焼肉屋の定休日
豊子が 喫茶店の前に
電チャリを乗り付けると
向かいの 豚猫モータースの店先で
豚子の姉 兼 社長の 豚美が タバコを吹かしていたので
「こんにちは〜」
豊子は 電チャリのスタンドを立てながら 挨拶すると
ウンコ座りしながら、クイクイっと、人差し指で豚美に無言で呼び付けられた
「へっ?」
この豚子の姉の豚美は
隣の、横浜市 & 太田区から
「川崎王国」と恐れ呼ばれていた
昭和の暴走戦国時代、レディースではなく
支部長まで成り上がった、強者で
今でも、この界隈のガラの悪いオッサン達は
この道を通る時は、10代の頃と変わらず
豚美に頭を下げ挨拶し、通り過ぎる
無論、豊子達も上下関係は 10代 の頃と 変わらずで
豊子は呼ばれるがままに、喫茶店には入らず、向かいの豚猫モータースに行き
「どうしました?」
「奢ってやるから、アイコー二つ持って来い」
じぇじぇじぇ!
心の叫びは、封印し
「ブラックですよね」
「そう、あっ、下僕達の分も奢ってやるか、やっぱ 人数分持って来い」
「了解っす」
豊子が返事をすると、豚美は赤い缶の灰皿に煙草を投げ捨て、店内に戻り
豊子は、豚子の喫茶店に注文
「なんか、豚美さんにアイコー人数分って命じられたんだけど?」
カウンターの奥で、スポーツ新聞で、競馬予想している豚子に伝えると
「おっ、今日なんやな」
豚子はグラスを並べだし、お盆にのせだした
「なに、誰かバイク買ったの?」
「夏美ちゃんや」
「そうなの!あの子、なに買ったの?」
「それは、見てのお楽しみやで〜」
豚子は笑いながら、グラスのお盆を豊子の前に押し出し
自分は 冷蔵庫で冷やして置いた、ガラスポットを手にもった
二人が店内に入ると、豚美は指定席のカウンター奥の社長椅子にふんぞり返っていて
豊子がカウンターに、グラスを一つ置くと
横から豚子が手を出し
「毎度〜」
笑いながら請求すると
「ほらよっ」
豚美は千円札2枚をカウンターに投げ捨て
豚子は、カウンターに置かれたグラスに、ガラスポットに入ったコーヒーを注ぐ
「夏美ちゃん、なに買ったんですか?」
「ピットに行けば、分かるって」
豚子に奥に引っ張っられ、中に入ると
真っ赤な 350FOURが、鎮座されていた
「渋いっすよおぉ〜」
綾野が後片付けしながら、自慢する
「マジかよ・・」
豊子は近付き、エンジンを触ると
「どう、オリジナルは、初めて見たんじゃない?」
中島がメッキのフェンダーを磨きながら、豊子の顔を覗き込む
「ええ、初めてす」
「この後、夏美ちゃんの希望でバケヨンにするんすよっ!」
綾野が、350に見惚れている豊子に説明すると
「そうなの?」
「とりあえず、綺麗になった オリジナル見てもらってからかな」
「コッチの方がエエ〜んちゃう」
「それは本人次第で」笑
中島が笑いながら、豚子に返すと
「コレって、エンジンは?」
「オーバーホールしたけど、ノーマルだよ、ポイントと電装以外は、完全オリジナルに戻した」
キュル〜
ブォー♪
ノーマルの4本出しから
ヨンフォアとも55とも違う、排気音がピットに流れ
ブォン!ブォン!
中島が吹かし
「やっぱり、CBの音だね〜」
ブォン!ブォン!
350とはいえ、HONDAの空冷四気筒
4本マフラー特有の排気音がピットに木霊する
室内なのにタペット音も、限りなくしない
ここが、Kawasaki の旧車だと、どんなに丁寧にやっても、どうしても機械音とタペット音が目立ってしまうのだが
HONDAの凄いとこで、丁寧にやれば、50年前のエンジンでも、静かに、こうなる
勿論、中島のメカニックとしての腕もイイ
豊子も、豚子の55をレストアした時に、気合い入れて調整した
バランス取り
工場生産のままだと、バラつきが出るし
組み直したエンジンより劣る
これこそが、チューナーとしての本質か?
新車のような、エンジン音に耳を澄まし
先日、箱根で考え直された思考が過り
改めて、中島の凄さと チューニングの本質に気付かされた
ブルル〜ン!
四重奏な音を奏でる
まるで、カルテット
「純正で、こんなエエ音するんや〜」
豚子が感動すると
「そこは店長の隠し技っすよ〜」
綾野が意味深に自慢すると
「なんやと〜教えんかい!」
豚子は綾野の手首を掴み、必殺の参教
「い、痛、いたっ〜!」
排気音の音で、好豚もスッピン顔のスエット姿で降りてきた
好豚と綾野の叫びを 中島は無視し、アクセルを捻る
ブォーン!
