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2026年10月22日 イイね!

ブレーキフルードは混ざらない?


車いじりの素人の人が、「リザーバータンク内のブレーキフルードを交換した」という話を意気揚々とネットに書き込んだことに対し、(自称)玄人の方々から、「タンク内だけ交換しても全く意味がない」などと、まるで鬼の首を取ったかのように総攻撃されていました・・・(ネットあるある)

その理由は、タンクの中身だけ換えてもフルードは混ざらないからというものですが、何故混ざらないのかというと、
①エンジンオイルなどと違って循環構造ではないから
②ブレーキホースが細いので逆流できないから
などを挙げていました。

②の「ホースが細い」に関して言えば、分子のサイズを考えれば、たとえクラスター化していたとしても目に見える大きさではないので、かなり稚拙というか乱暴な意見ですが、①については納得する方も多いのではないでしょうか?


さて、以前にエアコンの話を書いたときに、熱力学の入門的な話をしたかと思いますが、熱力学第2法則(エントロピー増大則)を理解していれば、①もすぐに否定できる話なのですが、では、エントロピー増大則とは一体何なのでしょう?

よく使われる例えだと、「熱いコーヒーに冷たいミルクを入れたとき、かき混ぜなくても(熱対流がおきて)両者は自然と混ざっていく」があります。

エントロピーとは乱雑さの状態を表す言葉や指標であるなどと言われますが、コーヒーとミルクだけの状態では、それぞれエントロピーは低いが(=秩序のある状態)、カップの中で一緒になると、両者が混ざり合ってエントロピーが増大する(=乱雑な状態になる)という話です。

要するに、エントロピーが増大するのは、熱の移動、つまりは熱力学的に駆動されて起こる自然現象(不可逆過程)になるので、誰にも止められないし、元に戻ることもありません。
※なお、「部屋を片付けてもすぐに散らかる」は自然現象ではなく、単にその人がだらしないせい←自分の話ですが(笑)

なので、ブレーキ付近で温められたフルードは、エントロピー増大側に従って徐々に混ざりあっていくことになります。


P.S.
と書いても、「理論と現実は違う」とか、「ブリーダープラグから排出されるフルードが汚れているのが(混ざらない)証拠だ」などと否定する職人気質の人が必ずいるので、一応書きますが、
・排出したフルードが黒っぽく汚れていたりするが、あれは沈殿物(例えばピストン周辺のグリースなど)のせいであり、フルードそのものが混ざらないという証拠にはならない。
・また、自動車の取説にもメンテナンスに関する記載が載っているが、そこにも「リザーバータンクのフルードが汚れていたら交換時期」と書かれている。
※だからと言って、タンク内だけの交換は推奨しないが。

職人気質の人は知識より経験を重視しますが、過去の著名な科学者たちのように、本当に頭の良い人ならそれで正しい知見を得られますが、我々のような凡人なら、その前にある程度理論を抑えておかないと、なかなか正解に辿り着くのは難しいと思います。

Posted at 2026/10/22 20:43:10 | トラックバック(0) | 日記
2026年09月30日 イイね!

【おまけ】 慣性モーメントのはなし


今回は、トルクの話でも出てきた慣性モーメントについて、もう少し詳しく考えてみます。

慣性モーメント(Inertia)は、「質量×回転軸までの距離の二乗」で定義されます。

従って、I=M×R^2になりますが、これは「質量が全て円周部分に偏っている」と考えた場合であり、タイヤ&ホイールのように質量が全体に分かれている場合には、このまま適用できません。


(1)質量が全て円周部分に偏っている場合

まず、I=M×R^2になる場合ですが、トイレットペーパーの芯のような厚みのない円筒を、扇形にx等分して考えてみます。
※簡素化の為、軸方向の幅(高さ)は考慮せず二次元で考える。

