建設省北陸地方建設局立山砂防工事事務所5tディーゼル機関車

埼玉県加須市にある老舗遊園地「むさしの村」には、遠く富山県からやってきたディーゼル機関車が保存されている。
現在も園内の「むさしの村鉄道」でミニSL(ただしバッテリー駆動)による周回運転が行なわれているが、その予備機関車として購入された、旧建設省立山砂防工事事務所の所有機だ。
この機関車が活躍していたのは、現在の国土交通省北陸地方整備局立山砂防工事事務所が保有・管理しているトロッコ軌道。絶え間なく崩落を繰り返す立山カルデラ内の砂防工事に用いる資材・従事する作業員輸送に供するために整備された工事専用鉄道だ。
牽引する列車は、標高差640mの立山カルデラの外輪山を越えるために設けられた、総数38箇所ものスイッチバックに出入りしながら進んでいく。中でも圧巻なのは、スイッチバックの半数近い18箇所が連続する樺平の先にある区間。見上げるばかりの急斜面にへばりつくように敷設されたスイッチバック軌道上を、行きつ戻りつ標高を稼いでいくトロッコ列車の奮闘は、トロッコファンでなくとも興味を喚起させられる。
冬は大雪に閉ざされ、梅雨の長雨・夏~秋の台風シーズンには土砂崩れに慄きながらの厳しい道行きから開放され、子どもたちの歓声が響く平坦な遊園地路線に再就職した機関車にもし心あらば、自らの幸運と幸福な余生に感謝を捧げたに違いない。
むさしの村鉄道は、メインユースのSL風バッテリー機関車が2010年に更新された。更新前の機関車もバッテリー駆動だったが、その更に前は本物の蒸気機関車(協三工業製6t機・ディズニーランドのSLと同じメーカー)が運用されていた。
昭和の末に製造されたカマとはいえ本物の蒸気機関車に加え、本物のトロッコディーゼル機関車を使っていたのだから、たかが田舎遊園地のアトラクションと片付けられない「本格派」だったのだ。
協三工業製蒸気機関車は、図面だけが駅舎内に掲示されているが、機関車自体も遠く栃木県足尾市の「足尾歴史館」に保存されている。
保存活動の主体は、立山砂防工事事務所で用途廃止となったこのディーゼル機関車を引き取り、むさしの村に斡旋したボランティア団体「けいてつ協会」。幸運なディーゼル機関車が呼び寄せた、これもまた幸運な縁と言うことか。
足尾歴史館内に敷設された軌道では、「けいてつ協会」保有の機関車がレストアされ、体験乗車も実施してくれている。
更なる幸運を期して、むさしの村SL&DLコンビの復活を願うのはさすがに無理だろうか。
住所: 埼玉県加須市大字志多見1700-1 むさしの村鉄道駅前
電話 : 0480-61-4126
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