目一杯、吹かすと
直ぐにエンジンを切り
キャブのガソリンを無くしてから、燃料コックをオフにした
「ピッカピカだね〜」
好豚も舐め回すように、350 FOUR のメーターを覗き込む
「ほら、もう来る時間だから出すよ」
中島は豊子と好豚をどかし
350 FOUR を店内から見える場所まで運び
皆もその後に続き
ソファーに座ると
キムコがベアリング交換の為、ヨンフォアを乗り付けて入って来たので
皆んなで、コーヒータイム
「あの子、バケヨンに変える思うか?」
豚子が皆に質問すると
「オリジナル見たら、ど〜かな、豊子ちゃんは?」
「350の外見でキムコのエンジン換装するのもあり」
「じぇじぇじぇ!」
「変態や〜」
皆が、ドン引きすると
「あれ見て、バケヨンに変えられたら、中島と綾野の仕事が駄目って事だろ」
メデューサ豚美が、虐め発言
「そ、そんな」
中島がビビると
ブルル〜ン♪
おとなしい二気筒のジグサーが、店先に停まった
「来たで〜!」
豚子が意味深に笑うと
「こんには〜!あれっ?皆さんお揃いで・・・」
夏美が勢いよく入って来て
皆が勢揃いしてるのに驚くと、好豚が
「それより、見て!」
夏美の首を店内から見えるように
ピットの入り口に置かれた
350 FOUR に首を無理に向ける
「・・・・」
「どうしたのかしら?」
「完全にフリーズしとるで」
豊子と豚子が小声で囁くと
金縛り状態になった夏美に、中島が
「と、とりあえず、これがオリジナルなんだけど、ど、どうかな?」
「えっ?」
夏美は正気に戻り
「や、ヤバイです」
「な、なにが?」
「超〜ヤバイです」
中島は不安になり、娘の好豚にアイコンタクトすると
「最高って意味だよ!そうだよね〜夏美ちゃん」
「私、感動してます」
おおぉー!
良かった〜!
中島と綾野が手を取りあい、歓喜すると
「ほら、跨って!」
好豚が夏美の背中を押すが、夏美はビビって後退り
「本当にこれが、沖縄 Z1 より古いバイクだなんて」
夏美がタンクを 恐る恐る タッチしながら、呟く
「なんやねん、沖縄って?」
「やっぱり70年代のは、ピッカピカにしても、オーラ半端ねーな〜」
豚子を無視して、豚美がカウンターの奥から、叫ぶと
「うん、うん」
「豚子ちゃんのも」
「皆さん、本当にありがとうございました!」
夏美が深々とお辞儀すると
「と、ところで、バ、バケヨンの安件は?」
綾野が、恐る恐る突っ込むと
「あっ、気にしないで忘れて下さい」
「イイのか?ヨンフォアのパーツなら 焼肉屋に捨てるほど在庫あるぞ」
豚美が念をおすと
「在庫って、俺の私物だし」
キムコが小声で呟く
「いや、私、今日まで、350 FOUR の写真毎日観てて、オリジナルでもイイかな〜気分で」
「気分で?」
「今日、目の当たりにしたら、メッチャ良くて!このまま乗って帰ります!」
「おぉぉ〜!」
「ありがとう〜夏美ちゃん」
中島と綾野が近寄ると
「とりあえず、イイ仕事したって事で」
豚美が〆ると
皆んな、ソファーやカウンター席に戻り
「じゃあさ、初ツーリングは、豊子ちゃんも誘って女子ツーだね」
アイスコーヒーのストローを加えながら、好豚が、夏美と豚子に提案すると
「この前、豚子さんが言ってたカフェ?」
「そうそう、豚人間カフェ!」
「やった〜楽しみ」
「なによ、豚人間カフェって、何処にあんのよ?」
豊子が 好豚と豚子に訊ねると、豚子が
「それが、メッチャ オモロいカフェなんよ」
「だから、何処よ?」
「箱根でね、豚人間オーナーが キャンディレッドのKO なんだよ~」
好豚が答えると
「はぁ〜箱根の KO だぁ」
豊子の顔が険しくなり、好豚が後退りしながら
「なんか、豊子ちゃん、怒ってない?」
好豚が豚子に囁いたので
「なんなんよっ」
豚子が代わりに、豊子に返すと
「もしかして、デブな KO かっ?」
キムコが呟くと、豊子が 胸の前で両腕を組みながら
「ちょっと、その KO の話、二人には、詳しく聞かせて貰うかんね!」
続きま〜す
Posted at 2026/09/17 22:18:19 | |
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