この場合、1個当たりの質量は M/xで、回転軸までの距離はすべてRなので、1個当たりの慣性モーメントはM/x×R^2になります。

これがx個あるので、
・I=M/x×R^2×x=M×R^2


(2)質量が全体に(均一に)分かれている場合

今度は円盤で考えますが、ここでは同心円法と呼ばれる積分を使った円の面積の求め方を応用します。
※同じく高さは考えない。

円を中心から外側に向かって(バウムクーヘンのように)無数の同心円で分割すると、ある同心円(内径r、外径r+dr)の微小面積dSは、内径rの円周の長さ2πrと微小幅drとの積で求められます。
・dS=2πr×dr

質量は、これに面密度ρを掛けて2πr×dr×ρになるので、この同心円の慣性モーメントは、
・2πr×dr×ρ×r^2=2πρr^3×dr

これを、rが0からRまでの範囲で積分すると、
・I=∫〔0,R〕 (2πρr^3) dr
=2πρR^4/4
=πρR^4/2

ここで、質量M=πR^2×ρなので、
・I=M×R^2/2
になります。

つまり、(1)の半分の値になるという話です。


P.S.
因みに、上記1,2ともに、タイヤ&ホイールのように軸方向に幅(高さ)があっても同じ式になります。

様々な剛体の慣性モーメント(金沢工業大学HPへのリンク)
https://w3e.kanazawa-it.ac.jp/math/physics/category/mechanics/rigidbody_mechanics/rotational_motion/henkan-tex.cgi?target=/math/physics/category/mechanics/rigidbody_mechanics/rotational_motion/moment_of_inertia_of_various_rigid_bodies.html

Posted at 2026/09/30 13:02:27 | トラックバック(0) | 日記
2026年09月23日 イイね!

ギヤ比とトルク、パワーのはなし


前回、エンジンで重要なのはパワー(仕事率)であり、「高速走行時にはパワーが、発進や登坂時にはトルクが重要になる」という通説はおかしい、という話を書きましたが、今回はギヤを含めて考えてみたいと思います。

自動車はトランスミッションとデフという2段階のギヤで減速しますが、単純化してギヤが一つだけで、かつ伝達効率(エネルギー損失)なども考えないとします。


(1)ギヤで回転を下げると、なぜトルクが増えるか?

1,000回転時のトルクが100Nmのエンジンがあったとします。
①ギヤ比が3:1なら、出力軸の回転数は約333回転
②ギヤ比が1:1なら、出力軸の回転数は1,000回転

上記の①、②ともに、力学的エネルギー保存の法則により、パワーは同じ約10,466Wなので、①の出力トルクは300Nm、②の出力トルクは100Nmになります。
※W=T×2πn/60(パワーはトルクと回転数の積に比例する)

つまり回転を下げた分、①の方がトルクが増えることになります。


(2)ギヤを下げると、(トルクだけでなく)パワーが増える。

次に、このエンジンの3,000回転時のトルクを250Nmとします。
で、出力軸を同じ1,000回転で揃えた場合には、
③ギヤ比が3:1なら、出力トルクは750Nm(エンジン回転数3,000)
④ギヤ比が1:1なら、出力トルクは100Nm(エンジン回転数1,000)

この時、パワーは③が78,500W、④が10,466Wになります。
※つまりトルクも増えるが、それによりパワーが増える事が重要。

言い換えれば、ギヤを下げてトルクを上げるのは手段(原因)で、それによりパワーを増やすのが目的(結果)なのだから、冒頭に書いた通説のように、片方を結果で、もう片方を原因で語るのは言語的にもおかしい、という話になります。

Posted at 2026/09/23 16:00:12 | トラックバック(0) | 日記
2026年09月13日 イイね!

パワーとトルクって何ぞや?(パワー編)


さて、今回はパワー編です。

パワーを言葉で表せば、「単位時間あたりの仕事量(単位時間内にどれだけ仕事をするか)」つまり仕事率(W)の事になりますが、それでは「何を言ってるか、さっぱりわからん!」と思うので、もう少し掘り下げてみます。


で、再びSI単位系の話ですが、
・N(ニュートン):力=質量×加速度だから、kg×m/s^2=kg·m/s^2
・J(ジュール):仕事=力×距離だから、N×m=kg·m^2/s^2
・W(ワット):仕事率(単位時間あたりの仕事)だから、J÷s=kg·m^2/s^3

