2026/07/22
バッテリーにまつわる都市伝説
(1)バッテリー同士をつなぐと、大電流が流れる?
ネット上には、「バッテリー同士をつなぐと、内部抵抗が極めて小さいためショートしたのと同じ状態になり、大電流(循環電流)が流れるので危険」などと言う人が、学校で電気を勉強した人の中にもいますが、その論理だと、ブースターケーブルでバッテリー上がりの救援をするのも危険という話になります。
更には、救援する際にマイナスケーブルをシャーシー接続する理由についても、「端子同士をつなぐとバッテリーに過大な電流が流れ、内部の鉛電極の配線が溶けて容量の低下や故障の原因になるが、マイナスケーブルを一旦シャーシーに接続する事で流れる電流が抑制され、例えば500Aを100Aに減衰させる事ができるから」と発言する人までいました。
※減衰って普通の人は使わないので、多分その道の人だと思う・・・
一応解説すると、バッテリーの場合は充電分(電気エネルギー→化学エネルギーへの変換分)と内部抵抗による損失分を合わせたものが、一般の電装品でいう消費電力に当たるので、内部抵抗が小さいから大電流が流れるという事はありません。
※もしそうなら、オルタネーターは常にフル稼働を要求されるので壊れる(その前に出力電圧を維持できず電力不足となり、エンジンが止まる)
(2)実際に流れる電流はどのくらい?
では、実際にどの程度の電流が流れるかですが、その昔のJAFの実験では、救援車から被救援車に流れた電流は、7~36Aでした。
ところで、前回ブログより、12.2Vまで低下したバッテリーを充電した際には、
・充電開始5分後の電圧と電流:13.50V&9.5A(CC充電)
→開始時は、電位差が13.5V-12.2V=1.3Vのとき、流れた電流は9.5A(7.3A/1V)
・一方、充電終了直前の電圧と電流:14.03V&1A(CV充電)
→終了時は、電位差が14.03V-13.42V=0.61Vのとき、流れた電流は1A(1.6A/1V)
この事から、バッテリーは充電開始時(回復充電時)には多くの電流を受け入れるが、満充電近くになると、同じ電位差でも殆ど受け入れない事が解ると思います。
※満充電近くでは反応物質が減るため、化学反応のペースが落ちる(充電時内部抵抗の増加)
よって、救援のためバッテリー同士をつないだ時の電流値は、
・元気なバッテリー:12.8V
・放電してエンジン始動できなくなったバッテリー:11.8V
の2つをつないだ場合で、7~8A流れる計算になります。
(3)「補充電する場合、5時間率容量の1/10の電流で」って意味ある?
ちなみに、12.2Vのバッテリーを車上充電(≒CV充電)した場合の充電電流ですが、発電電圧を14.4Vとすると、
・14.4V-12.2V=2.2Vなので、約16A
となります。
そう考えると、充電器やバッテリーの取説にある「補充電する場合、5時間率容量の1/10の電流で」を滅多にしない補充電の時だけ律儀に守っても、殆ど意味がない事が解ると思います。
(4)マイナスケーブルをシャーシー接続する理由は?
冒頭の話に戻りますが、救援の際にマイナスケーブルをシャーシー接続する理由を念のために書くと、端子でスパークが発生することにより、最悪バッテリーが引火爆発することを避けるためですが、実はこれもあまり意味がないように思います。
というのも、過充電でない限り(水素過電圧が高いので)充電中の電解液中の水の電気分解は、ごく僅かしか起きないからです。
※なので、「補充電する場合は、必ずキャップを開けろ」という話も同様に意味がない(車上充電では開けないのだから、16V出せる充電器でも使って過充電させない限り、開ける必要はない)
これもバッテリーや充電器メーカーからすれば、念のためというか責任回避のために言っているのでしょうが、カーメディアや素人整備動画も含め、そもそも作り手からして知識が怪しい上に、その後は伝言ゲームになってしまうので話が余計におかしくなり、大電流ガーみたいな都市伝説がネット上に溢れるというのが現状でしょうか。
Posted at 2026/07/22 15:34:42
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