
レプリカ好きにとってパチモン103ホルンはとても興味深い存在です。
まず簡単に103ホルンとはなんぞやというのを説明します。
東京藝大のホルン科の学生ならシュミットかアレキサンダー103だと思います。世界最高峰のベルリンフィルオーケストラのホルンセクションは全員アレキサンダー103です(最近入った中国人の方は違うかも)。アレキサンダートーンという独特な音が特徴です。200万円以上する楽器ですが(¥2,255,000)、ヤマハが輸入していてばんばん売れていますww
ホルンの管の巻き方は、いろいろありますが、吹きやすいガイヤー巻き(クノッフ巻き)やクルスペ巻きが2大主流です。ところがアレキサンダーの103と言うモデルは、どちらでもない、客席から見ても103と分かる独特な巻きをしています。4番ロータリーが大型で「裏返し」になっているのです。この大きな特徴は103だけなので、ステータスシンボルにもなっていました。高校生の吹奏楽コンクールの全日本大会に行くと、大阪桐蔭高校とか103がずらりと並んでいました。高校生で103なんて羨ましいです。
日本のホルンメーカーとしてヤマハがあります。車で言うとトヨタみたいなものです。音程は良いし頑丈だし外れが無いし発音もとても良いです。高くても1000万円です。アレキサンダーは車で言うとフェラーリでしょうか。目立つし高価だし当たり外れはあるけれど音が良いです。安くても3000万円でしょうか。
ヤマハで充分なんです、本当は。
ところが、このアレキサンダー103の外見的アイデンティティに危機が訪れます。
アレキサンダー103に関する特許権は、すでに保護期間が終了しており、消滅しているんです。
特許権の保護期間は、原則として出願日から20年間です。アレキサンダー103は1909年に誕生した製品であり、その設計に関する特許はとっくの昔に期限切れとなっています。現在では、誰もがその設計に基づいて楽器を製造することが可能なのです。
したがって、アレキサンダー103というモデル名やブランドは商標として保護されていますが、製品自体の特許権は存在しません。「アレキサンダー103」としてつくったり売ったりしなければ全て合法なのです。特徴的な4番スパイダーロータリーバルブも使用可能なわけです。
というわけで、世界各国で103のレプリカモデルが登場しました。
でも、103はアレキサンダーしかあり得ないと言うことなのか商業的に成功例がありません。
ここでは中国製「パチモン」を主役にもってきたいと思います。
中国人は、日本人並みにまじめで器用で研究熱心です。そんな彼らが安い賃金で103をつくったらどうなるか。・・・脅威でしかありません。
中国製の103に自社ブランド名を冠して日本国内で売っている例がいくつかあります(もちろんアリエクで検索して中国から直接安い103レプリカも購入できます)。
私は本家アレキサンダーの少し古めの103を1台持っています。同時にパチモン103であるハマーズ製YTFH-603Lも持っています。これは静岡県浜松市にあるバルドン楽器のブランドです。見た目は、とても丁寧につくられていて、ラッカーも半田処理も素晴らしいの一言です。音程も良く、社会人吹奏楽団(コンクール支部代表レベル)で使い続けていましたが、誰からもなんの指摘もありません。音はアレキサンダートーンにはちょっと似せるのは難しい「筒が鳴っている感じ」です。ちゃんとホルンの音はしています。アレキサンダーの独特な吹奏感、抵抗感はありません。ベルフィレアは厚めなのでもっと抵抗感がありそうなのですが、無くは無いですがアレキサンダーのそれとは違います。抜けがいいです。この見た目で、ガイヤー巻きのような抜けの良さを求める人なら最適です。あと、アメリカンシャンクです。103なのにアメリカンシャンクのマウスピースが使える!これも注目点です。なんだか良いことばかり書いていますが、実のところ結構いいです。音程のツボが広いので、ピアノをやっていたりとかして音感がいい人ならば、中学生の吹奏楽部にも使えます。楽器を買う人は、きっと部活の備品のヤマハでさんざん練習してきて、それなりに上手になってから考えるでしょうから、パチモンという称号を気にしないならこの楽器は「あり」でしょうね。新品で15万円くらいでした。もっと驚くことがありました。本家アレキサンダー103の「主管」と「B♭管」で試したんですが、問題なくこのハマーズ製103に差し込めるんです。設計もサイズも精度も本家と同じなんです。違うのはベルスクリューの設計、ロータリーキャップの彫刻、そしてたぶん金属(イエローブラス)の成分でしょう。つばぬきの仕様まで同じです。今回私の持つ「本家」はノーラッカーだったりゴールドブラス(303トリプルも持っているんです(^_^;))だったりするので区別が付きますが、同じイエローブラスのラッカーモデルだったらもうどれが本家の抜差管か分からなくなります。厚いと感じるベルの厚さも、マイクロメータで測ると0.36mmで厚くありません。アレキより硬いブラスを使っているのでしょうか。
