないだろうか。

冒頭に続き再度の念押しになるが、今まで以上にタイヤの選択がクルマの性格や性能を左右する時代が到来する。ぜひ、ライフスタイルに合った信頼性の高いタイヤを選んで、安心で快適なカーライフを送っていただきたい。

Text:今井優杏 Photo:小林俊樹 Edit:橋本隆志(LINEヤフー)

ミシュランが誇るプレミアムコンフォートタイヤ「PRIMACYシリーズ」の最新作として、高い静粛性、快適性だけでなく、走りの愉しさまで両立した「PRIMACY 4+」。その確かな性能に加え、圧倒的なウエットグリップが磨耗しても長く続くという安心感まで“プラス”された。

コンフォートタイヤでありながら、現代に求められる低燃費性能まで追求した「e・PRIMACY」。新車装着タイヤに数多く選ばれ、自動車メーカーからお墨付きをもらっているその高い信頼性は、30年以上も燃費向上技術の開発に取り組んできたミシュランの面目躍如である。

安全性や快適性、燃費性能、耐久性など、様々な性能が要求される現代のタイヤ。ミシュランは、特定の性能に特化するのではなく、すべての性能が水準以上のパフォーマンスを備え調和する「ミシュラン・トータル・パフォーマンス」を掲げている。近年は「PERFORMANCE MADE TO LAST」をコンセプトに、タイヤの履き始めから摩耗末期まで性能を持続させ、高い安心感と環境負荷の低減を目指している。

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