先日より、並行輸入による新規登録の審査要領改正についてネットでは軽く荒れていますね。
ちょっと気になったので、文面のみをそのままに受け取って紐解いてみようかと思います。
●1.背景
独立行政法人自動車技術総合機構(以下「自動車機構」という。)では、並行輸入自動車の新規検査又は予備検査(道路運送車両法(昭和26年法律第185号)第71条の規定による自動車予備検査証の交付を受けた自動車、同法第16条の規定による一時抹消登録を受けた自動車又は同法第69条第4項の規定により自動車検査証が返納された自動車の新規検査又は予備検査を除く。以下「新規検査等」という。)に係る審査については、新規検査等に先立ち、同検査の申請を行おうとする者から、審査事務規程別添3「並行輸入自動車審査要領」(以下「並行審査要領」という。)に基づく並行輸入自動車届出書及び添付資料(以下「届出書等」という。)の提出を受け、この届出書等の事前書面審査をもって、当該自動車の保安基準の適合性確認を適正かつ効率的に行っているところです。
並行審査要領については、的確で厳正かつ公正な審査業務の実施の観点から適宜見直しているところですが、今般、届出書等の一部として事前書面審査を行う「技術基準等の適合性を証する書面」が偽造されていた事案が発覚したこと、加えて、当局からも同種事案の再発防止が要請されていることから、当該書面について、より一層厳格に審査を行うこととするため、並行審査要領の一部を改正し、並行輸入自動車の事前書面審査の的確で厳正かつ公正な実施を図ることとします。
つまり、今までは並行輸入の新規登録は事前に関連資料と必要書類を提出をした上でスムーズに登録をしているよ、と。
ようは、検査事務局が全部確認するんじゃなく、新規登録する側が資料や書類を用意して貰って確認して矛盾も無く車体の検査も大丈夫だったらサクッとナンバー渡せる状態にしてる!ということですね。
だけど、最近「技術基準等の適合性を証する書面」って資料で偽造したやつがいたんだとさ。
で、そんな事もあったし他の不正もちょいちょい無かったわけじゃなかったから、ちゃんとやろうって思ってるんだ。
という事が書かれています。
■そもそも「技術基準等の適合性を証する書面」って?
Q6. 「技術基準への適合性を証する書面」とは何ですか?
A.
技術基準の適用を受ける並行輸入自動車は、同基準に適合することを証する次に掲げる書面を届出書面に添付しなければなりません。
・「技術基準適合証明書」(当該並行輸入自動車が技術基準と同等とされている外国基準へ適合していることを証する書面であって、当該並行輸入自動車を製作した者が証明した書面の原本)
・「技術基準の試験成績書」(当該並行輸入自動車に適用される技術基準の試験成績書の原本(当該試験成績書の原本の提示があった場合には、当該試験成績書の写し)であって、指定の試験機関が発行したもの)
ただし、当該輸入自動車の技術基準に係る構造・装置が日本の「型式指定自動車」が適合している構造・装置と同一であるなど、技術基準への適合性を書面以外で確認できることとしている場合は、技術基準への適合性を証する書面の添付を省略することができます。
詳しくは「審査事務規程」をご覧下さい。(別添3「並行輸入自動車審査要領」 参照)
ふむふむ・・・。
つまり、「技術基準適合証明書」と「技術基準の試験成績書」が主な書類を指すようです。
ただ、日本で型式指定自動車として登録されてる車だったら、それと同じ構造・装置になってれば省略できるよ、と。
・「技術基準適合証明書」
第10号様式
コレをメーカー(製作者)に書いてもらえば証明書になる。
・「技術基準の試験成績書」
これは、前面および側面衝突時の乗員保護試験、乗用車の制動装置試験の事を指すよう。
財団法人日本自動車研究所と外国の11ある試験機関が発行した成績書のみ有効。
●2.改正概要
(1)技術基準等の適合性を証する書面等の取扱いの明確化等
①技術基準等宣言書による適合性証明範囲の明確化
並行輸入自動車として届出する自動車に適用される全ての技術基準等を届出者が明確にし、各々の技術基準等の適合性をどの書面で証するかを整理・区分し、かつ、技術基準等への適合性を証明した書面どおりの構造・装置を有しているかを届出者の責任により宣言する書面(技術基準等宣言書)を届出書等の一部として提出いただき、これにより技術基準等適合性証明に係る挙証範囲を明確化します。
②WVTAラベル等の審査の厳格化
並行輸入自動車の届出において、当該届出自動車に貼付されたWVTAラベル又はプレート、FMVSSラベル又はCMVSSラベル(以下「ラベル」という。)を審査で使用する場合(当該届出自動車の「車名」「製作年月日」「許容限度」「技術基準等の適合性」のいずれかの事項の判断をラベルにより行う場合)にあっては、ラベルの審査を厳格に行う観点から、当該ラベルの真正性を確認します。
これにより、真正性の確認が取れない場合には、届出者は、当該ラベルの真正性を証明するか、または、ラベル以外の方法による技術基準等の証明が必要となります。なお、自動車機構において真正性を確認する期間については、審査期間から除くこととします。
③技術基準等の適合性を証する書面の統一化
技術基準等の適合性を証する書面として、並行審査要領6.12.1.(3)①に規定する「当該並行輸入自動車の構造・装置が、技術基準等に適合している指定自動車等の構造・装置と同一の構造を有し、かつ、同一の位置に備えられている場合」を示す資料については、原則、自動車製作者等から発行されたものに限ることとします。
なお、上記の技術基準等の適合性を証する書面又はラベルに偽造があったことが発覚した場合は、司法当局に告発する等、厳正に対処することとしています。
(2)その他資料の明確化
届出車の区分に関して、「指定自動車等と関連」(型式【-○○-】を付与する区分。以下同じ。)とするかどうかの判断について、二輪自動車以外のものにあっては、「自動車の種別」「用途」「車体の外形」「車枠」「軸距」について、当該届出車と指定自動車等との相違がないものは、「指定自動車等と関連」として取り扱っておりますが、相違がないことを確認するための資料については、自動車製作者等により発行された資料であることを条件とします。
さて、なかなかのご立腹具合ですね。
・①技術基準等宣言書による適合性証明範囲の明確化
つまり今まで以上にこの技術基準にはこの書面(たぶん生産国や年式、装備等を細かく区分して)と指定して、その書類以外は受け付けないよ。
さらにその書類は正しい書類で不正なものではないよ、俺(届出者)が責任を持って正しいと一筆書いてやる!という書類もセットね。(そうすりゃ証拠となんだろ?)
