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2025年06月15日 イイね!

過積載だとなぜ止まれないか?


過積載の大型車の場合、実際に制動距離が延びてしまいますが、何故でしょう?


1 ブレーキの限界を超えるから?

これまた前に紹介したリンク先には、「本来ならば10トンの荷物を満載する事を前提にブレーキを設計しているのに、それに4割増し或いは8割増しもの荷物を積んだら、ブレーキが完全にタイヤを止められなくなるのは当然の事です。」と書かれていました。

文章で読むだけだと、つい納得してしまいますが、タイヤの慣性モーメントは(I=M×R^2)なので、同じ速度なら大型タイヤほど、また同じタイヤなら速度が速いほど大きくなりますが、積載量が影響することはありません。
※あくまで「基本的には」という話。実際にはタイヤの変形等により影響がない訳ではない。

となると、スピードをあげればブレーキの限界を超える事もありますが、「過積載によってブレーキの限界を超える」には今一つ説得力がありません。


2 タイヤの(摩擦力の)限界を超えて滑るから?

オーバースピードでコーナリングした場合など、タイヤの摩擦力(横力)を越える外力が加わると、当然滑ってしまいます。
ブレーキでも同じことが起こりますが、滑りはじめても一気にグリップが抜けるのではなく、一定の摩擦力は維持されます。

「タイヤがロックすると、自動車を止めようとする力は走行抵抗だけになる」と考える人が、大学教授や理系技術者などでも一定数いますが、以前「餅は餅屋」と書いたように、彼らとて必ずしも専門家ではないため、一般論で述べているだけです。
※専門家によって書かれた本(渡邉徹郎著「タイヤのおはなし」)に、「ゴムのように弾性を示す材料ではクーロンの摩擦法則に従わないケースがほとんどであり、その挙動は大変に複雑です」と記載があるように、一般論を当てはめて考えるのは誤り。

ただ、荷重が増えると下図のように摩擦係数は下がるので、荷重と摩擦力の関係は完全比例にはならず、制動距離にも影響するのは事実です。


「タイヤのおはなし」より


3 結局、荷重移動じゃないの?

前回書いたように、荷重移動は⊿F=Mαh/L、つまり大型トラックのように重くて重心が高い車ほど、一般的には荷重移動は大きくなります。
同一車両(ホイールベースは変わらない)で過積載をすれば、重量も重心の高さも更に大きくなるので、尚更です。

ということで、「主には荷重移動による後輪タイヤの摩擦力の減少、これにゴムの特性によるタイヤの摩擦力の相対的な減少が加わり、更にはその他の細かい要因が重なって、制動距離が延びる」のが正解だと思います。

Posted at 2025/06/15 08:57:54 | トラックバック(0) | 日記
2025年06月14日 イイね!

荷重移動についての力学的考察


前回EBDの話をした時に、荷重移動についてきちんと理解できていなかったため、タイヤと同じように回転モーメントだけで考え、「前後の重量配分が5:5で、かつミッドシップのように重心の近くに荷重が集まっている車が理想」みたいな事を書きましたが、誤りでした(該当部分は削除済)

そこで今回は、荷重移動について、改めて力学的に考察します。


【仮説】
ネットで調べると、どうやら次が正答のようです。
・⊿W=Mαh/L(荷重移動=質量×加速度×重心高さ÷ホイールベース)
では、なぜこの式が導き出されるのかを考えてみます。
※以下、⊿Wは⊿Fで表します(個人の趣味)


【仮説の証明】
まず、停止状態での重心まわりのモーメントを考えます。
図1のように、単純化して1本の赤い棒として捉えると、各モーメントが釣り合っている状態です。

図1

なお、ここで前輪と後輪の反力をそれぞれf1,f2とし、重心からの距離をl1,l2とすると、モーメントのつり合い式は、f1×l1=f2×l2となります。


次に、ブレーキによる慣性力が働くと、図2のように重心を中心にして前のめり=転倒させるモーメントが働きます。
このモーメントは、質量×加速度×腕の長さ(重心高さ)=Mαhで表せます(①)

図2

この時、前輪には圧縮荷重(⊿f1×l1)が、後輪には引張荷重(⊿f2×l2)が掛かります。

圧縮荷重と引張荷重の合計(荷重移動量)は、図3のように⊿F×Lとなります(②)

図3

そして、①(転倒させるモーメント)=②(荷重移動量)のため、Mαh=⊿FLになるので、
・⊿F=Mαh/L
(証明終わり)


【結論】
荷重移動は、
・質量と加速度(減速G)、及び重心の高さに比例する。
・ホイールベースの長さに反比例する。


よって、車重が軽く、重心が低く、ホイールベースが長い車の方が、荷重移動量は少ないことになります。


なお、前に紹介したリンク先(クルマが重くなっても制動距離は変わらない)には「前輪荷重が大きいクルマほど、荷重移動により制動距離は長くなる」旨書かれていましたが、これも誤りです。
※国交省ブレーキテストのデータ解析だけで結論付けたせいでしょう。

Posted at 2025/06/14 08:56:49 | トラックバック(0) | 日記
2025年06月10日 イイね!

