
人々は、もう少し限定すれば「大衆」は、その時代に、いったい何がリッチでゼイタクなのかを本能的に嗅ぎわける。そして、それが支払い可能であるものなら、何としても手に入れる。
初代ソアラをムリをしてでも買った人々が、メルセデスの(かつての)「SL」をどの程度イメージしていたのかはわからない。ただ、そのメーカーの最高レベルのパワーユニットと、ビッグサイズの2ドア・クーペを組み合わせて、「パーソナルカー」を作る。この点では、ソアラとメルセデスSLはまったく同じ手法であった。
そして、この方法で作られたクルマは、当然ながら、速くて、かつ安楽なクルマとなる。一部のスポーツカーにあるような排他性や“ガマン部分”はなく、また、スペシャリティ・カーはサイズに関係なく成り立つが、そもそもこれは、ビッグにしてパーソナルというのがコンセプト。その高性能と快適性とを満喫するのは、基本的に二人だけなのだ(2+2だが)。ビッグ・パーソナル・クーペが至上の贅沢とされるユエンである。
初代ソアラのデビューは1981年。70年代の排ガス規制という逆風を「技術」で乗り切り、日本のメーカーに、ようやく余裕と自信が生まれた頃だった。そして、クルマに対して何か「サムシング・ニュー」を求める風潮が、マーケットにもメーカーにもあった。
みんなが何かを待っていたそんなタイミングに、ジャストミートという格好で出現したのが、このクルマだった。そしてソアラは、自動車業界を超えた社会的なヒット作となり、クルマ世界にはべつに関心はないギャルが「ソアラ」の名だけは知っているという現象まで引き起こした。“いいクルマ”の代名詞とまでなったこのモデルは、1986年の二代目で、その人気をさらに不動のものとする。(タイトルフォトは二代目)、
(「カーセンサー」誌、1995年。「昭和名車伝」より加筆)
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クルマ史探索file | 日記
Posted at
2015/06/02 21:32:17