という事ですね。
・②WVTAラベル等の審査の厳格化
WVTAラベル(EU)
FMVSSラベル(アメリカ)
CMVSSラベル(カナダ)
必ず車体に貼ってあるラベル・プレート(以下ラベル)を新規登録の審査で使う場合はまずそのラベルが本当に正しい物なのかどうかを確認するね。
もし、「これメーカーが作ったラベルっぽくなくね?」「偽物クサくね?」って思ったからモノホンか確認する場合は、お前(届出者)がどうにかして証明するか、ラベル以外の方法で技術基準が達しているか証明しないとダメにするね♡
という事です。
つまり、ラベルの偽装もあったって事?
・③技術基準等の適合性を証する書面の統一化
つまり、上の ”そもそも「技術基準等の適合性を証する書面」って?” の項目で触れた「技術基準の試験成績書」と「技術基準適合証明書」のどちらか、またはメーカー(製作者)から発行された証明書で良かったものが今後はメーカー(製作者)が発行した証明書のみとなる。
つまりEUのCOCペーパー(完成車の適合証明書)のみになるのかな。
・(2)その他資料の明確化
今まではヘインズや国内の出版社が出したマニュアルや資料集でも、関連を示す資料として提出しても認められていたんだけど、それを車を作ったメーカーが発行した物しか認めないからね!
という事です。
つまり、サービスマニュアルやパーツリスト、各自動車整備士やディーラー向け、一般ユーザー向けのカタログのみしか資料としては認めない、とするようです・
ようは今まではちょこっと抜け穴があったから、それを潰して厳しくするやで、って話かな?
●3.今後のスケジュール
改 正 :令和3年3月末予定
施 行 :令和3年7月予定
3月9日にパブリックコメントを自動車技術総合機構(NALTEC)が募集したわけだけど、3月21日までの正味12日間、2週間無い・・・。
どこかの噂でなぜか1000通以下だと問答無用で改正、1000通以上だと要検討とか言ってる人もいたけどどこ情報なの?
と、ここまで今回の件を書いてみました。
自分でもなかなか読みづらいなと思ったけど、まあ目を通して下さい。
さて、今回は何が問題になっているか何を騒いでいるのかですが、まずはスケジュール。
こんなにも短く、大して大きく告知もせずにさも聞く耳も持たないかのような対応に批判は集中。
次にすべての並行輸入車が今後は登録できない、ナンバーを取得していない通関証明書のみの車両も7月より新規検査に受けられなくなる、コレじゃユーザーも輸入業者も殺す気で日本の自動車文化を衰退させる!!!、と騒いでいるようです。
あとはラベルの真偽を確かめたり、他の証明をする際にメーカーからの証明書のみでしか受け付けてもらえない!潰れたメーカーはもちろん、メーカーが並行輸入車の証明なんてどう考えても発行してくれるはずないじゃん!!!!と仰っております(笑)
たしかに、このスケジュールはおかしいですよね。
たかが12日で改正予定の月になぜ?
実はクレームが前々から入ってたとか?
ただ、その他については一体あの別紙文章を読めばそうなるのか・・・。
指定自動車と指定自動車等と関連の並行輸入車についての措置であり、そもそも普通に本国で購入して普通に輸入すればまず問題が無い話だと思うんです。
型式不明車については従来通りと言っても間違えではないかと思います。
それなのに、「らしいです」だの「かもしれません」だの「思います」だの他人の言葉を鵜呑みにして、それに尾ひれはひれが付いてどんどん謎な話になっていってしまっている、という印象を受けました。
はっきり言って何も困ることはない、ただアホな業者とブローカーが締め出されるのでユーザーはバッタモンや訳アリ車を掴まされる事がなくなる話なのでは?
と、思った次第です。
2021/3/15 追記
あまりのパブリックコメントの多さに異例の補足説明が入りました。
①についての補足説明
WVTAラベル等の真正性の確認については、場合によっては架装事業者等の連絡先を求めることはありますが、基本的に当機構で確認することを前提としております。
②についての補足説明
今回、技術基準等の適合性を証する書面の統一化を図ることとしているのは、当該並行輸入自動車の構造・装置が、技術基準等に適合している指定自動車等の構造・装置と同一構造、同一位置であるとして技術基準等の適合性を証明する場合にのみ、「原則、自動車製作者等から発行されたものに限る」としております。従いまして、これまでも技術基準等の適合性を証するものとして取り扱ってきた書面等(WVTAラベル又はプレート、FMVSSラベル、CMVSSラベル等を含む)が使用できなくなるということではありません。
③についての補足説明
技術基準等の適用日以前に製作された、いわゆる旧車(クラシックカー)等、技術基準等が適用されない並行輸入自動車の取扱いは何ら変更しておりませんので、今までどおりとなります。
とのことです。
これで批判していたユーザーが頭が悪いので噛み砕いて説明した、という結果になってしまいました。
自分の頭で考えなかったユーザーが多く居た結果だと思います。