もう売っていませんが、中古があったら安く手に入れておくのはいいのではないでしょうか。
あと、有名でしかも今も売っているのが、Brasspire unicorn(ブラスパイア・ユニコーン)のBPFH-K3Lでしょう。渋谷のネロ楽器で売っていたので試奏させてもらいました。マウスパイプが短いとかマウスパイプの当て金がないとか細かい仕様で気になるところはありましたが、音程も良く、やはり抜けの良い楽器でした。新大久保のTC楽器(大久保楽器?)にも展示してあって、こちらを試奏したときにはF管のGやB♭の音程と音色が気になりました。音色もホルンらしい音を出すには技術が必要でした。経験のある大人用の楽器だと感じました。B♭管の主張が強く、抜けは良いし音程もまずまずなのに、どこか吹きづらい、初心者用トランペットみたいな感じです。抵抗感の強いアレキと真逆かもしれません。きちんと工場出荷時点で吹いて検品してあるので外れは無いと聞いていますが、たまにはこういう個体もあるのでしょうか。最近マイナーチェンジしてマウスパイプがレッドブラスからゴールドブラスに変わったり、いろいろ改良したらしいです。買うなら新型ですね。こちらは20万円くらいでしょうか。こちらも、アレキサンダーを買うほどお金をかけたくないし、好みでもないけれど、1台欲しいなという方にはよいのではないでしょうか。ゴミにはならなさそうです。モモや山野楽器など多くの実店舗で展示していますので、実際に試奏して買えば使える楽器です、中古になると5万円くらいでしょうが、試奏しないで買うのはお勧めしません。まあ楽器はなんでもそうですが(^_^;)。そうそう、アメリカンシャンクでした。試奏レベルなので音色は、吹き込んでこれからつくっていく感じですが、普通のホルンとしてありえる感じです。抵抗感は少なく、少量の息で弱く音を発音するみたいなのは苦手っぽい気がしました。
つぎに、これは実際に買って所有したこともあるのですが、PLAYTECH (プレイテック) のPTHR500です。有名なサウンドハウスのブランドです。これはゴミでした。しばらくしてヤフオクでドナドナしました。まず基本的な音程が低くて、もう442Hzではチューニングできません。全部の抜差管を押し込んでもまだ低いです。あとマウスピースのシャンクが不明です。アメリカンシャンクのマウスピースもヨーロピアンシャンクのマウスピースもあいません。ぐらぐらします。付属の謎マウスピースはちゃんとハマります。さらに、新品だからキレイなのですが、作りが全部でたらめです。下手な人がつくったプラモデルみたいです。斜めになっていたりあっちの方向を向いていたり、もう芸術作品です。F管がマウスパイプと干渉して主管が斜めになっていたり。マウスパイプも開いているので小さい中学生だと、構えるのは難しいかもしれません。たまにヤフオクやメルカリで出てきますが、写真を見るといつもそうなので(アマゾンで売っていたときの見本画像でも確認できます)、どの個体もそういう作りなのだと思います。そういう巻きだといえばまあホルンとしては成立しているんですけれど、レプリカとしてはお粗末ですね。あと、つば抜きはありませんでした。1番ロータリーが最初からヌルヌルしていて遅かったですが、音程は、口で合わせてなんとかです(つまり音程は悪いです)。音色は、そんな楽器の状態でしたので、出番も無くあまり息を通せず、よく覚えていません。よい音では無かったと思います。この個体だけかもしれませんが、新品で5万円台でしたから、ほかの「パチモン」とはレベルが違うのだと思いました。
ほかにも中国製103として出回っているのは・・・
フォレストというブランドのLKFH-5031
プレソン(野中貿易)のPR-103
Axis(ヤフオク)のHR-833
BRIZ(正統派)の1963SC
まあホルンは特に気むずかしい楽器なので、試奏無しで買うのは、パチモンとはいえやめましょう(笑)
レプリカ・カウンタックも「プローバ」「カウンテス」「フィエロ」と有名どころはこの3つですが、様々です。
Posted at 2025/12/07 07:22:20 | |
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