
去年の4月に実家のフィットが不要になり、足車の名目で引き取ってきました。このGP5型フィットハイブリッドといえば7速DCTを装備し走りの良さが気になっていたところ。そこでサーキットに持ち出しテストすることにしました。なお、メインのBRZに対するサブとして、なるべくフィットには金を掛けずに楽しむことも条件にしています。
車の仕様は以下の通りです。
フィットハイブリッド Lパッケージ ’14年式
(パドルシフト無しのグレード)
7DCT、FF
走行約7.4万km(2024.4時点)
ODB2で水温見られるようにした以外はドノーマル
この1年間で何度か試走と対策を繰り返して以下のような問題点を発見し、対策を取ればあまり金を掛けずにサーキット走行を楽しめるという結論に達しました。あ、金を掛けないといっても少なくともタイヤとブレーキパッドは変えた方がいいと思います。
問題点①:シフトラグがすごい
問題点②:ミッションの熱問題
問題点③:曲がらない!?
問題点④:ホールド性が低め
問題点⑤:社外パーツにもLSDの設定がない
問題点①:シフトラグがすごい → 「L」レンジで解決
のっけからDCTの存在意義を否定しそうな小見出しですが、そういうつもりはなくむしろ全開加速中はDCTの素早い変速が大活躍です。問題なのは、ヘアピンなどで回転数が落ちたあと踏み込んだ時に感じる大きな変速ラグです。このレスポンスの悪さが立ち上がりのたびに足を引っ張るのが一番の問題点でした。
VSAを長押しで解除したり、高めの回転数をキープしてくれるSモードにしたりしても解決には至りませんでした。そこで、さらに高めの回転数を保ってくれるモード、すなわち「L」レンジで走ってみたところ見事解決しました。
この車のLレンジは特定のギアで固定されるわけではなく、アクセルを踏み込めばシフトアップして加速してくれます。アクセルの踏み加減に関わらずきっちりレブリミットまで使ってくれるモードなので、サーキット走行との相性は良好でした。Lレンジの仕様が同じであれば他のAT車でも応用できそうな技ですね。
参考動画:【フィットハイブリッド GP5】Lレンジの意外な使い道【阿讃サーキット】
問題点②:ミッションの熱問題 → 水温大丈夫そうでもクーリングは数周おきに
これもAT車全般に言えることですが、ミッションの過熱が弱点であると言えます。ミニサーキットで周回を繰り返しても水温が100℃を超えることはなく優秀だと思ったのですが、水温からはミッションの状態が判断できないので注意が必要です。
このタイプのDCT搭載車がいろは坂の登りの渋滞でミッション過熱により動けなくなった事例があるように、サーキットでもハードな走行を続けるとミッションが過熱する恐れがあります。ここはAT車のセオリー通り、数周アタックしたらクーリングに入りたいところ。
兄がこの車でミニサーキットを連続周回していたところ、ミッション温度異常のチェックランプが点灯したことがありました。その後念のためディーラーに点検とミッションオイル交換を依頼。異常はありませんでしたが、ハードな走行を繰り返すならATFクーラーを入れるという手もあるというアドバイスを担当者さんよりいただきました。まぁ金に糸目を付けなければの話ですが。安く遊ぶなら数周でタイムをまとめて定期的にクールダウンするのが良さそうです。
問題点③:曲がらない!? → タイヤや空気圧で調整
VSA長押し解除で走行した感想です。エコタイヤだったというのもありますがブレーキングでリアを出そうと思っても先にフロントが負けて膨らんでいってしまいました。かなり安定志向です。
同じ1.5のFFでも以前乗っていたCR-Zはこれとは対照的に、頭の入りは良好ですが曲がりながらのブレーキングでラフに操作するとタコ踊りやスピンを誘発する場面がありました。クイックに走る人向けのCR-Zに対して、幅広い層を対象にして安定方向に振ったフィットという作り分けが感じられます。
参考動画:【CR-Z】2022年スピンまとめ
フィットが曲がらないと言っても空気圧の調整でいくらかマシになります。エコピアでもリアを300kPaぐらいまで上げたら焼け石に水かもしれませんが回頭性が若干改善しました。
しかしサーキットで楽しむならスポーツブレーキパッドとスポーティタイヤ以上のタイヤは欲しいです。タイヤは前後色々試してみたので簡単な感想を列記してみます。走行コースはバラバラなので厳密な比較ではなく走ってみた感想程度。
a)前後:175幅エコピア
→全く食わない訳ではないが進入でフロントが負ける。走るほどアンダー傾向が強くなる。
参考動画:フィットハイブリッドで遊ぶ!【瀬戸内海サーキット】
(↑時系列的には「Lレンジ」技の発見より前。)
b)前:195幅ZⅢ、後:175幅エコピア
→低速コーナーは進入から立ち上がりまで思い通り曲がるようになったがリアが信じられず高速コーナーで攻められない。使いこなすには慣れがいりそう。
参考動画:【BRZ & フィットHV】TSタカタサーキット フリー走行2024.10.12
(↑後半がフィットでの走行)
c)前:195幅71RS、後:195幅595evo
→71RSすごい。その分高価だし摩耗も早いのでフィット用に買うのはもったいないか。リアの595evoはほどよく流れるが、安いわりに食うので高速コーナーもそんなに怖くなくなった。
阿讃のタイム的には
・A052,ストリートサス装備のCR-Zから0.8秒落ち
・AD09,純正足のBRZ(ZD8)から3秒落ち
といったところ。タイヤ変えただけのお買い物車としては頑張っている方では。
参考動画:【フィットハイブリッド GP5】Lレンジの意外な使い道【阿讃サーキット】
(上記動画)
※ZⅢ以外は他車からの流用タイヤ。2022年頃のもの。
※純正足だとインセットにもよるが195幅あたりが限度。205以上ははみ出そう。
※タイヤが高いと思ったら、アジアンスポーティタイヤでも安く楽しめるハズ。
問題点④:ホールド性が低め → シートポジションを工夫
フルバケを経験した後だと純正シートはスカスカに感じてしまいます。もちろんフルバケを入れれば済む話ですが、コンパクトカーというくくりで見ればフィットのシートのサイドサポートは立派な方です。せっかくなのでこのシートを活用する方法を考えてみましょう。ポジションは前へ、背もたれは起こし気味にして背中がピッタリ付くようにすれば、ある程度横Gの負荷をサイドサポートに預けることができるようになります。
また、シートベルトを素早く引っ張るとロックされてそれ以上繰り出されなくなりますよね。シートベルトをギュッと締めたうえでこのロック状態にすれば、前方向のGに対しても安定感が出ます。
問題点⑤:社外パーツにもLSDの設定がない → なくても何とかなる
FFでサーキット走るなら1wayLSDは必須と言われることもありますが、このパワー感ならタイヤのグリップを上げれば困るほど空転することはないと思います。それでも空転が気になるという場合は、サスや強化スタビで接地性を改善するという手は取れそうです。
以上がフィットハイブリッドで感じた問題点と対策でした。これらの点に気を付ければ、この車でもサーキットでちょっとしたタイムアタックや走行会を楽しむことができると思います。
速いと思われていない平凡な車で速く走るってなんだかロマンがありますよね。でも走りにヒートアップするあまりエンジンやミッションをオーバーヒートさせることのないように気を付けてもらえたらと思います。
今回はここまで。長文にお付き合いいただきありがとうございました。