以上より、
・W=J/s=N・m/s、つまり「仕事率P=力F×速度v」と表現することが出来ます。

さて、ここでエンジン出力の場合、直線運動ではなく回転運動になるので、
・仕事率P=トルクT×角速度ω

角速度ωは、回転数をnとすれば、ω=2πn/60なので(注1)
・パワー[W]=トルク[N・m]×2πn[rpm]/60
例)トルク200N・m/3,000回転の場合、パワーは62,800W(約63kW)


従って、パワーを言葉で表現すれば、
「パワーとは、トルクと回転数の積に比例定数(π/30)を掛けたもの」となります。
⇒パワーは、トルクと回転数の積に比例する(注2)

なので、トルクが不足していればパワーも不足する訳だし、パワーが不足しているならトルクも不足しているという事になります(同じ回転数での話)

一般的には、「(ディーゼル車のように)低速でトルクがあれば、エンジンを回さなくてもパワーは十分だし、(昔のDOHC車のように)低速でトルクが足りなくても、回転を稼げばパワーは出る」ことになりますが、エンジン単体での出力についてはエンジン性能曲線を、更には実際の走行では走行性能曲線を見ないと何とも言えません。


いずれにせよ、パワー(仕事率)とトルク(力)は次元が違う物理量なので、同列に語るものではないし、エンジンは熱機関(熱を仕事に換える装置)なのだから、重要なのは単位時間内にどれだけ仕事をするかという仕事率(パワー)です。
※家電製品の場合も同じで、重要なのは仕事率であって電圧や電流ではない。

仮に加速力(パワー)の要因を表現するにしても、発進及び登坂時をトルクで語るなら、高速走行時は回転の伸びの良さで語るべきで、片方をトルクで、もう片方をパワーで語るとか意味不明です。
※家電に無理やり例えれば、「扇風機の風を最強にした時は仕事率で評価するのに、ゆらぎ風にした時の回転の立ち上がりは電圧で評価する」みたいな(笑)


余談ですが、日本語(日常語)としてのパワーとは、力あるいは能力の意味であり、昔の試乗記では(日常語としての)パワーという言葉のみが使われていたように思いますが、CGなどの一部の雑誌に寄稿していた自称意識高い系の評論家が、(物理に詳しいわけでもないのに)他者との差別化のため、やれパワーだトルクだと走行シーン毎に使い分けしたのが始まりのような気がします(注3)

まあそんな話はどうでもいいけど、ようつべとかでも玄人気取りで「パワーが~」とか「トルクが~」と言ってる人がいますが、
はっきり言って、痛い人ですね。


↑再登場(youtubeドンキ公式より)


【注釈】
(注1)
・n:回転数[rpm、min-1] ←1分当り何回転するか
・360度=2πradなので、2πrad×nを60秒で割れば角速度になる。

(注2)
なお、最大出力(パワー)と最大トルクは同じ回転数で出る訳ではない。
・最大トルク200N・m/1k回転のエンジンなら、この時の出力は約21kW。
・このエンジンの2k回転時のトルクが150N・mなら、2k回転時の方が出力は高くなる(約31kW)

(注3)
昔のCGは、馬力を表記するのにpsではなく英(米)表記のhpを使うことに始まり、4独車のことをIRS(リヤ独立サス)車と表記したり、固有名詞もジャギュアと書いたり(笑)、更には文章自体に句読点(、。)ではなく、カンマやピリオド(, .)を用いたりして、他誌(大衆向けカー雑誌)との違いを強調していた。
※子供心にも、西洋気触というか変にお高く止まったところが鼻につく、「痛い系の雑誌」という印象だった。

Posted at 2026/09/13 08:38:57 | トラックバック(0) | 日記
2026年09月11日 イイね!

パワーとトルクって何ぞや?(トルク編)


自動車評論家などがよく試乗記で、「この車はパワーが~」だとか「トルクが~」などと走行シーンによって使い分けていますが、結局何だかよく解らない(伝わらない)表現だと思いませんか?