荷重移動を考えて走ろう(EBDの誤解)


EBDについては、よく下のようなグラフで説明がなされます。
※Electronic Brakeforce Distribution(電子制御制動力配分装置)



本田技研工業のHPより


つまり、「重積載時には制動時の後輪荷重が増えるので、後輪により多く制動力を配分することで、停止距離を短くできる」といった説明です。

しかし、これは「重ければ重いほど、ブレーキが効かなくなる(のでブレーキを強くする必要がある)」という、一般ユーザーの誤解に基づいた間違った説明です。
※なぜ誤解であるかについては、前回までのブログで書いた通り。

本田が「難しい話をしてもどうせ一般ユーザーには伝わらないだろうから」と、敢えて(ユーザーの誤解に迎合して)解りやすく説明したのか、あるいは文系の広報担当者が勝手に要約(解釈変更)したのかは解りませんが、いずれにしても「自動車メーカーなのに正確な情報を伝えていない」という点で、いかがなものかと思います。


積載時に後輪へのブレーキ配分を増すのは、正しくは「荷重移動量が増えることで、前輪の荷重が増す一方、後輪の荷重が減るため」であり、言い換えれば、
前のめりが酷くなるからです。

前のめりが酷くなると、前輪の荷重=摩擦力は増えるが、後輪の荷重=摩擦力は減るので、簡単に言うと前はブレーキがモロに効くが、後ろは浮いちゃって効かない状態になります。
※つまり、本田の説明は真逆だということ。

そこで、前輪に対して後輪のブレーキの効きを強くする(同じ踏み込み量でも後輪を早めに効かせる)ことで後輪の摩擦力を上げ、制動距離を短くしようという仕組みが、EBDです。
※ちなみにマツダは、ミレーニアのビデオカタログの中で「(定員乗車時に)EBD非装着車だと、車の荷重移動によって後輪のブレーキ力が不足し、制動距離が延びてしまいます」と正しく説明しています。


本当のプロドライバーは、このような物理の原則をまさしく身をもって体感しているため、次のような自動車評論家には決して真似の出来ない素晴らしい話ができるのです。




SCORPION MAGAZINEより


全文はこちら↓
プロに教わるドライブルートの走り方①【ドライビングポジション&視線の置き方】
https://www.abarth.jp/scorpion/for-beginners/5168

プロに教わるドライブルートの走り方②【コーナーのライン取り&ステアリング操作】
https://www.abarth.jp/scorpion/for-beginners/5229

プロに教わるドライブルートの走り方③【ブレーキング&荷重移動】
https://www.abarth.jp/scorpion/for-beginners/5304

Posted at 2025/06/10 16:44:15 | トラックバック(0) | 日記
2025年06月09日 イイね!

ブレーキの話(追記)


前回までに「制動距離に、車重は影響しない」と書きましたが、「じゃあ、なぜ大型車はエアブレーキのような強力なブレーキを備える必要があるのか?話が矛盾しているじゃないか」と納得できない人もいると思うので、おまけで。

おそらくそういう人は、ブレーキによってタイヤの回転を止めるのと、タイヤによって車を停止させるのとを混同しているのではないでしょうか?(実際、ネット上にはそういう論調のサイトが多い)


1 ブレーキによってタイヤの回転を止めるには?【ブレーキの制動力】

ディスクブレーキなら、ブレーキによってローター(タイヤ)の回転を止めるには、ローターとパッドとの間の摩擦力を考える必要があります。

この場合、最大静止摩擦力(F=μN)において、μはローターとパッドの間の摩擦係数、Nはパッドを押し付ける力(正式にはその反力)ですが、大型車ほどタイヤの慣性モーメントが大きいので、ローターの回転を止めるにはより大きな垂直抗力、つまりは強力なエアなり油圧なりが必要になります。
※「ローターやパッドを大型化して接触面積を増やし、(ブレーキの)制動力を上げる」などと平気で言う自動車評論家もいますが、接触面積がいくら増えようが摩擦力は上がりません(∵F=μN)


2 タイヤによって車を停止させるには?【車(タイヤ)の制動力】

この場合には、ブレーキそのものではなく、(前回までに書いたように)タイヤと路面との間の摩擦力を考える必要があります。

タイヤと路面間の摩擦力は車重と比例関係にあり(タイヤに掛かる荷重が垂直抗力となるため)、車重が倍になれば運動エネルギーも倍になりますが、同時に摩擦力も倍になるので、制動距離は同じという事です。
・F’=μ’N(動摩擦力=滑り摩擦係数×垂直抗力)
 ここでN=Mg(垂直抗力=質量×重力加速度)より、F’=μ’Mg
※厳密にはタイヤ(ゴム)の摩擦係数は荷重に対して一定ではなく、また荷重移動の程度によっても各タイヤの滑り摩擦係数は変化するため、完全な比例関係にはならない。


