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2017年10月12日 イイね!

若者のクルマ離れ



このワードは,ほぼ間違いなくユーザーサイドのことを指して使われるものだ。
実際にどうなのかとか,その原因は何なのかとか,そんな話はここでは触れない。
やるまでもなく時間の無駄だし,興味がないからだ。

それに,このワードが遥かに深刻な影を落としている現場を知っているからだ。
他でもない,自動車メーカーである。


昨今のこの国の就職事情は売り手市場だと言われている。
就活生には喜ばしいことなのだが,社会としては歪みが生まれてもいるのが実態だ。
ネット記事などでも書かれているとおり,ミスマッチング入社がしばしば問題となっている。
世間的イメージだけで受けて,入ってみたら全く仕事にやる気が出なかったというアレである。

この問題は,自動車業界とて例外ではない。
イメージ重視や給料重視(が悪いわけではない)で,クルマに興味もないのに入ってしまう。
もっとひどいと,クルマどころかモノづくりに欠片の興味もない口もいる。
事務方ならまだしも,技術屋の中にも相当数が混ざっているのがなんだかなぁと。
あるいは,クルマのごく一部の技術にだけ特別興味があって入ってくる人とか。
HVやEVが世に出てから,電池がやりたいです!!と叫ぶ層が妙に増えたと聞く。
あとデザイナーな。一生pixivに籠ってろって言いたくなるのがたまにいる。

クルマそのものに興味がないまま自動車会社に入って,興味を持てないまま仕事についている。
そういう若手をよく見るし,そういう若手がそのまま育ったんだろうなという上位層もよく見る。
何年経っても,クルマの構造や動作の仕組み,各種用語をろくに知らない。
自分野の業務で必要が出た時だけ知識をぽとぽと入れて,それ以外のことはよく分かりません。
……そんな仕事してて楽しいんだろうか。

最近の国産車はつまらない。
そう言われるのは,作る側が興味のないものをつまらなそうに作っているからかもしれない。
クルマづくりを楽しいと感じない,クルマに実は興味がない,そんな技術者が作っているから。
とりあえず開発目標値をクリアできるようにやって,それ以上や以外のことは考えない。無駄。
今そんな感じで開発の中核あたりにいる人たちは,20~30年ほど前の若者だったわけで。
そういう視点に立ってみると,この国は随分前から「若者のクルマ離れ」だったのではないか。
その頃は,クルマがつまらなかったのか,親世代が興味なかったのか,なんなのか……。
水掛け論の鶏卵談義も,作り手側を交えると途端に進化論(退化論?)じみてくる。


86に始まって先日のGRシリーズまで,トヨタは最近しつこく「若者向け」を主張している。
ただのマーケティングかと思っていたが,あるいは未来の新卒採用を見据えていたのかしら。
86はちまちまMCを繰り返し,G'sやGRではマニアックなチューンナップをコツコツと。
ボルトや溶接をちょこっと変えるだけでこんなに良くなるんですよ,クルマって面白いでしょ。
そうして,買うこと乗ることだけでなく,作ることの面白さをひっそり訴えていたのだろうか。
これからの社会人世代に少しでも,クルマづくりやモノづくりへの興味を持ってもらうために。

しかし,三つ子の魂百まで。
理科キライで育ってきた魂が,大人になってから急にモノづくりに目覚めるかは甚だ疑問だ。
人間,キライなものに対しては無意識に感覚をシャットアウトして距離を取ってしまう。
だからまずは,最低でも理科キライにならないよう育てることを考えなくてはいけない。
義務教育や幼児教育にまで波及させると学者の仕事になるのでこれ以上深入りはしないが。
ただ,無闇に教育無償化を訴える前に,このあたりのことは考えて欲しいなと思う。
ゆくゆくこの国の経済を盛り上げてもらうために,教育はどうあるべきなのかを。


最後に。
クルマに興味はないけどクルマ会社にいちゃってる若者たちへ。

「私がやりました」って,クルマづくりで言ってみろ。

大勢が携わるクルマづくりにおいて「私がやりました」なんて図々しい……と思うだろうか。
だが大勢の中にあっても,能動的に動いて色々やっていれば,自然とそう言えると思うのだ。
個人の感想だけでなくモノの仕上がりにも,能動的か受動的かの差は現れる。
多くの人が能動的に頭と手を動かし,最後にやり遂げたと思えれば,きっといいものが出来ている。
だから,「私がやりました」と言える人が多いほどいいクルマが出来る,というのが私の持論だ。

能動的に動くのに必要なのは何か。
やる気と,知識だ。どちらが欠けてもいけない。
そしてそのどちらも,対象への興味なしにはありえない。
最初は無理にでもいい,興味を湧かせ。色々調べろ。考えろ。そのうち楽しくなってくる。
好きこそものの上手なれ。クルマを作る仕事に就くなら,クルマを好きになれ。

5年。
ちゃんとやってれば,そのぐらいからクルマづくりの仕事は面白くなってくる。
それでもつまらなかったら……やんぬるかな。まぁ他にも会社はあるし。
30までは若いってだけで採ってくれるってリクナビNextの人が言ってた。


以上,今回の徒然日記,おしまい。
よく考えたらこれモータージャーナルのカテじゃねぇな。



……PCの前に座るとポンと文章が飛んでいく不思議。
おかしいな,チャリ漕いでる時はちゃんと浮かんでいたはずなんですが。
ちなみに「今日の」ではなく「今回の」なのは,書き上げるまでに数日かかっているから。



2017年09月26日 イイね!