ネット(カーメディア等)の記事だと、パワーとトルクの違いについて、「パワーは高速走行時の加速力に、トルクは発進や登坂時の力強さに直結する指標」であるなどと書かれていますが、これもまた何を言っているのかよく解りません。

で、まずはトルクの話からですが、世間では「回転させる力」のことだと言われていますが、それでは自動車評論家などと同じ素人説明なので(笑)、もう少し物理的に考えてみたいと思います。


まず、レンチを使ってボルト等を締める場合、締付トルクをどう表すかというと、
・T=F×r・・・①
つまり力×腕の長さになります。
※トルク=力ベクトルと位置ベクトルの外積(力が加わった時に作用する力のモーメント)

ところで、以前ブレーキの話をした際に、ローター(タイヤ)の慣性モーメントとトルクについて、以下のように書きました。
・慣性モーメント I [kg・m^2]=1/2×M×r^2(M:質量[kg]、r:回転半径[m])
・トルク T [Nm]=I×α(α:角加速度[rad/s^2])

つまり、この場合のトルクは、慣性モーメント×角加速度で表され、
・T=I×α・・・②
になります。
※直線運動の運動方程式F=maの回転運動版(運動量の時間変化率は加えられた力に比例する)

同じトルクを表す式なのに、①と②は何が違うのでしょうか?


実は、トルクには2種類のものが存在し、①は静的な意味でのトルク、②は動的な意味でのトルクになります。

もう少し詳しく言うと、①は、(静止状態から)回転方向に力を加えれば、回転体を回転させる力のモーメントが発生するという意味で、②は、(現に回転している)回転体に力を加えれば角加速度が生じる、つまり回転体を加速させる力のモーメント(慣性モーメントに打ち勝ち回転の状態を変化させる力のモーメント)が発生するという意味です。
※慣性モーメントとは、物体が回転運動を行う際の慣性(抵抗)の大きさを表す物理量。

具体的に言うと、ボルトやナットを締める場合の締付トルクは①ですが、エンジンの駆動トルクは②になります。
※なので、エンジンのトルクは「回転させる力(のモーメント)」ではなく、「回転の状態を変化させる力(のモーメント)」になる(注)

つまり、ドヤ顔で、
「トルクってさあ~、回転させる力なんだよ!」と主張するのは、痛い人です。
※ここは少し前のドンキCMの瑛太風に。


↑youtubeドンキ公式より

で、「トルクって、2種類あるじゃ~ん」と言われ、
「ん?(一瞬間が開く)あるよ・・・」みたいな(笑)


ちなみに、エンジンのパワー&トルクは、ダイナモメーター(渦電流式電気動力計)を使ってエンジン単体での軸出力を測っています。


↑東京プラント㈱のHPより(ホンダ、三菱、スバルなどに納入実績あり)

一方、チューニングショップなどにあるシャシダイに載せてパワー&トルクを計測し、「メーカーが言う程パワーもトルクも出てないじゃん」という人がいますが、測定方法が違うので当たり前です。
※トランスミッションやデフ等を経て、最終的にタイヤに伝えられた状態で出力を測定するので。

あと試乗記で、2.0Lモデルと1.8Lモデルを乗り比べて、「1.8Lでも(街中走行なら)パワー&トルクともに2.0Lと比べて遜色がない」などという自動車評論家もいますが、これも主にギヤ比のマジックで加速力に差がないと感じるだけであり、エンジン単体のパワーやトルクが実際どうなのかを伝えたことにはなりません。
※同じ速さで走ろうとすると、(ギヤ比の違いにより)当然1.8Lの方がエンジンを回すことになるので、その分(同じ回転数では)トルクは細いことになる。

この辺りの話は、次回のパワー編で。


(注釈)
自動車のエンジンの場合、スターターモーター(昔のクランク棒)の起動トルクが①で、駆動トルクが②に当たりますが、EVのモーターの場合は①と②の両方を兼ねています。

Posted at 2026/09/11 21:26:40 | トラックバック(0) | 日記

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「ブレーキフルードは混ざらない? http://cvw.jp/b/2036415/49253246/」
何シテル?   10/22 20:43
ネット上には、車に関する様々な誤解やデマが溢れています また、オカルトチューンが大手を振ってまかり通っています それらを科学的に検証して、ぶった斬り...
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