では、一般道でテストしきれないほどの緊急時や悪天候時での性能はどうか。散水したテストコースにて、60km/hからのフルブレーキと、緊急回避を想定した50km/hでの急激なレーンチェンジをテストした。あまりに凄かったので結論から先に言うと、特にe・PRIMACYは想像以上のパフォーマンスを発揮してくれた。
PRIMACY 4+は、さすがウエットグリップの高さを謳っているだけあって、その性能には風格すら感じさせる。
フルブレーキでは想定の数メートル手前で完全停止してくれるうえ、制動の最初からギュギュという感じで地面にしっかり擦り付けられたかのような密着感があるため、操作がブレず完全停止まで安心してブレーキペダルを踏み抜ける。
レーンチェンジでも、急激なハンドル操作を連続して行っている最中ですらグリップの手応えがあり、まるでドライ路面かのような安心感があった。このあたりは、ミシュランのスポーツタイヤにも通じるモノがあり、同社のタイヤ哲学の片鱗を見せてもらった気分だ。
しかし、e・PRIMACYこそ想像以上だったのだ。
勝手な思い込みで申し訳ないけれど、エコタイヤ=止まらない、もしくはウエット路面が苦手というイメージがある(し、実際グレーディングにもそう記載されていたりする……)。
しかし、「嘘だと思うなら同時公開されている動画を観てくださいよ!」と握り拳で訴えたいほど、呆気なくビチっと完璧に停止してくれた。
確かにPRIMACY 4+に比べると、少し空走距離は出てしまっているものの、何度試しても充分想像以上に短く停まる。制動感覚はPRIMACY 4+と少し特性が違って、タイヤの溝を倒しすぎず、ABSを上手に使いながらカチっと停まるイメージだ。
レーンチェンジも同じで、タイヤ自体の倒れ込みが少なく、シャキっと曲がり、シャキッと停まる。溝の排水がうまくいっている証拠に、タイヤの回転が止まったあとにズズズ……と前にズレるような滑り感はあまり感じなかった。タイヤの回転が止まる=完全停止というのは、なによりの信頼感につながると思う。
さらに、むしろ挙動が軽やかにも感じるので、パワーのない内燃機関のクルマに乗っている人にもオススメしたいほどの軽快なブレーキと身のこなしに感激した。
これは元ミシュランユーザーとしての私の経験則でもあるのだが、実は、ミシュランは摩耗してからの性能が圧倒的に落ちにくい。性能(つまり安全性とも言い換えられる)が長く続くのだ。
あんまり大きな声では言えないけれど……フランス人は実に堅実な性格だ。出費を極端に嫌うという国民性が、ユーザーの声として長年ミシュランに蓄積されていることを疑う余地はない。性能が長続きするタイヤしかフランス本国では売れなかったのだ。つまり、性能が長続きするのはミシュランの歴史に裏付けられているとも言える。