
あっついっすねー。
どうも。トライズです。
前回は、ブレーキの前後比と軸重に注目しました。
その補足をもう少し。
■まず、ブレーキ性能はパッド面積に左右されないのかと言う点。
なんとなく、パッド面積が広いほうがブレーキは良く効く気がしますね。
パッド面積を広げることは、ブレーキの安定性に貢献します。
まず、パッド-ローター間の摩擦係数には温度依存性があり、ある特定の温度帯でのみ安定した性能を発揮します。
それで、パッドを大きくする、面圧が均一になるようにする、もしくはローターの冷却性能を上げることによって温度変化を抑えるなら、より安定した制動力を得られるようになります。
とはいえ、
同じ温度帯であれば、
パッド面積を大きくしたとしても制動力は変わりません。
このあたりはピンヒールで踏まれると痛い理論ですな。
大きいパッドでも、同じ力で押すなら面積が広がるぶん力も分散しますから。
専門用語では、しゅうどうするめんのめんせきはまさつりょくにはむかんけいとかなんとか言うあれ。
クーロン先生ありがとう。
そういうわけで!
ブレーキの前後バランスを検討する場合、パッド面積は考慮しないことにします。
■次に、片押しピストンと複数ピストンの計算について。
S15のフロントブレーキは、NAが片押しシングルピストンで、ターボが対向4potです。
これまでずっと片押しキャリパーの車をいじってきたわたくしとしては、4potと聞くだけですげー効きそうな、なにやら神々しさすら感じます。
ですが実際片押し→4potにすると、ブレーキ性能はどのくらい上がるのでしょうか。
計算します。
ローター径=280mm
キャリパピストン径(片押し)=57.2mm
断面積=25.68cm2
キャリパピストン径(4pot 1個)=40.4mm
断面積=12.81cm2
ブレーキの基本性能は、ローター径(有効ローター径)と、キャリパピストン受圧面積(キャリパシリンダ内径)によって決まります。
まず、ローター外径は、NAもターボも280mmです。
このうち、ピストンの中心を通る径を有効ローター径とします。
実測すればいいのですがーまーざっくりでw
4potキャリパーはピストンの径が小さいため、ローターの外側を有効に使えます。
これが、複数ピストンキャリパーの大きな利点ですね。
有効ローター半径(片押し)=111.40mm
有効ローター半径(4pot)=119.80mm
次に、キャリパピストンの受圧面積について、
対向キャリパーと片押しキャリパーの受圧面積を比較するには、対向の場合はすべてのピストン断面積の合計を、片押しキャリパはピストン断面積を2倍して計算します。
理由は上記の図のとおり、片押しの場合、キャリパ内の油圧は、ピストン側と、アーム側の両方に作用するから。
片押しピストンは2倍仕事をすると覚えましょう。
なんて合理的。
で、計算すると、
片押しが
断面積=25.68cm2
に対して、
4pot(片側合計)が
断面積=12.81×2
=25.62cm2
たった、0.06cm2しか変わりません!
てか、4potのほうが面積小さいんですね。
さて、改めまして両者の制動力を比較します。
同じパッド、同じ温度、キャリパーのゆがみなどは考慮しないものとしてー、
片押しキャリパ制動力=
25.68cm2×11.14cm=286
4potキャリパ制動力=
25.62cm2×11.98cm=307
片押し:4pot
=286:307
=1:1.07
結果
4potキャリパーは、片押しキャリパーの、
1.07倍効く!!!
ほぼかわらねぇwww
こんなもんす。
ピストン4個で性能も4倍どころか2倍はおろかほぼ変わらないwww
ま、こんなもんす。
フロントのキャリパーが違っても、ブレーキの前後バランスが大きく変わらないようにしてるのかもしれないですね。
そのほうが、メーカー的にも共通部品増えてお得だし。設計も楽だし。
さて、計算上は片押しとなんら制動力が変わらない4potさんの、メリットデメリットについてはこんなかんじ。
メリット
キャリパ剛性を高めやすいため、パッド面圧が均一になりやすい。
シングルに比べて外当たりにできる。
ピストンストロークが少ない分、レスポンスが早い。
デメリット
ローターの振れを拾いやすい。
外側に大きいので、ホイールを選ぶ。
重い。
こんなところでしょうか。
あ、あと、メリット:かっこいい。
ちなみに、日産には、片押し2potキャリパーと言うのも存在します。
c24セレナとかで採用しているあれですな。
片押し2potも4potも、キャリパピストンは同じものなので、基本的なブレーキ性能はほぼ同じです。前後バランスチューンを考えるにあたってはどちらを使っても計算上は変わらないわけですね。
ただし、前述のとおり、対向キャリパーのほうがレスポンスが早いという点でほんの少し有利。
そして何より、片押し2potより4potのほうが軽い!!!という事実。
片押しキャリパとはいえ2potともなるとブラケットが意外に重いんですよね。
最初は、同じ性能なら片押し2potもいいかなーと思っていたんですが、重いなら却下です。
軽いの大好きー!
それではまた!
追記)
後にS15スペックSのブレーキをより詳しく調べたところ、キャリパピストンの外周の最外部は、ローター外周より外側にあるので、ローター有効径は上記数値よりも大きいようです。
同ブレーキの有効半径について、ピストン径ではなく、パッド幅の半分をローター半径から引くと、約117.5mmとなりました。
この値をもとに再計算すると、4potと片押しの性能差は、1.02倍となりました。
検索用: 4pot 4pod 4ポット 4ポッド 対向キャリパー 片押し シングル