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2014年09月01日

超空力セダンとしてのアウディ80、その西ドイツ的到達点

超空力セダンとしてのアウディ80、その西ドイツ的到達点 §日付けのある Car コラム
§『アクション・ジャーナル』selection

1987年初頭のあるTV番組に、トヨタ、ニッサン、マツダ、ホンダ四社の技術者のトップが出演したことがある。司会者が、こう問うた。自社以外のクルマで、いま(今年)気にしている車種は何か、具体的に名を挙げてほしい──。四社のエンジニアの答えは、期せずして、たった一車に集中した。それは、新しいアウディ80だ、と。

プロ好みの機種なのかもしれないが、ともかく、その噂の“ニュー・エイティ”がついに上陸した。まずは「コンマ29」である。いわゆる空力係数が「0.29」で、これはわが国のペタンコなニュー・プレリュードの「0.34」を凌ぐものだ。

……と言うよりも、このような普通のセダンにおいても入念な空力チューニングが要るという西独クルマ事情こそが、ニュースかもしれない。誰でもそのクルマの最高速で走れるという「アウトバーン」を抱えた市場は、スポーツ/GTカーを生むだけでなく、クルマを変える。

極度に寝たフロント・ウインドーをはじめとして、ニュー80は、その全身が空力の塊である。……にも、かかわらず、、室内のヘッドルームは驚くほど高い。シートを低く落とし込んだからといった細工の結果ではなく(着座位置は並みのクルマよりもむしろ高い)、何のことはない、全高が高いのだ。

普通のクルマでも“エアロする”必要があり、普通のクルマだからルーミーでなければならない。この二つのテーマが、少なくともフロントシートではあっさりと両立している。可能なんですね、その気になれば……。

もうひとつ、同車の広報資料で多大なページが割かれているのは、ボディワークとその塗装についてである。ボディに使われる鋼板のすべてがフルジンク・メタル、つまり両面亜鉛処理鋼板で、まず全身に5.5㎏の亜鉛を“纏った”後に、全8工程で塗装されるという。「新型アウディ80にとって、錆の問題は過去のものになったといっても過言ではありません」(広報資料より)

上級車の100/200では既に行なわれていたものが「ミドルクラス」の80にまで降りてきたものだが、このクラスでここまでやるのかと日本メーカーを唸らせるであろうと同時に、西ドイツという《環境》がクルマに極めてシビアである(らしい)ことを実感する。ちなみに広報資料は、総論を終えて各論に入った途端に、まず、空力ボディと錆対策を謳う。

走り出してみると、がっしり作られたボディは、極めて静かで安定した高速巡航をもたらし、横風にも揺るがず、大きくなったシートが身体を支え、ドアはほとんど感動的に、ビン!と閉まる。

生真面目な優等生にして、ルックスも端正。ニュー80は、こうまとめられる。日本メーカーも、作り手としていくつかの感心をすることと思うが、しかし、明らかに日本車が勝っていると思われる部分がある。それは、アイドリングの音の消し方! ニュー80は、ドイツ車としては徹底して静粛さを追求し実現しているが、微妙なこもり音がアイドリング時に限って残存する。ドイツ人には聞こえないかもしれないレベルのノイズを“渋滞の民族”としては聞き取ってしまう。

外国車に乗る。それは、かの国への小さな旅であると同時に、自国の現状を探索する試みでもある……。

(1987/05/19)

○89年末単行本化の際に、書き手自身が付けた注釈
アウディ80(87年~  )
◆あの国はここまでやるんだなあ! アウディ80の「空力セダン」ぶりを初めて見た時の驚きは、いまでも記憶に新しい。そしてATは3速のままでも、エアロダイナミズムで省燃費できれば、クルマの総体としての性能は確保できるのだという思想も、西独的な凄みがあった。それだけ日常的に「空気」と闘っているのがアウトバーンなのであろう。ともかく、これはそういうクルマ……。東名高速では、空気を“壁”とするような速度にはならず、そして渋滞は慢性化。これがわが国のクルマの環境。「思想」はこの国で商品となれるか。

○2014年のための注釈的メモ
今日の目線でこのクルマを見ると、いったいどこが「空力的」だったのかと思ってしまうのではないか。まあそれほどに、90年代以降、クルマのカタチにおける「エアロ化」は進んだ。その意味ではこの「80」は、20世紀末から21世紀のクルマ(乗用車)のカタチを変えた元祖のひとつといえる。そして、そのようにしてセダンの造型が変わって行ったが故に、それと並行して、あるいはそれに反発して、アメリカや日本では90年代半ば以降、ワゴンやミニバンやSUVをユーザー側の判断で、日常使用の乗用ビークルとして使うようになった……という見方は、そんなにハズレてはいないと思う。
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Posted at 2014/09/01 19:50:33

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