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2018年10月21日

NAレストア事業 〜ERFC 清里ミーティング2018 聞き書き。

NAレストア事業 〜ERFC 清里ミーティング2018 聞き書き。

当日の模様はフォトアルバムにまとめておいたので、ここでは午前中の座学の内容をメモしておく。




今年のテーマはNAのレストア事業のあらましと、デルタ工業とBRIDEが協業して作ったロードスター用のシートについて。

文字制限を食らったので、シートについては後編に譲る。



レストア事業




軽井沢ミーティングでも説明があったが、レストア事業の意義としては、クルマ文化への貢献と、ブランド構築の一環。




特にブランド構築、という部分は重要だと思う。


マツダは現在、ブランディングに熱心に取り組んでいる。ブランド全体の価値を高めるために、こういうものはある程度、採算は度外視で取り組まなければならない。品質も価格も世界中のメーカーで横並びになる中で、あえてマツダのクルマを選んでもらう「理由」は何か、それを作るのがブランディングだ。それに失敗すれば家電業界で見たように、安さ競争に巻き込まれて疲弊する一方になる。




具体的に何をするかといえば、モノを売るだけではなく、モノにまつわる「物語」を売るということ。物語を作るには何よりブランドの歴史を大事にしなければならない。


例えばロールス・ロイスなどでは、歴代モデルのレストアのための体制を整えている。依頼があれば例え戦前のモデルであっても完璧に仕上げてくれるそうだ。ポルシェなども、歴代911の部品が全て揃うという。




マツダもこれから、部品のサプライヤーに協力を求め、いわゆるショップとも良好な関係を築きたいとのこと。


特にレストアに関しては、マツダは完成車メーカーであり、例えばサビの修理などは全く術がなく、専門家のノウハウに頼ることになる。


例えばエンジンのレストアなどは、リビルドエンジン専業の業者に依頼するそうだが、そこで組んだエンジンは乗ってみると一味違うとか。




そんなこんなでお値段は、フルレストアすると、だいたいの個体は500万以上かかるとか。製造ラインで作るからこそ、我々は200万とかでクルマが買えるのであり、傷んだ箇所を一つ一つ確認しながらの作業では、まあ、その価格は妥当なところだろう。



(1)復刻部品




純正の品質で復刻するのは必須。


加えて当時の雰囲気を守りつつ、現代の材料や製法で造り、価格や環境にも配慮するという困難な事業だ。


しかも車検を通す整備に必要な部品ばかりでなく、ロードスターの特徴となる部品(例えば幌、タイヤ、タンの内装など)も揃える必要があり、現在160点ほどの部品に供給の目処が立ったそうだ。




①タイヤ




NAロードスターの開発当初、英国車のタイヤのノスタルジックなパターンを再現したいという意図でデザインしたが、その上軽快なハンドリングを求めたため、ウエットに弱くテールハッピーになりがちでサスのセッティングに苦労したという逸話が残っている。先ずパターンのデザインありきでタイヤを作るのは難しいという。




この当時の乗り味を再現するのだが、当時の資料を元に形だけなら再現できるが、材料や製法は現在のもので、当時のものとは全くの別物。タイヤの復刻というのはタイヤメーカーにも前例がなく、当時のサプライヤーの何社かに呼びかけたが、結局応じてくれたのはブリヂストンだけ。




とはいえ基準となるタイヤがどこにもなく、いわゆる乗り味というのは、当時テストに携わった人の感覚の中にしか残っていない。


そのため三次のテストコースで何度もテストして記憶を呼び覚ましながらのチューニングだったという。




こうして出来上がった新生SF325、「当時のものを超えた」という評価を得たという。丸い接地面で姿勢変化に伴う断面形の変化が少なく、グリップの変化が穏やかでコントロールしやすい。低速で直線からゆっくりとハンドルを切るとその変化が面白い。しかもコンパウンドは当時に比べ格段に性能が向上し、ウエットのグリップも改善している。




ちなみにブリジストン直営店か、マツダのディーラーで一般にも販売するという。




②ソフトトップ




製造はオリジナルと同じ三和工業。ビニール生地はアメリカ製、リアスクリーンはイタリア製になる。ちなみにジッパーは三和工業の特許だそうな




ビニール生地は元々VWなどの幌生地を作っていたドイツのメーカーで、寒い国で使う生地だから大丈夫だろう、といういい加減なのか納得なのかわからない理由で決待ったそうな。




三年前くらいにNA用ビニール幌の製造が中止になったとき、ドイツの環境基準が厳しくなってビニール生地が作れなくなったような話を聞いたのだが、実はこのメーカーが、エルメスのバックの生地などを作っている方が楽で儲かるから、クルマの幌なんか面倒くさくてやりたくない、とか言い出して製造を止めてしまった、というので、今回、ドイツに乗り込んで交渉の結果、レシピを出させてアメリカで作らせることにしたそうだ。なんとなく武勇伝っぽくて面白い話だが、知財の移転などの調整にはさぞかし苦労もあったことだろう。




ともかくこの幌は200km/hで飛ばしても膨らまない逸品で(BMWの幌は膨らむそうな)、ロードスターには過剰品質じゃないかという素晴らしい製品。復活が喜ばしい。




③ステアリング




今回の復刻で、当時のステアリングを卸していたNARDIとMOMOに声を掛けると二つ返事でどちらも快諾。やはりヨーロッパでは古いクルマを大切にする文化がサプライヤーにも行き渡っている。




特にMOMOは社長と意気投合するほどの盛り上がりだったそうだが、ロードスター専用のロゴを入れると1点10万を超えるとかで、ロードスターという車のキャラクターに合わないだろうということで今回は断念。




④フロアマット




パイルの太い、少し荒々しい仕上がりのNA用のフロアマットは、その後廃番になり作ってくれるメーカーがいなくなってしまったのだか、今回の復刻では当時製造していた永大化工が製造、当時の質感を再現する。ロゴ入りの専用のメダルは当時の図面をもとに新たに型を起こしたそうな。




ちなみにVスペシャル用は、ロゴの文字が緑色。これは知らなかった。




⑤アルミホイール




製造はエンケイ。


一部のファンからツルツルすぎる、と指摘のあったスポーク部の仕上げについて、塗膜を薄くすることで当時のザラッとした質感を再現できるという。ちなみに最新の製造法を用いてホイール1本あたりペットボトル1本分くらい軽いという。


現在、ホイールキャップと色合わせ調整中で、これがなかなか大変だという。




⑥ラベルセット




ボンネット裏やドア部分の注意書きのラベル。


地味なようだが耐熱性、耐候性、防水性等々要求される基準が厳しいだろうと思っていたら、案の定値段が高くなってしまったという。


だからと言って手を抜くのではなく、下の方にロゴを入れて、額装して眺めて楽しめるようにしたというが、それは控えめに言ってあたまがおかしい(褒)。






(2)TUF(テュフ クラシックカーガレージ認証)




クラシックカーのレストアに携わる工場に対し、適正なプロセス・環境で、高い品質レベルのレストア作業が実施できることを証明する、ドイツの第三者認証機関。




今回、マツダのレストアサービスとそれを実施する工場がこの認証を取得。




ドイツでは、この認証を取得した工場でレストアしたクルマに対しては税制の優遇が与えられたり、資産価値を高く認められたりするのだが、日本には制度がないため、今のところ特に特典はないそうだ。




マツダはこれから国や関係各機関に対し、法整備や制度の設立を訴えてゆくそうなので、これは将来に向けたブランディングの取り組みとなる。

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Posted at 2018/10/24 21:57:46

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