西武鉄道(株)本社
未だ「落とし前」はついておらず
2014年06月12日

東京都および埼玉県に180km弱(休止中の安比奈線含む)の路線網を有する大手民鉄「西武鉄道」の本社。
埼玉県内に本拠を置くプロ野球の強豪球団・西武ライオンズの親会社にして、路線網の多くが埼玉県内に版図を広げることから埼玉のイメージが強い鉄道会社だが、本社は長らく都心ターミナルがある東京都豊島区池袋に置かれていた。1986(昭和61)年に現在の場所へ移転し、名実ともに「埼玉の企業」となっている(ただし旧本社ビルに本店組織を残す)。
西武鉄道は2004(平成16)年、日本経済にも大きな爪痕をを残す醜悪なスキャンダルに見舞われた。
一つは総会屋への違法な利益供与が発覚し、役員11名が逮捕された商法違反事件。そして有価証券報告書への虚偽記載が判明し、東京証券取引所への上場を廃止・証券市場からの退場を命じられた証券取引法違反事件である。
同族経営の悪弊が如実に露呈したこれらの事件では多くの機関投資家や、虚偽記載の発覚間際に上場廃止を免れんと当時の経営陣から西武鉄道株の購入を勧誘され、万已むを得ず応じてしまった取引先を中心とする企業が、市場価値の暴落・滅失に因り数十億円単位の損失を計上させられた。
それら機関投資家や企業に対しては、訴訟を通じて損害賠償が確定し補償が進んでいる他、西武鉄道自身も旧来からの同族経営を脱し、持株会社を中心に据えて企業統治とコンプライアンス体制の強化を推し進め新組織へ移行。2014(平成26)年には10年ぶりに東京証券取引所への再上場を果たした。
株式市場では景気動向が上向いている状況下で、久々の大型株上場を好感し沸き立ったほか、鉄道利用者に対しては再上場記念の乗車券を販売するなど、歓迎ムード一色に染まっている。
しかし個人的には、西武鉄道の再上場を祝うつもりは無いし、鉄道ファンの端くれながら「記念乗車券」にも興味が湧かない。
前世紀までは積極的に証券会社に出入りし、投資に興味を抱いていた若者(=私)が、一切の金融商品から手を引いた最大の原因は、まさに出入りしていた山一證券の経営破綻(別項「旧山一證券広島支店」参照)。そして金融商品そのものへ不信を決定的にし、止めを刺したのが西武鉄道の商法および証券取引法違反事件だった。
山一證券から資金を引き揚げて以降、私は一度も証券会社の敷居を跨いでいないし、銀行その他の金融機関を経由しての金融商品取引にも手を出していない。
私の中で「落とし前」が付いていないのに、どうして再上場だ記念乗車券だと浮かれられようか。
一個人投資家、しかも些少な資金しか捻出できないゴミインヴェスターが何を言うんだ?と笑われるかもしれない。
そんな掃いて捨てる程いる個人投資家が差し出す小口資金でも、投資先企業に対する不信が連鎖し、東京証券取引所から一斉に引き揚げられた時に何が起きるか。投資の素人でも容易く想像できよう。
西武鉄道が本当に再上場を祝っていいとすれば、株式市場から締め出されていた10年間に投資から遠ざかってしまった人々全員の信頼を回復し、自社に投資してくれるかどうかは別として再び株式市場にお金を提供して貰えるようになってからだと思うのだが。
住所: 埼玉県所沢市くすのき台一丁目11-1 ※電話番号は西武鉄道お客さまセンター
電話 : 04-2996-2888
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