2005年09月01日
9月に入ってからまた暑さがぶり返してきました。
体調管理には気を付けましょう。
ふいに道幅が狭くなった。
センターラインがなくなり、路面自体も何だかデコボコしている。
途端に、私はランクルの大きさが気になりだした。
普通の道を走っている分にはさほど感じなかったが、やはりランクルは大型の四駆なのである。
心なしかボンネットの先端が伸びたような錯覚に襲われ、私はアクセルを緩めた。
カーブの度に、また先行車との車間が開き始めた。
私も何とか必死についていこうとしているのだが、いかんせんランクルの大きさに振り回されて思うようにステアリングを切ることができない。
ましてやこのランクルはクロカン能力を高めるために、フロントスタビライザーを抜いているのだ。
踏ん張りの効かなさも手伝って、私はランクルを持て余し始めた。
そんな時、目の前に突然路線バスが対向してきた。
先ほどからかなりスピードを落としていたため、特に急ブレーキを踏むことなく減速できたが、道幅が狭いためすれ違えできるほどの余裕が残っていない。
先行の2台は既にその先を走り去っていた…
慣れない車両感覚に冷や汗をかきながら、私はバスとのすれ違いに挑んだ。
社長に左側の間隔を確認してもらいつつ、そろそろとバスの左側にできたすき間にランクルを進ませていく。
私のすぐ右側をバスの車体が舐めるように動き出すと、緊張感はピークに達した。
わずか数mの距離を進むのに、無限のような時間が過ぎていく。
ようやくすれ違いに成功すると、バスは後方に走り去っていった。
ホッとする間もなく、私はまたアクセルを踏みしめる。
先行車はまた、視界の彼方に去ってしまっていた。
山の一本道だからはぐれることはないにせよ、これ以上の遅れは許されない。
道は再び広くなり、私はこれまでの遅れを取り戻すべく、全力で飛ばしまくった。
しばらく走ると休憩所の駐車場に、先行の2台が停まっていた。
どうやら一時休憩のようだ。
私はランクルを先行車の隣に停めると、ようやくの思いで運転席から降りた。
社長がIさんと何やら話し込んでいる間、私は朝からここまでの道のりを振り返って、今後の走りに不安を抱いていた。
そこへ社長がやってきて
「○○君、運転オレと替わるぞ」
と言ってきた。
どうやら私の運転では周りの足手まといになるから、交替するというものらしい。
今から思えば屈辱的な話なのだが、この時の私には正に渡りに船であった。
ともかく社長の運転に替わって、再び3台は隊列を組んで走り始めた。
3台は今までとは比較にならないスピードで、飛ばしまくっている。
道は再び山坂にかかりだしていた。
Posted at 2005/09/01 17:51:06 | |
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2005年08月31日
みなさん、今日は八月最後の日。
夏休みの宿題は終わらせましたか~?って、そんな人はいないですね(汗)
私は震えるステアリングを右手に握って、ミッションを1速に入れた。
サイドブレーキを降ろして、クラッチを踏んだ左足をそろりそろりと戻すと、何とも形容のしがたい力で車体が動き始める。
ランクルというよりディーゼルエンジン車を運転するのが初めての私にとって、この加速感は新鮮だった。
車体の大きさはともかく、意外と運転しやすい。
が、そう思ったのも一瞬で吹き飛んだ。
前方を見渡すと、先行の2台は既にはるか彼方を突っ走ってる。
「ちょっと待て!」
私はそう思うとアクセルを更に踏み込んだが、その車間は一向に縮まる気配を見せない。
スピードメーターは既に制限速度を大きく越えているのにも関わらず、先行の2台は更に加速を続けているようだ。
「おい、無理するなよ」
と、社長が助手席から声をかけるが、このままでは先行車を見失ってしまう。
私は更にアクセルを踏み込もうとしたが、前方の信号機が赤に変わってしまった。
仕方なく停車したが、その間に2台は視界の彼方に消えてしまった。
「(前の2台)見えなくなっちゃいましたね」
信号待ちしている間、私は社長に話しかけると
「まぁ行き先は分かってるから、ゆっくり行けや」
と、何の問題もないかのように社長が答えた。
あ、そうなのね…と私は少しホッとしたが、よくよく考えてみれば今回の走行会はあくまで「接待」ということを思いだした。
これでは多少の遅れはともかく、「見失う」のはまずいんじゃないか?
