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青山一丁目駅

通勤する視覚障がい者を見殺しにして、一見の観光客を優遇する愚
2016年09月22日
カテゴリ : 東京都 > 交通情報 > その他
 東京メトロ・銀座線(当時は東京高速鉄道線)の駅として、戦前の1938(昭和13)年に開業した地下鉄駅。
 ちなみに「青山一丁目」なる地番は、東京のどこにも存在せず、駅所在地は東京メトロ側が「南青山1丁目(開業当時は赤坂青山南町1丁目)」/東京都側が「北青山1丁目(旧・赤坂青山北町1丁目)」となる。

 1978(昭和53)年に半蔵門線、2000(平成12)年には東京都交通局・大江戸線の駅が開業、3路線が乗入れる利便性の高い駅に成長した。

 イチョウ並木で有名な神宮外苑・ラグビーの聖地「秩父宮ラグビー場」・学生野球の総本山「神宮球場」の最寄り駅として、西隣の銀座線「外苑前駅」とともに機能しているが、乗入れ路線が多い分、当駅の方が便利な利用者が多いだろう。

 また駅を出てすぐの交差点角には、自動車大手「本田技研工業」の本社が聳え立つ。自動車好き、なかんずくホンダファンは一度ならず訪れたことがある方も、少なくないことと思う。



 最初に乗り入れた銀座線ホームは、折り返し設備が現在に至るまで置かれておらず、当駅始発・終着の列車は設定されない。ホームの長さも、3両編成までしか対応できないコンパクトな駅だった。

 輸送力増強のため銀座線電車が4両編成化された折には、1両分を締切扱いして凌いだものの、更に6両化された際にホームの延伸工事を施工。
 電車編成中でドアの開かない車輌が生じる不都合は解消されたが、この際に拡張されたホーム部分で、後に悲惨な事故が発生してしまった。



 拡張されたホームは、反対側ホームへ向かう連絡通路階段と軌道敷の間を掘削して開設、配置上の制約からスペースを確保できなかった上に、天井を支える柱を建てざるを得ず、更に幅が狭くなった。

 その場所で2016(平成28)年8月、通勤で利用されていた視覚障がい者の男性が転落、折悪しく進入してきた渋谷行き電車に轢過されて死亡した。

 ホーム上には、ここまで順調にガイドし、事故が無ければハンドラーと共に電車で帰路に着いていたはずの盲導犬が、所在無げに佇んでいたという。





 居合わせた駅員は「注意を促したものの線路に転落した」と証言しているが、それは即ち「駅員が見殺しにした」に等しくないか。
 通勤で利用されていたとのことだったので、見知った駅員も「慣れているお客さんだから大丈夫」との油断があったのだろう。
 
 希望の乗車位置までエスコートする、もしくは電車が進入するまで制止するのが、取るべき対応だったと考える。



 電車の運転士も、事故を防ぐ策を講じられなかったか。
 銀座線はホームドアの整備が遅れており、上野駅の一部を除き設置されていない。
 一方で、ほぼ全駅がホーム長さの余裕が無く、過走を防ぐため車輌および軌道側には、ホームドア運用に必須の、自動で定位置に停止させる装置が先行して装備されている。

 青山一丁目駅の前後は、渋谷方も浅草方もほぼ直線で見通しが良く、盲導犬に導かれた利用者がホームを歩く姿を、遠くから確認できたかもしれない。

 マニュアル運転であれば、その時点で反射的に減速もしくは非常ブレーキを作動させられたのではないか。
 現行の自動運転中であっても、マニュアル操作を介入させることはできる。

 まさか漫然とオート運転に任せていたが為に、転落者を轢過してしまった……などという状況でなかったか。




 私がここまで東京メトロに対し、厳しく苦言を呈するのは別の事情もある。
 列車内の広告モニター画面や、公式HP上で放映しているPR動画だ。


 不安な面持ちで駅構内に佇む外国人旅行者へ、東京メトロの社員が次々親切に声を掛ける。
 その場で説明するだけでなく、複雑な地下空間で迷わないよう、目的地至近の出口まで案内している。
 旅行者はスムーズに東京観光を達成し、笑みを浮かべる……というストーリー。


 盲導犬を連れ、明らかに視力障がいを抱えていて白線を確認できない方に対し、「白線の内側に戻ってください」などと冗談のようなアナウンスをしただけで見殺しにしてしまった企業は、物見遊山の外国人旅行客に対しては懇切丁寧に案内してくれるらしい。
 はらわたが煮えくり返り、私はこの広報動画を正視できない。


 外国人旅行客の接遇・案内は、東京オリンピック開催を控え大切な課題ではあるが、手が足りずに対応が十分でなく、多少の不便を感じたとしても生命に直接的な危害が及ぶものではない。
 たまたま居合わせた利用者が、ボランティアで案内を申し出ても何ら問題は生じない。

 一方で視覚障がい者が単独でホームドアのない駅を歩くのは、当駅における転落事故の顛末を顧みる迄も無く、死に直結するリスクを孕む。
 鉄道利用者の安全は、鉄道会社の責任で確保すべき最優先事項であり、鉄道マンでなければ主体的に携わることができない。
 

 外国人相手の無償案内サーヴィスを展開する余裕があるなら、資本および人的資源を、あらゆる利用者が安心して移動できる体制づくりに投じるべきなのは論を待たない。

 日々通勤で利用する客の安全確保よりも、次は何時来るのか分からない旅行者の便利を優先するが如き企業姿勢は、亡くなられた方と同じ利用者として、鉄道を愛する者として、看過し得ない。




 事故の犠牲になられた方と同じ、地下鉄利用者の一人として、自戒の念を込めて弊記事をご覧の各位にも申し上げる。

 駅員も忙しいし、そもそも配置されていなかったりする。運転士も既に運転操作に従事していないどころか、完全無人化された路線すらある。
 鉄道マンの注意力や安全装置のパフォーマンスには、限界があるものと知るべし。

 最後の砦は、居合わせた我々が障がいをお持ちの方の動向を見守り、手助けの要や危険を察知した時点で積極的にコミュニケーションを取って、事故の芽を未然に摘み取ることだ。


 障がい者団体では事故の報に接し、是非「危ないですよ」と声を掛けてほしい、と仰っている。
 更に一歩進んで、「ここが安全なので、一緒に待ちましょうか」/「どちらまで行かれますか。途中まででもお供します」とお伝えできたら、単に危険除去だけでなく、移動のお手伝いにもなる。



 東京メトロへは、事故発生の芽を見過ごし、実際に事故を誘発させてしまう企業風土の改革も含めて、ホームドアの設置の前倒しを始め安全確保の取り組みを強力に推進してもらいたい。

 並行して我々利用者の立場でも、協力できることを積極的に手掛けたいと考える。





住所: 東京都港区南青山1丁目1‐19

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