今回は、主に石油化学製品の原料としてのナフサについて書きます。
ナフサ(ガソリン/ナフサ留分)はガソリン及び石油化学基礎製品として利用されますが、前者は燃料なので燃焼することが目的ですが、後者は熱分解して石化製品を製造するための原料となります。
ナフサは単一の物質ではなく、様々な炭化水素化合物が混ざり合った混合物だという事は既に書きましたが、更に重質ナフサや軽質ナフサ等に分留されます。
・軽質ナフサ
エチレン(C2)、プロピレン(C3)、ブタジエン(C4)
・重質ナフサ
ベンゼン(C6)、トルエン(C7)、キシレン(C8)の通称BTX
・C5留分
C5(シクロペンタジエン、イソプレン、ペンタン)
・メタン(C1)
これはナフサを熱する際の燃料として使うことが殆どのようです。
具体的に、石油化学コンビナート内にあるナフサ分解炉の工程を見てみます。
・熱分解
ナフサを 800°C 以上の高温で蒸気とともに加熱すると、パラフィンやナフテンなどの長い鎖状の分子が熱エネルギーにより分離し、バラバラになります。
↓
・分留
バラバラになった分子(気体)を各蒸留塔で仕分けますが、それによりエチレン、プロピレン、ブタジエンなどのオレフィン系炭化水素、またベンゼン、トルエン、キシレンの芳香族(環)炭化水素まで様々な炭化水素化合物が抽出されます。
※オレフィンや芳香族のような二重結合になるのは何故かというと、大雑把に言えば余った手を繋ぎ合うから。

(画像は、石油化学工業協会のHPより)
この後、中間工場(石油化学誘導品工場)へ運ばれ、重合等が行われて石油化学誘導品に加工されます。
※エチレンガスのように、そのままガス製品として出荷されるものもある。
・重合
例えばエチレンガスに圧力や触媒を加えると、数千〜数万個の分子が鎖のようにつながりますが(ポリマー)、これによりポリエチレンが生成されます。
※工場でできあがったポリエチレンやポリプロピレン、PETなどは、ペレット(丸い粒)状の製品になります。
これらの工場は全て石化コンビナート内にありますが、この後コンビナート外にある関連産業工場へ運ばれて、プラスチック、合成繊維原料、合成ゴム、塗料、洗剤、医薬品、肥料、接着剤など様々な製品に加工されます。
※なので、「ナフサを(米と同じように)溜めこんでいる業者がいる」というのは嘘情報。
さて、世界的に見れば、石化産業の原料はナフサだけではなく、天然ガス等も使われています。
アメリカでは主にエタン(C2H6)や液化石油ガス(LPG)が主流で、中東など産油国でも、天然ガスから石化製品の生産が行われています。
※一方日本では、ナフサが大部分(95%以上)を占める。
なお、最近ではエタンシフトと呼ばれるように、シェールガスから得られるエタンを原料にする動きが強まっていますが、エタン(C2なので軽質ナフサの一種)からはエチレンは効率よく取れますが、プロピレンやブタジエン、芳香族などはあまり取れません。
※一方、日本の石化プラントで使われているナフサ(重質+軽質)からは、エチレンだけでなく多種多様な石油化学基礎製品を同時に作り出すことができるが、これが強みになっている。
但し、エタンは米国のシェールガス開発ブームにより安価な石化原料として存在感を高めており、米国内の石化プラント向けだけでなく、アジアなどへの輸出も拡大していましたが、ここに来てナフサ不足(高騰)が進んでいるので、更なる追い風になっています。
トランプのイラン攻撃の裏に、「米国産シェールガスの生産(輸出)拡大を狙う動きがある」と言ったら陰謀論だと笑われるでしょうが、中長期的に見れば、中東情勢の不安定化がMAGAを後押しする事になるかもしれません。
※そういう意味では、トランプは大統領ではなく商人(笑)
P.S.
前回は書きませんでしたが、メタだエタだと言うのは、炭素数を表しています。
1 メタ(モノ)
2 エタ(ジ)
3 プロパ(トリ)
4 ブタ(テトラ)
5 ペンタ(←)
6 ヘキサ(←)
7 ヘプタ(←)
8 オクタ(←)
9 ノナ(←)
10 デカ(←)
※1~4までは慣用名。()内は数を表すギリシャ語で、それ以外の時に使う。
有機化合物の名称は、IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)命名法に従っています。
命名法を細かく知る必要はないですが、教養としてある程度知っていると、昔の自分のように「オルガノポリシロキサン配合」なるコーティング剤に騙されずに済みます(笑)
参考)
ガラスコーティング、実はシリコーンコーティングだった?
https://minkara.carview.co.jp/summary/13664/
Posted at 2026/05/09 10:21:25 |
トラックバック(0) | 日記