結局社長がかけてくれた言葉とは裏腹に、私は大いにあせってクルマを飛ばす羽目になった。
しばらく走っていくうちに、先行の2台が道端で停まっているのを見つけた。
どうやら後をついてきていないのに気付いて、待っていてくれたらしい。
こちらが追いついてきたのを確認すると、2台は再び走り始めた。
今度は先行車も気を使ってか、少しスピードを落とし気味に走っている。
それでもこっちはついていくのに必死なのだが、先行車はそんなことなどお構いない走りだ。
普段から乗り回している人間と同じペースで走るなど、今日初めて運転する人間に求める方もどうかと思うが、段々私は思うに任せない走りにもどかしさを感じるようになった。
そうこうするうちに3台は市街地を抜けると、いよいよ山道にさしかかってきた。
上り坂に入っても、先行車のスピードは落ちる気配がない。
道もつづら折れの様相を見せ始めた。
私はカーブにかかり出したステアリングを握りしめながら、必死にアクセルを踏み続けた。
Posted at 2005/08/31 17:24:01 | |
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2005年08月30日
2週間以上間を開けていたんで、少しペースアップしようと思ったんですが、中々そうは行きません。
どうしたもんだろ…
まず最初に、前回の練習にも参加したHさんが、いつもの豪快っぷりで登場してきた。
この間の損傷は当然そのままである。
そのすぐ後を、私の会社の同僚であるYさんが、愛車のパジェロショートで駆け込んできた。
私と同じく、「パジェロに乗っている」というだけで招集された、もう一人の犠牲者である。
ただし今回は「それなりのコース」を走るため、HさんのアシスタントとしてHさんのランクルに同乗することになった。
一歩間違えれば私がHさんのアシスタントになりかねなかったので(何しろ元上司なのだ)、私にとってはもっけの幸いといったところである。
もっとも、社長のランクルを運転するのとどちらがいいのかは、なんとも微妙な比較なのだが…
そして今回のホスト兼主催者のIさんは、2人の犠牲者…ではなく部下を連れてきた。
撮影担当のMさんと、同アシスタントのTさんである。
Mさんは自家用にジープラングラー(改造済)を乗りこなす自称オフローダー、Tさんは自家用にユーノスロードスターに乗っている、今回のメンバーの紅一点だ。
2人ともIさんのお気に入りで、公私共にIさんのお供をよくしている。
私とも仕事で顔を突き合わせているので、知らぬ仲ではない。
今回は2人とも、Iさんのランクルに同乗することになる。
それにしてもIさんのランクルは、あちこち乗り回している割には随分と新しい感じだ。
まるで新品のような…その疑問は、次のIさんの一言で解決した。
「Sさん(社長のこと)、ランクル今度出た新しいやつに換えたよ」
ランクルを新しいものに換えた?
ランクルはそれなりに値の張るクルマだと思うのだが、Iさんも随分と思いきった事をするものだ。
しかもこのランクル、この間出たばかりの4.5Lガソリン仕様車ではないか。
もちろんSJさんの手も入っていて、既に原形を留めていない状態であるのは、社長のランクルと同様である。
金のある人はどこか違うと言うが、まだ出たての新車をいきなり改造の上オフロードに駆り出すとは、私にはとてもマネのできない芸当だと思った。
ともかくこれで、今回のメンバーが全員そろった。
完全オフロード仕様のランクル80が3台、立派な巡洋艦戦隊の完成だ。
隊列は先頭をIさんのランクル、真ん中がHさんのランクル、しんがりを私が運転するランクルが務めることになる。
私は運転席に乗込むと、初めてランクルのイグニッションをひねった。
私のエスクードとは明らかに違う振動と共に、エンジンがうなりを上げた。
Posted at 2005/08/30 17:30:29 | |
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2005年08月29日
B-レイドも無事終わり、ようやく落ち着いたので久々の再開。
ようやっと本題です。
その日は、いつもより早く目が覚めた。
普段の出勤より早い時間に集合するというのもあったのだが、得体のしれない「接待」が気になっていたのも確かだった。
その上今回の相手は、得意先のお偉いさんである。
私自身は実際のところ、社長のアシスタントでしかないのだが、気を使わないわけにはいかない。
ただ普段と違うのは、ネクタイを締めない「接待」ということだ。
それだけが唯一、気の休まる所だった。
空は私の気分を表すかのように、雲が空を覆っていた。
何だか今にも雨が降ってきそうである。
用心、と言うわけではないが、私は雨具と長靴を持っていくことにした。
今にして思えばオフローダー必携のアイテムなのだが、実はこの時までこういった用意をしてこなかったのだ。
まぁ、素人オフローダーまるだしだったわけである。
しかし、この選択は思わぬ方向に私を導く結果となってしまった。
「○○君、今日は用意がいいなあ。気合いが入ってるじゃないか!」
集合場所で社長から、随分と気合いが入っているかのようなコメントをいただいた。
…イヤ、全然気合い入ってないんですけど…
私の心の声など知らぬかのごとく、社長は上機嫌になった。
「これだったら、今日は運転任せてもいいかなあ?」
「えっ?!」
何か社長がトンでもないことを言ったように聞こえたのだが、気のせいか?
