黒カウンテスのブログ一覧

仕事が終わって一人きりになりたいとき、あなたは街角のショットバーに行きますか？

私は、テレビ画面をオフにして好きな音楽をエンジン音にミックスさせながら、黙々とカウンタックを走らせる。
今日のmusicは小澤征爾指揮ボストン響であのパバーヌ。
ちょうど日本はスーパーカーブームだった時のクレジット。
最近のサイトウキネンの躍動感あふれるテイクも嫌いじゃないけれど、この音にはかなわない。

冒頭からいきなり始まるソロはもちろんチャールズ・カヴァロフスキ（Kavalovski）。
核物理でＰｈ．Ｄ（博士の学位）を取って研究者になり、35歳でテニュア付きのフル・プロフェッサーになった。終身雇用の権利付きの大学教授なのだから地位も名誉も最強である。この時代は、博士になるのも教授になるのも今の時代とは比べものにならないほど難しかった。
それなのに、ある日突然１年間サバティカル（用途不問長期休暇制度）を取ってオーディションを受け趣味だった音楽の世界に転職してしまう。
趣味の楽器は、高校から初めて大学院時代には物理の研究と並行して毎日３時間練習したと言うが、専門的なレッスンを受けていたわけではない。あくまで趣味で演奏するアマチュアだったわけだ。
それなのに、こんな信じられない演奏を残してしまう（偶然ではない。ほかの曲だってすごい）。

村上春樹の著書によると相当偏屈な人だったようだが（笑）、難解な物理学を極めるは、プロを目指していたわけじゃないのにちょいと1年頑張って世界最強ボストン響に受かってしまうは、しかも主席だは、なんてステキなんだあなたの人生は！！しかも６０歳過ぎてさっさとやめるし。次はどんな世界の住人になったんだ。

あの３．１１の東日本地震で、タケシとキムタクが出ていたリボーンＣＭでこのテイクが流れていた。選んだ人は相当判る人だ。何もかもが素晴らしかった。私は３月中に福島に行ってボランティア活動に参加してきているが、あの海岸の現実感のない惨状は規制がかかる写真でも伝えることはできないだろう。それを見事に再現している。

うちの親父も国立大だから終身雇用な教授様で同じ（生物系だけれど）だったけれど、定年までしっかりお勤めしほかには車はおろか自転車にも乗れない。いろんな人生があるなぁ。