糸魚川市教育委員会

2001(平成13)年4月に発足した小泉内閣の所信表明演説に於いて、新潟県・旧長岡藩に伝わる故事が引用され大きな話題となった。
その年の流行語にもなった「米百俵」のエピソードである。
江戸時代の最末期、幕府側に付き従った長岡藩は新政府軍との戦いに敗れ石高を1/3に減らされた結果、財政難に陥ってしまう。
窮乏を見兼ねた支藩から100俵の支援米が送られるが、長岡藩士小林虎三郎はその米を消費せず、売却して学校(国漢学校:現県立長岡高等学校の前身)を整備する費用に充ててしまった。
腹を空かせた他の藩士は怒り狂い、小林に詰め寄ったが「百俵の米も食えばたちまちなくなるが、教育に充てれば明日の一万、百万俵となる」と諭し、米の分配要求を突っぱねたという。
小泉首相の出身地および選挙区は神奈川県横須賀市。小泉家に婿入りした実父も鹿児島県の出身で、いずれも長岡とは無関係に見えるが、長岡藩は小泉首相が卒業した東京六大学の雄・慶應義塾の黎明期を支えた三つの藩(中津藩=福澤諭吉の出身地/紀州藩/越後長岡藩)の一角で、小林虎三郎の弟・雄七郎はじめ長岡藩出身者が多数慶應義塾に進んでいる。
長引く不況に疲弊した平成の日本と幕末の長岡藩を重ね、「米百俵」の精神で藩政を立て直した史実に、長岡の若者たちと同窓の政治家・小泉氏が自らの改革意欲を奮い立たせたのだとしたら非常に理解し易い。
時は流れて21世紀の新潟。
殿様は違えど、廃藩置県を経て長岡と同じ柏崎県(現・新潟県の一部)に編入された糸魚川で2014(平成26)年、考えられないような恥ずべき横領事件が発生した。
当初予算よりも安い食材を発注して差額を浮かせるなどのやり口で、学校付きの栄養士と給食センターの会計担当者がそれぞれ1500万円・1000万円の横領に手を染めていたのだ。
未来を担うべき子どもたちの食事をくすねるなどという、冒頭記した「米百俵」の精神とは真逆の汚らわしく浅ましい犯罪を、しかも学校関係者が為したとい事実に只々呆れるほか反応のしようがない。ドブネズミもしくはゴキブリ以下の所業である。
学校付き栄養士の犯行は、報道内容が正しければ7年間で1535万円を横領とあるので年額219万円ほど。単年度の学校給食提供日数190日と仮定した場合、1日当たり1万1,541円を連綿と盗み続けていた計算になるが、はたしてこれが全てだろうか。
7年を超える分は既に横領罪の時効が成立しており、訴追できないたために調査していない、あるいは調査結果を公表していないだけではないかと、私は疑っている。
また世代も所属も違う2人の横領犯が、申し合わせて犯行を重ねていたなら、それだけでも極めて醜悪なスキャンダルだが、申し合わせてないとした場合、更に3人目・4人目が潜んでいる可能性を否定し得ない。
同時多発的に同様の手口に拠る犯罪が行われたという事は、犯罪を誘発する要素(=給食発注手順や会計処理手続の欠陥)があったのは明白で、ゴキブリやドブネズミの他にもウジムシ・ダニ・ノミ・ナメクジ・ムカデetc……が居ないと誰が保証できようか。
糸魚川市は再発防止策を徹底するとともに、横領犯から回収した額に、時効成立で回収できない分がある場合はその額も加えて全額を子どもたちに還元し、少しずつでも長期に亘って給食を豪華にしてもらいたいものだ。
一日当たり、一人当たりの金額は些少でも、積み重なれば莫大な金額。
「米百俵」で維新後の日本を牽引する優秀な人材を輩出したということは、逆に「米一俵」をくすねることで、若者の将来を潰してしまうことも起こり得る。
心ある糸魚川市民よ、喰い物の怨みは恐ろしいのだと知るべし。
住所: 新潟県糸魚川市一の宮1-2-5
電話 : 025-552-1511
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