散文 91

山頂で飲んでいたコカ・コーラのふたを閉め ドリンクホルダーに置く。


前後左右と荷重移動のたびに ペットボトルは優しく 時には激しく踊りながら

車は下ってゆく。




麓にたどり着くと ペットボトルは醜く凹んでしまっている。

山頂より気圧が高いためなのですが


凹むのはペットボトルだけでなく

下界という日常に戻った 私の「心」でもあるようです。


喉を潤そうと コカ・コーラのふたを開けると


いみじくも

私と同じくらいの溜め息を 「プシュ！」と音をたて吐いた。




気圧と気持ちの変化には奇妙な相関関係があるようです。


別段 約束をせずとも 峠には誰かしらいる。


下界で買ったポテトチップスが 山頂で膨らむのは

気持ちの高揚を表すのかも



収縮と膨張を繰り返す内燃機関のよう。


もしくは心臓のようでもある。








ともかく私達は 自らの脚で

50メートル 6秒フラットでは もう走れない。



少年の夢は 日をおうごと 年をおうごと


歪んで


虚栄心となり


由々しき速度で 車を走らせることで昇華しようとする。





皆





哀れなほど獣のような目をして スピードを求める。





巷でいう「リア充」と言葉尻が似ているが





似て否なり。






彼らは そして私達は






「リアル獣」なのである。







リア獣は 峠クリニックで心療治療をおこなう。




ガソリン代という 治療費を払いながら。










「峠」




Why Japanese people?



山を上がったり 下がったりってアブナイヨ！


アメリカ人ワカラナイよ！



アメリカ ハイウェイばかりネ！












私達の言い分は こうだ






「なぁジェイソン。サムライは 命の削り方が 厚切りなんだよ。」