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2019年07月31日

フォードOHV V8エンジンの系譜 ~最後のフォード・ビッグブロックV8~

前回の「フォードOHV V8エンジンの系譜 ~ウィンザーV8の登場~」の続きです。

 前回は最後まで生き残ったフォード OHV V8エンジン「ウインザー」について書きましたが、今回はフォード最後のビッグブロックである「385シリーズ」について書いていきたいと思います("385"の名称は460cu.in.バージョンのクランクシャフトのストローク長3.85in.に由来しています)。

フォードOHV V8エンジンの年表
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 1967年、フォードは新たなビッグブロックである385シリーズV8をリリースします。このエンジンは、以前紹介したミディアムブロックのFEシリーズとビッグブロックのMELエンジンを置き換える目的で開発され、それまでMELエンジンが生産されていたオハイオ州リマにあるフォードのリマ・エンジン工場で製造されました(このためリマ・エンジンとも呼ばれます)。

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385シリーズV8(429cu.in.)の断面図

 385シリーズV8は(乗用車では)460cu.in.と429cu.in.のみラインナップされ、1968年モデルのリンカーン・コンチネンタルに460cu.in.が、同年のフォード・サンダーバードに429cu.in.が導入されたのを皮切りに、1969年にはフォードのフルサイズ乗用車のFEエンジンを置き換えました(他には1981年に370cu.in.が中型トラック用として追加され、エンジン単体ではモータースポーツ用として514cu.in.が供給されていました)。

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1968年 フォード・サンダーバードに搭載された385シリーズ(429cu.in.)

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385シリーズ(429cu.in.)を搭載する1968年 フォード・サンダーバード

 この385シリーズでは、NASCARにおいてクライスラーの426HEMIに勝利することを目的にBOSS 429エンジンが開発され、1969~1970年にかけてマスタングに搭載し販売されました。BOSS 429エンジンは4ボルト・メインベアリングキャップ、鍛造のクランクとコンロッドを使用し、クライスラーのHEMIエンジンと同様の半球型燃焼室を備えたアルミニウム製シリンダーヘッドを特徴としています(これらのBOSS 429マスタングは、今日非常に人気が高く、2016年には黒の1969年モデルがフロリダ州パームビーチのバレットジャクソン・オークションにおいて50万ドルの値を付けました)。

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1969年 フォード・マスタングに搭載されたBOSS 429

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BOSS 429を搭載する1969年 フォード・マスタング

 また、FEシリーズで好評を博したCobra Jetシリーズも継続され、Cobra Jet(370HP) 、フードスクープと3.50アクスルレシオを持つCobra Jet - RamAir、鍛造ピストンとソリッドリフターを持つSuper Cobra Jet(375HP) の各429cu.in.を1970~1971年にかけてフォード・トリノやマスタングに搭載して提供しました(これらのハイパフォーマンスエンジンは実際には440〜460HP以上の出力を発生していましたが、当時ハイパワー車の事故急増により非常に高い料率となった保険料を欺くため、実際の出力より大幅に低く表示して販売されていました)。

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1970年 フォード・トリノに搭載された429 Cobra Jet

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429 Cobra Jetを搭載する1970年 フォード・トリノ

 しかし、1973年に入ると、新たに導入される連邦大気汚染規制への対応による圧縮比低下とバルブタイミング遅延に加え、エンジン出力のグロス表示からネット表示への切り替えが重なり、1972年まで365HPと表示されていた460cu.in.の出力は大幅に低下して212HPとなります(1972年以前のグロスによる出力表示は、オルタネーターや冷却ファン、ウォーターポンプ等、全ての補器類の無い完全なエンジン単体に、車両に搭載されるのとは全く別の排気システムを装着して計測されていました)。

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1973年 コンチネンタル・マークIVに搭載された385シリーズ(460cu.in.)

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385シリーズ(460cu.in.)を搭載する1973年 コンチネンタル・マークIV

 そして、1970年代後半に導入されたCAFE規制の影響により、460cu.in.エンジン搭載車として残るフォード・LTD、マーキュリー・マーキスとリンカーン・コンチネンタル、コンチネンタル・マークVは1978年を最後に385シリーズV8エンジンの搭載を打ち切り、翌1979年のフォード製乗用車の最大排気量は400cu.in.(後述の335シリーズ)となりました(CAFE規制は1978年から導入された制度で、企業が販売した全乗用車の平均燃費を算出し、基準となる燃費を下回った場合、0.1mpg毎に$5/台を徴収するという厳しいもので、当時のフォードは危機的状況に達していました)。

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1978年 マーキュリー・グランドマーキスに搭載された385シリーズ(460cu.in.)

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385シリーズ(460cu.in.)を搭載する1978年 マーキュリー・グランドマーキス

 こうして乗用車への搭載が終了した385シリーズV8ですが、頑丈で強力なエンジンとしての評価は高く、牽引や運搬を主目的とした信頼性を重視するトラックやモータースポーツ用途として入手可能な「クレートエンジン」として引き続きラインナップされ、1988年のインジェクション化を経て最終的に1997年の9代目フォード・Fシリーズトラックまでの30年間にわたり生産されました。

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フォード最後のビッグブロックV8搭載車 1997年 フォード・F250 CREW CAB


 次回は、フォードが最後に設計したOHV V8エンジン、335シリーズについて書く予定です。
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Posted at 2019/07/31 22:56:29

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narukipapaさん

この記事へのコメント

2019年8月1日 20:38
こんにちわ。
大きくて重い車に大きいエンジンを載せて走る事に、
大いなる魅力を感じます。
実際、乗り心地も良いと思います。
ボディーの装飾一つとっても無駄かもしれませんが、
そこに魅力を感じます。
今時のエコカーとは真逆の存在ですが。
コメントへの返答
2019年8月1日 22:33
こんばんは~

全く同感です!
「文化とは、無駄な活動以外の何物でもない」という言葉がありますが、無駄なことにどれだけ情熱を注ぐことができるか、ということが文化の尺度であると思っています。

昨今の大衆車は経済性のみを追求した結果、文化的な要素は消え去ってしまい、完全に白物家電化してしまいました。

一般大衆は自動車に対して合理的な機能以外を求めなくなり、急速に進むグローバル化の下、極限まで効率を追求した結果、一部の高額車を除きどの国の車もほぼ全て同じような外観・構造・志向となってしまっています。

今後は自動運転技術の進歩に伴い、自動車に文化的要素を求める人は益々減少し、強烈な個性を持った車たちは二度と誕生することはないのかもしれませんね。

プロフィール

「@デジT さん
コメントありがとうございます。このようなバカげた車が販売されることは今後ないでしょうねー」
何シテル?   01/26 08:26
ごくフツーのしがないサラリーマンです。 少し前まで軽くて速い車が好きだったのですが、いつの間にか趣味で所有する車が2台とも「フレーム構造、車重2t超、規格灯丸...
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