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2025年07月04日

回生ブレーキと満充電の謎

ちょっと難しい、科学(物理)のお話。
EV(HEV,PHEV,BEVなど)は、タイヤの回転を利用してバッテリーに充電するという、回生(かいせい)ブレーキという特徴を持っている。
では、回生ブレーキは、どんな理由で減速するのだろうか。

まずは、科学用語を用いて説明する。
ユーザーが減速操作をする(アクセルオフやブレーキペダルを踏む)と、それまで電気を使ってタイヤを回していたモーターが、逆にタイヤの回転力で回される。この時、内部のコイルに対して磁界が変化し、誘導起電力が発生する。この電圧によって電流が流れ、バッテリーに蓄えられる。
そして、エネルギー保存の法則により、この電流に対し、レンツの法則という、その原因となる磁界の変化を打ち消す力が働く。
磁界の変化の原因はタイヤの回転、つまり、それを打ち消すという事は、タイヤの回転が打ち消されていく、そう、これが回生ブレーキで発生する減速である。

ここでピンとくる人は、ここから先は読む必要はない。満充電で回生ブレーキが効かなくなる理由もわかっただろう。

ピンとこない人は、手回し発電機を思い出してほしい、回すのがしんどいと思うが、あれは手で加えた力(ハンドルを回転させる力)を、電気に変換しているためである。要は、回転のエネルギーが奪われているのである。それに打ち勝つように力を入れる必要があり、しんどいのである。
手を離すとハンドルは回り続けることはなく、すぐに止まるだろう。
このハンドルの回転を止めているのが、レンツの法則による打ち消す力であり、電気自動車の回生ブレーキでも同じことが起きている、だから車両が減速するのである。(手回し発電機のハンドル=回生ブレーキ中のタイヤ)

ここで大事なのがエネルギー保存の法則という法則である。
これは、エネルギーはいろんな形があるが、その総量(合計値)は、変わらないというものである。
いろんな形とは、例えば
・運動エネルギー
・位置エネルギー
・電気エネルギー
・熱エネルギー
・音エネルギー
・光エネルギー
・弾性(だんせい)エネルギー(バネのボヨンボヨンのやつ)
などである。

例えば、IONIQ5が運動エネルギー:100で動いているとしよう。
ここで、回生ブレーキを発動させると、
ステップ1
運動エネルギー:80
電気エネルギー:20

ステップ2
運動エネルギー:50
電気エネルギー:50

ステップ3
運動エネルギー:20
電気エネルギー:80

ステップ4
運動エネルギー:0
電気エネルギー:100

と、こんな感じで変化していく。(厳密にはもっと滑らかに変化するし、ロスとして一部は別のエネルギーになるがややこしくなるのでここでは考えないものとする)運動エネルギーが0とは、車両が停止していることである。

鋭い方はもうお気づきだろうが、ステップ1も2も3も4も、合計すると100になることがわかる。最初は運動エネルギー100で走行していたため、エネルギーが保存されていることが分かった。形こそ変化したが、エネルギーの総量は変化していないのである。

さて、回生ブレーキは、レンツの法則とかいうよくわからん法則により、モーターが発電しながらタイヤの回転は抑えられるという事がわかっただろう。
つまり、車両の運動エネルギーが、電気エネルギーに変換されているのである

では、ガソリン車では主な減速方法であるフットブレーキはどうだろう?
ブレーキディスクとブレーキパッドで車両を止める方法のことである。
電気自動車にももちろん搭載されているね。
あれも実は同じく、エネルギー保存の法則が働いて車両が止まるのである。
例えば、T31 X-TRAILが運動エネルギー:100で動いているとしよう。
ここで、フットブレーキを発動させると、
ステップ1
運動エネルギー:80
熱エネルギー:20

ステップ2
運動エネルギー:50
熱エネルギー:50

ステップ3
運動エネルギー:20
熱エネルギー:80

ステップ4
運動エネルギー:0
熱エネルギー:100

と、変化していく。厳密には別のエネルg(ry
ここでも、最初の運動エネルギー100に対し、各ステップのエネルギーを足すと、同じ100であることがわかる。
熱or電気、と、形が違うだけで、やっていることは同じなのだ。
エンジンブレーキも同じく、運動エネルギーを別のエネルギーに変換することで発生しているが、仕組みが複雑なので割愛する。


では、これを踏まえて、続いて満充電の時、回生ブレーキが無効または弱くなる理由について考察してみよう。

結論から言うと、メーカーの意地悪で満充電で回生を無効化しているわけではない。これは科学的にどうしても起こる現象である。
バッテリーには、当然充電の上限と放電の下限がある。満充電とは言うまでもなく上限のことである。それ以上充電できず、もし無理やり充電すれば発火につながる。

実はここからは簡単で、
1.仕組み上、満充電時はそれ以上電気を受け付けることができない
2.モーターから流れてくる電気を受け付けない
3.モーターは回転するが、電流が流れない(=充電しない)
4.レンツの法則が発生しない(レンツの法則は流れる電流によって発生するため、電流が0なら打ち消す力も0)
5.エネルギー変換が行われず、運動エネルギーが100のまま、つまり減速しない

のである。

ちなみに、山道などでよく聞くであろう、フェード現象もこれと似ており、
1.ブレーキに熱エネルギーがたまり限界までたまると、それ以上熱を受け入れることができない
2.摩擦熱を受け付けない
3.ブレーキパッドとブレーキディスクは擦れるがエネルギー変換が起こらない
(+パッドとディスクの隙間に泡ができてそもそも摩擦しないこともある)
4.エネルギー変換が起こらないという事は運動エネルギーは100のまま、つまり減速しない。

のである。

簡単に説明する語彙力がないので、どうしても科学的になってしまうが、
少しでも参考になれば幸いだ。


ブログ一覧 | IONIQ Life | クルマ
Posted at 2025/07/12 18:45:46

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