『1971年モナコGPのジャッキー・スチュワートに迫ったドキュメンタリー映画、日本でも公開決定!』
キャスケット帽とタータンチェックがトレードマークの偉大な元F1ドライバー、サー・ジャッキー・スチュワートが、2度目のF1世界チャンピオンに輝いた1971年。その年のモナコ・グランプリを友人として共に過ごしたロマン・ポランスキーによって制作されたドキュメンタリー・フィルムが、四十数年の時を経て再編集され、日本でも上映されることが決まった。
1971年のジャッキー・スチュワートと言えば、自身年間最多タイとなる6勝を挙げて2度目の世界チャンピオンに輝くと同時に、独自のシャシーを開発してコンストラクターとしてスタートしたばかりのティレルにいきなりタイトルをもたらした、まさに絶頂期にあるスター・ドライバーであったことに疑いの余地はない。そのシーズンの中でも、最も華やかな舞台として知られるモナコで、後に『戦場のピアニスト』でアカデミー監督賞を受賞したポーランド人の映画監督、ロマン・ポランスキーがその飛び切り特別な週末をカメラに収めていたと知れば、是非観てみたいと願うF1ファンは我が国にも多いだろう。モータースポーツの大ファンとして知られるポランスキーは、ジャッキー・スチュワートの友人でもあった。そしてF1界のスター・ドライバーには、友人だけに見せる姿があった...ということは、文末にご紹介する2分間の予告編を観ても窺える。
ジャッキー・スチュワートはまた、レースやサーキットの安全性に対する多くの提言を行ったことでも知られている。速いが他車との接触が多いアイルトン・セナに「君は危険な運転が多い」と忠告したのも、現役当時に多くの仲間がレースで命を落とすのを見てきたからだ。レーシング・ドライバーがその蛮勇を讃えられていた1970年代初期、「5年間レースをしたら生き残れる確率は3分の1しかない」とジャッキーはポランスキーに語ったという。例えばこのフィルムが撮影された1971年のF1世界選手権に参戦していたドライバーだけでも、ジャッキーの愛弟子で後継者と目されていたドライバーズ・ランキング3位のフランソワ・セベール、2位のロニー・ピーターソン、5位のジョー・シフェール、10位のペドロ・ロドリゲス、16位のマーク・ダナヒュー、20位のロルフ・シュトメレン、さらにヨアキム・ボニエ、シルビオ・モーザー、ピーター・レブソンがレース中または予選やテスト走行中の事故で死亡している。ジャッキーは前年に、ライバルでよき友人でもあったヨッヘン・リントとピアス・カレッジを亡くしていた。
スクリーンの中で世界チャンピオンは告白する。「マシンに乗った瞬間は、麻薬の注射を打ったような感じだ。全ての痛みは消え失せる」。そしてこう付け加える。「穏やかに走る。それが最速だ」
熱狂する観客が見守る中、モンテカルロの市街地に爆音を鳴り響かせ、世界一の栄光を目指して走るレーシング・ドライバーの裏には、友と仲間を失った悲しみがあった。それでもステアリングを握り、アクセルを開ける。そんな世界一速い友人の姿に、映画監督は何を見て、何を感じたのか。
このオリジナル・フィルムの『Weekend of a Champion』は、撮影された翌年にベルリン映画祭で賞を獲得したが、ドキュメンタリー作品は当時、劇場公開が難しく、1度テレビで放映されたきりで倉庫に仕舞われ、ポランスキー自身も忘れかけていたという。それが4年前、ロンドンのテクニカラーから受けた連絡が切っ掛けとなり奇跡的に発見された。ポランスキーは再びこの作品を世に出すことを決め、フィルムを直して編集し、サウンドをリミックスするなどの手を入れた。そして40年前と同じホテルの同じ部屋で、ジャッキーと再会し語り合い、その映像が新たな撮影素材として追加された。
この一連の作業について、ポランスキーはこう語っている。
「現在の私のスタッフはオリジナルを知らない者ばかりだった。 スタートした時はここまで大変な作業になるとは思わなかった。 なぜ私がこのフィルムに再び魅せられたのか。それは感傷的なものだろう。 あの素晴らしい時代のノスタルジアが私を動かしたんだ」
そしてこの撮影から2年が過ぎた1973年。自身のF1出走数が記念すべき100回となる最終戦アメリカGPの前日、練習走行中にセベールが事故死したことから決勝レース出場を辞退し、「私は1滴の血も流さずレースを引退できることを誇りに思う」という有名な言葉を残してドライバー人生を終えたジャッキー・スチュワート。今回、日本でも公開が決まった『ウイークエンド・チャンピオン 〜モンテカルロ 1971〜』には、彼がそこに至るまでの、現役ドライバーとして様々な想いを抱えた貌が映っているはずだ。上映は7月18日(土)、渋谷シアター・イメージフォーラムにおいて、11時からのモーニングショーと21時からのレイトショーという形で予定されている。今後は地方でも公開されることを願いつつも、お近くの方は是非、劇場へ足を運んでみてはいかがだろうか。
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これも面白そうなんで、レンタルDVDが出たら・・・(^^;
Posted at 2015/07/17 06:50:03 | |
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