要は、車の制動力(制動距離)を考えるにあたっては、
・ブレーキはローター(タイヤ)の回転さえ止められれば十分で、それ以上に強力であっても宝の持ち腐れである。
・車の制動力は、タイヤが同じなら(荷重移動等を考えなければ)車重に関わらず一定である。
という話です。


P.S.
前に紹介したリンク先が、過去に価格コムも上で炎上していたようです(笑)
真っ向否定する人も多いようですが、「ブレーキ強化→制動距離が短縮される」と思い込んでいる人は、まず1と2を区別できていないのだと思う。

かつてブリヂストンが、「タイヤは(ハガキ1枚に)命を乗せている」とCMしていましたが、走る・曲がる・止まるはタイヤと路面と間の摩擦力があるから可能な訳で、いかに高性能なエンジンやブレーキの車であろうとも、タイヤの能力以上のことは出来ません。

Posted at 2025/06/09 17:03:32 | トラックバック(0) | 日記
2025年06月06日 イイね!

フルブレーキングできますか?(3)


リンク先の記事、いかがでしたか?

ひとつ付け加えるならば、『推測ですが、ABSが効いているとはいえ、もしかしたら急制動の場合、タイヤが熱で融け始めて路面にへばり着こうとして、普段より摩擦係数が高くなるのかもしれません。』と書かれていましたが、理由はともかく、実はタイヤの摩擦係数は、スリップ率15~20%(概ねABSが効いている領域)で最大になります。


画像は「タイヤのおはなし(日本規格協会)」より
※脱線しますが、「マンガだとタイヤがロックしてキキーと急停止するが、実際にタイヤがロックすると自動車を止めようとする力は走行抵抗だけになるので、中々停止しない」などと書かれた、大学教授が監修した一般向けの本もありますが、表のとおりロック時でもタイヤの摩擦係数は十分に高く、「物理の一般原則を当てはめるだけで、常に正しい答えが得られる訳ではない」という一例でしょう(餅は餅屋)


一般的には、「ABSはフルブレーキ時でもハンドル操作ができる」という認識でしかありませんが、ハンドル操作ができるというのはスリップ率が低い(ロックしていない)からで、結果としてABS作動時に制動距離が最も短くなります。
※ABSも早めに作動する車や遅めの車など、メーカー等により微妙に癖があるようですが、このスリップ率15~20%を正確にキープできるABSを備えた車こそが、本当の意味での高性能なブレーキを持つ車だと思う。


いずれにせよ、自動車評論家の言う「ドイツ車はブレーキの効きが良い」は、例えばセミメタルパッドを採用するなどして、踏み始めの効き(食いつき)が良いという所謂感覚上の話に過ぎず、ブレーキの本来の効きである車の制動力とは無関係の話だったのです。
※車検のブレーキテストで、タイヤロック時の制動力を確認するのはこのためです。

【結論】
「日本車のブレーキは効きが悪い」などと、さも解ったかのようにいう人は、
ブレーキがきちんと踏めていないだけの人です。
※正確には「踏み始めの効きが悪い」と表現すべきでしょう。


とは言っても、表題の「フルブレーキングできますか?」のとおり、一度も経験したことがないと、いざという時に思い切りブレーキが踏めないのではないでしょうか?

金と時間さえあれば、サーキット場でJAFなどがやっているドライビングレッスンを受けることもできますが、そこまでやる人は少ないと思います。
なので、教習所での(初速40キロからで良いので)フルブレーキング体験を義務化しても良いのではないでしょうか?


【ここからは余談】
さて、前回紹介したサイトですが、他にも興味深い記事が多いので、時間があったら読まれることをオススメします(中には、少しばかり「?」を付けたくなる記述もありますが・・・)

この方は、見識が広いだけでなく文才もあるため、例えば下記の表現などは秀逸だと思います。

『経験の浅い技術者は、この誤差を新たな発見と早とちりしたり、人類が数世紀も掛けてようやくたどり着いた理論や法則を安易に否定したりしますが、それは単につきとめられない誤差のせいでしかないのです。』


最後に、この方が自動車評論家への提言を書かれていますので、引用します。



私自身、過去のブログで自動車評論家の事を「(アルミテープチューンに簡単に騙されるように)大した感性もないくせに、剛性感だリニアリティだとさも解ったかのような記事を書く」だとか、「車の電気の流れも知らないようなメカ音痴なので、技術系の解説はメーカーの広報資料を書き写すだけ」などと散々批判してきましたが、その辺りも明解にまとめられているように思います。

Posted at 2025/06/06 08:17:18 | トラックバック(0) | 日記

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「過積載だとなぜ止まれないか? http://cvw.jp/b/2036415/48486763/
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