
あっという間に車は独りで突進していった。
私も相方も周囲の人もなすすべもなく。
不幸はいつでも突然やってくる。
今日は、ムルシMTGにいきたいなと思っていた。
しかし最近の体調不良から腰は重かった。
車のパワーバルジにあるエアーアウトレットのフィンを小加工。
今になってみれば、そんなことしていないでさっさとSAに行けば良かった。

これは有事の後のワンショットである。
時間列で振り返ってみる。
①午後から出かけた。あてはない。
②酷い渋滞だった。ふとバックミラーを見るとエンジンルームの様子がおかしい。
③ヒートシンクファンネルが外れている気がしてならない。
④そぉっと、そぉっと駐車できる場所を探す。どきどきしている。
⑤コンビニの駐車場発見!駐車場はかなり広い。
⑥なんと末広RZV500Rがいる!しかもUSインターカラー。ますますどきどき。
⑦落ち着いて駐車。RZVのオーナーに声をかけしばしダベリング。
⑧近くで見るとますます素晴らしいバイク。興奮続く。
⑨私の車にも興味を持っていただいた。
⑩ライト付けっぱなしだった、ずっと。やばいかな。そういえばファンネル気になる。
⑪ライトを消す。バッテリーが少し心配。いざとなったら押しがけするか。
⑫試しにセルを回してみる。シートに座らず。そう、逆カウンタックリバース状態で腰掛けて。
⑬元気よくセルが回った。ほっとした(っけ?)。
サイドはいつもよりしっかりと引いてあった。
さらに念を入れてギアも入れておいた。
クラッチを踏まなくともセルが回るこの車だから、ちゃんといつもはギアを抜いたのを確認する。
でも、この日はどきどき興奮が収まらなかった。
いや体調不良のせいか・・・。
⑭ギアが入ったまま一発でエンジンに火が入り、そのまま車は突進した。
あっというまだった。
車は私の手を離れ独り走り出した。
駐車場の端に向かい、車止めに当たり乗り上げまだ進む。
後輪も車止めを乗り越え、目の前にフェンスが迫ってくる。
止まらない。止めれない。
どうにも出来ない、絶望の一瞬。
音もなく車はぶつかって止まった(本当は音はあったのかもしれない)。
スローモーションのように自分の車の右前がぶつかっていくのを見る自分がいる。
なすすべもなく。
クラッチも踏まず、反動でギアを抜いた。
エンジンを止め。
心配して駆け寄ってくる影に目を向けた。
すぐ横の道は大渋滞。
恥ずかしい。やってしまった・・・。
車は、車止めとフェンスの間にすっぽりはまってしまっていた。
車の右前がささっている。
末広RZV500Rをご存じだろうか。
千葉の末広オートスタッフが手がけたコンプリートバイクである。
この世には11台ある。
市販2ストバイクはもう姿を消したが、今のモトGPの前、世界最高峰のバイクレースWGPでは2スト500ccが席巻していた。
レーサーレプリカ全盛のNSRやTZRの少し前にRZV500Rはヤマハから登場した。
WGPと同じ2スト500ccである。
もう前にも後にもこんなバイク販売されない。
・・・なんか、カウンタックに似ているな。
基本設計が古くてアルミフレームでも鋼管チューブラーでもない。
でもエンジンは最高!!
そこで、TZR250Rのエンジンをこいつに交換して現代に生まれ変わったというコンセプト。
車検のない250ccのエンジンから車検のある500ccのエンジンにスワップするのだから、なんと新規登録。
まもなくして、排ガス規制のために新規登録できなくなり、あえなく11台で生産終了というわけ。
このバイクは、そのプロトタイプ、初号機なのである。
ヤマハ党で、一時はTZR250R(3XV)を20台近く所有していた私にとってこのバイクは神にも等しい存在なのである。しかも色もUSインターカラーと琴線にずばずば触れてくる。
なお、11台目はあの漫画家
藤島康介である。千葉県つながりか。

あれから進化し続けたのだろう。
マルケのホイール
スタックのメーター
チタンのワンオフ4本出しチャンバー&マフラー(後方排気&サイドツイン)
オーリンズの倒立フォークにラジアルマウントキャリパー
ブレンボのレーシングキャリパー&ラジアルポンプ
本物レーサー500V用のオーリンズリヤサス。
ワンオフ湾曲アルミスイングアーム
ワンオフアルミBIGタンク
カウルはもちろんワンオフでドライカーボン製
・・・書ききれないほどのフルカスタムはコンプリートマシンならではの完成度。
このバイクに異常なまでに反応したわけが理解できるだろう。
浮気をすると車はすねる
他の車にうつつを抜かしたり、新しい車に乗り換えようとか考えていると突然エンジンがかからなくなったり調子が悪くなる。
趣味車に乗る者の言わば「常識」である。
私の場合、すねて走って行ってしまった。
「ごめん、行かないで、機嫌を直して・・・・。」
反省したm(_ _)m
ちなみに
車は無事。
バンパーの先の塗装が5mmはがれたが、
フラットなボディ裏もかすり傷一つ無し。
午前中の整備でちょい車高があがっていたことで、車止めにどこも干渉しなかったらしい。
また、フェンスがうまくクッションになったせいで、FRPなボディにも機関足回りにも影響を与えなかったようである。ちなみにフェンスも無傷だった。
最近ボディのアライメントデータをとってもらったので、帰宅後一応見てもらった。
アライメント変化無し。
ボディフレームは何カ所もプロットしてデータ化してあったので、フレームの異常も皆無であることを確認できた。
ホイールも大丈夫。
あとはこの衝撃でなにか外れたりしていないか、今後要観察という感じである。オイル漏れ水漏れクーラント漏れ無し。エアコン良好。シフト好調。エンジン好調。
改めて不具合は全くなし。
良かった。ほんとに良かった。
人とか車とか店舗とか、
そんなとこに突進していたらと思うとやっぱり怖い。
ドラレコ動画は戒めのために、しっかりコピー保存した。