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2015年01月24日

素晴らしき父とその娘 ~ 映画『アラバマ物語』 《2》

その2 フィンチ家の家政婦

そして観客は、ここで女の声を聞く。「お兄さんを呼んで」。それに少女が反応し、「ジェムは木の上。フットボールの試合に(父が)出てくれると言わなきゃ、降りないって」と応える。

これを聞いた父が、木の上で“ストライキ”をしている(らしい)息子に、「キャルパーニアが美味しい朝食を作ってくれた。あったかいビスケットもあるぞ」と声をかける。少女には兄がいて、その名はジェムという。そしてこの家には“キャルパーニア”なる女性がいて、彼女は料理もしているようだ。

そして父アティカスはもう一度、樹上の息子ジェムに声をかけ、カバンを持って、仕事に(?)出かけて行った。彼が歩くその道に、クーペ型の小型のクルマが一台走って来る。父アティカスは、仕事場には徒歩で行くようだ。

父が出かけたので、娘=妹は、朝食よりも、兄のいる木に登ることを選んだ。スカウトはそんなお転婆少女であり、そして、彼女は兄が好きなのだろう。

すると、その木の下に、ひとり、子どもがやってきた。小柄な少年はチャールズ(ディル)と名乗り、「ぼくは本が読めるんだ」と主張する。しかし、彼に年齢を訊ねた兄のジェムは「7歳なら、そんなこと(できるのは)不思議じゃないよ。スカウトは、もっと前から字は読めた。学校に行ってなくてもね」と言う。

彼の妹はお転婆だけでなく、なかなか賢い少女であるらしい。そしてここで、父だけでなく兄もまた、彼女を(たぶん本名でなく)“スカウト”と呼んでいることがわかる。そのスカウトは小柄少年なディルに質問した。「ママは死んだけど、パパはいる。あんたは?」

そこにキャルパーニア(キャル)が来た。おそらくフィンチ家の家政婦である彼女は黒人女性。スカウトはすぐに、彼女を少年ディルに紹介する。そしてスカウトは、キャルが持ってきたシャツに着替えた。

そんな彼らの前を、隣人の(?)中年男が通りかかったので、兄のジェムが二人に言った。「怖い人なんだ。“ブー”っていう息子を鎖でベッドにつないで、家に閉じ込めてる」。そして、まだ見たことがない“ブー”の姿を、怪物のようなイメージで描写し、ディルに語る。しかしディルは「ぼくは信じないな」とクールだ。(注1)

そこに、ディルの伯母が来た。フィンチ家の隣人であるこの伯母の家に、夏休みなのでディルが来ているということか。そしてディルの伯母は、“ブー”が父親の足をハサミで刺したこと。精神病院ではなく、裁判所の地下室に拘束されていて、死ぬ間際になって、家に連れ戻されたこと。それ以来、ハサミを持ったまま、ずっと座っている……といった“ブー”に関する噂を子どもたちに語る。「何をしてるのか、何を考えてるのか、誰にもわからない」

そして、夕方の5時になった。年長のジェムが「行くぞ」と、二人に声をかける。ディルが少女に、二人は何をしようとしているのかを訊く。
スカウト「アティカスを、迎えに行くのよ」
ディル「なぜ、お父さんを名前で呼ぶ?」
スカウト「ジェムが、そうしてたから」
ディル「彼は、どうして?」
スカウト「わかんない、ジェムは小さい頃からずっと──」

そのアティカスが、二人に向かって歩いてきた。駆け寄って、父と手をつなぐ子どもたち。父はやはり、仕事には徒歩で行っていた。三人は隣人に挨拶した後に、家に入って行く。隣接して建てられているガレージには、スペアタイヤを背中に抱いたセダンが一台収まっている。こうして、フィンチ家の「ある夏の日」が暮れた。

フィンチ家の中、寝室。ベッドに横になったスカウトが本を読んでいる。声を出しているので、“読み”の練習かもしれない。それを見守る父アティカスは、“ブー”について訊いてきた娘に、「人の噂はよくないぞ。そっとしておくのが思いやりだ」と諭した。

お休みのハグをして、父が去った後、スカウトは同室の兄ジェムに訊ねる。
スカウト「ねえジェム、母さんが死んだとき、私はいくつ?」
ジェム「2歳」
スカウト「ジェムは?」
ジェム「6歳」
スカウト「いまの私と同じだね。ママはキレイだった?」

さらにスカウトは、質問を連発する。「ママは優しかった?」「ジェムはママを好きだった?」「私も、ママを好きだった?」「ねえ、ジェムは、ママがいなくて寂しい?」。父には、その声が聞こえている。

観客としてはここで、いろいろな想像ができる。まず、母の死の時スカウトは2歳だったというから、母についての記憶は何もないのだろう。また「アティカス」というのは、亡き母が夫=父を呼ぶ時に、きっとこう言っていたのだ。そしてそれを、6歳の長男がマネした。しかし父アティカスはそれを咎めず、母の死後、父をファースト・ネームで呼ぶのがジェムひとりになった時に、成長した妹のスカウトも兄に倣った……。

(つづく)

○注1:映画「アラバマ物語」の原作「モノマネ鳥を殺すには」の作者はハーパー・リー。彼女の少女期が、この映画でのスカウト。そして、夏休みに遊びに来た友人のディル少年は、のちにドキュメント・ノベル「冷血」を書く作家、トルーマン・カポーティがモデルとされる。彼が「冷血」を書くまでを描いた映画「カポーティ」には、カポーティの友人、かつ重要な役として、ハーパー・リーが登場しているという。(未見)
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Posted at 2015/01/24 09:02:56

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