いや気のせいではなく、今日の運転を私にさせるつもりのようだ。
念のために言っておくが、私は今まで社長のランクルを運転したことは一度もない。
唯一の体験は、前回ブレーキを踏んでいただけのこと。
それをいきなり「接待」の場で運転するというのか?
さすがにこの私の狼狽を社長も察したらしく、
「まぁ、現場に行くまでの話だけどな」
とフォローを入れてくれたが、どちらにしろ心臓に悪い話だ。
第一、現場までの道とはどんな道なんだろう?
山道であることは間違いないから、決してイイ道じゃないんだろうな…
そうこう考えを巡らされているうちに、今回のメンバーが続々と集まってきた。
Posted at 2005/08/29 17:24:03 | |
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2005年08月10日
だらだらと話を続けていますが、物語も今回で折り返しとなります。
次回からようやく「本題」に入れる…
社長がフックをジープから外し、ワイヤーを巻き取りだしたのを見て、ようやく私は踏みしめていたブレーキから力を抜いた。
「ありがとうございました」
ジープの持ち主がお礼を言う中、私は運転席から降り立った。
緊張感から解放されたからか、一気に疲れが全身を襲った。
ここでちょうどキリがついたからということで、お昼ご飯になった。
もっとも周囲には店など何もないので、先に買い込んでおいたおにぎりをその場で食べるだけだが。
私は社長の勧めで、ランクルの天井にあるラックによじ登って、そこへ腰を下ろした。
クルマの天井に登るのも初めてだが、そこからの景色はちょっとした展望台に上ったようで、中々気持ち良かった。
ささやかな食事が終わった後、ここで先ほどの疲れもあったのか、少し眠くなってきた。
後から振り返れば、先ほどの私はブレーキを踏んでいただけなのだが、慣れない事の連続で力が入っていたせいもあるのだろう。
知らぬ間に私はラックの上で、うたた寝をしていた。
それから10分位寝ていたのか、私は社長の声で目が覚めた。
突然のことで、私は何が何だか状況がつかめずにあたふたして、危うくラックから落っこちそうになった。
「あー、びっくりした!」
私はラックから落ちなかったのもあったのだが、何よりそれが「仕事中」でなかったこともあって、必要以上に胸をなで下ろした。
まぁどんなシチュエーションでも、「社長に」起こされるなんていうのは、あまり気分がいいものではないのは今更言うまでもない。
背面タイヤを伝わって地面に降りると、私は再び助手席に腰を降ろした。
その後1時間ほど走り回って、今日の「練習」は終了した。
この日はHさんのランクルが下腹をこすってボディーを少しへこませたことを除いて、取り立てた損傷はなかった。
しかし、こういった所を走った後に待ち受ける洗車はランクル2台ということもあって、いつもにも増して大変だった。
そんな洗車のさなか、ランクルのタイヤハウスの泥を流しながら、
「来週はもっとスゴイことになるから」
と、社長が嬉々としてしゃべっていた。
そう、「本番」は来週にあるのだ。
私はあらためて、一週間後の「接待」に思いをはせるのだった。
Posted at 2005/08/10 17:52:32 | |
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