鬼と洗濯板と金棒?~~~GR考~~~



トヨタめ,よくも恥をかかせてくれたな。
……というのは冗談ですけどw
別に物書きで飯食ってるわけじゃないしね~。それにどうせそんなに読まれてない。




ともあれ,GRである。

そしてこの顔である。


なかなかドーンと来ましたね。
G'sが般若や女系の能面を連想させる顔だったのに対し,GRは鬼瓦的というか。
どストレートなまでの押し出し感,速そうだろ感。
「どうだ,俺はスポーツカーだぞ!」的な感じ。

いや,でも個人的には,なんか思ったより嫌いじゃない。
あぁスポーツモデルなのね分かりました,とすんなり受け入れられる感じ。
空力やら熱流なんかをちゃんと考えたんだなぁと思って納得が出来ます。
G'sの顔が超アレだったせいや,今のトヨタの顔が全般的にアレなせいでしょうか。
特にアクアなんて,虚飾まみれだったG'sと比べると「デザイナー大人になったねぇ」と思います。
(……上であんな喩えをしたからって,別に能面をディスってるわけじゃないですよ)

まぁ,これでもまだ「ゴテゴテしてて嫌だ!」という意見はあるでしょう。
デザインは要らないからパフォーマンス面だけ寄越せ,という声もよく分かります。
が,巷の規模からしたら極少数であろうその辺は無理に追わない戦略なのでしょう。
やはり人と違うことを表に出したいのがヒトの欲というものですから。物欲刺激は商売の基本。
街中走っててぱっと見で分かりやすい方が宣伝効果も期待できるでしょうし。
それに,私は正直,ベースの線だらけの煩いデザインよりかはこっちの顔の方がいいです((^^;
(G'sからデザイン引き継ぎの車種は除く……主にヴィッツとアクアについての話)


あとツッコミどころとしては,タイヤサイズでしょうか。
全体的に大径幅広ぺったんこ。
ただし型式認定されるヴィッツとアクアのGR SPORTだけは,銘柄含めてベースそのまんま。
モード燃費測られますしね,CAFE規制考えたらエコタイヤなのもやむなし。

GRMNとGRは,まぁいいでしょう。スポーツモデルとして売り出しているわけだし。
モータースポーツユースまで考えたら,勝負銘柄が使えるサイズ設定にしておかないと。
半端なサイズ履かされて,アフターマーケットに適当な銘柄がないんじゃそれこそ困ります。
(逆にその辺な~んも考えてなさそうなのの代表格が三菱……つらいのだ~)

問題はそれ以外のGR SPORT系。
ヴィッツ基準で考えるとGRとGR SPORTの間みたいな仕上げられ方してる車種。
……ここは普通のサイズでどうにかならなかったかなぁ?
PHVやノア/ヴォクシーなんかは,熱中症で脳でもやられたのかと問いたくなるレベル。
そのサイズは走りのためですか。それともデザインのためですか。
正直,意地になってRE050A履こうとしているようにしか思えない。
エントリーグレードでわざわざたっけぇサイズ履かせるのはやめようぜ。

購入を考えている人は,価格.comあたりで一度タイヤを調べることをオススメ。
ちゃんとした銘柄があって,それを買って維持していけるかをお財布と相談しましょう。
カネがないからアジアンでいいや~と思うくらいなら買わない方がいい。
このタイヤサイズと車高は,銘柄変えてバランス崩れると途端に破綻する可能性があるので。


そして最後,補強バー類について。
G'sと一緒に過去のものとなった方策かと思いきや,きっちり入ってますね。
これまた型式認定取得した車種には入りませんが……なぜだ,衝突安全? 地上高?

やっぱりこういうバーやブレースの効果は大きいんだなぁと実感。
TNGAベースで作られたPHVにすら入っているということは,それだけのものだということ。
溶組部材をいくら工夫しても,ストレートに鉄棒通すのには敵わないということか。
とはいえこんな構造物,全車装着なんて出来ませんしねぇ。ラインの人がストレスで死ぬ。
(法規対策で「もうロールバー溶接でもしてやろうか(゚Д゚#)」なんて会話したなぁ……懐かしい)

そして,さすがメーカー製だなぁと感じるのが,整備性を損ねないように通されていること。
タワーバーが一切見当たらないのはもちろん,アンダーカバーにも被らないようになっている。
おかげで一般整備の範疇であれば,ベース車と同じ工賃でやってもらえるものと思われます。
ほとんどのアフターや下手なメーカー随伴だと,この辺の考えが甘いのよね。
うちのミラージュでいうと,タワーバーとロアアームバー。
前者はエンジンルームの整備性悪化,後者はジャッキが入らなくなり作業性悪化を招きました。
そういうところにも配慮されているって,やっぱりファクトリーチューンは違いますね。




っていう雑感ぐらいだなぁ今回は。
正直ここまでされていると,クルマいじりの参考にもなりません。最近アイデア枯渇気味。
乗ってみたら何かひらめくかしら。GRヴィッツあたり乗ってみたいけど。
……とはいえ,買う気もないのに試乗行くのは気が引ける。
スーパーの試食も遠慮しちゃうタイプ。その辺だけ律儀。
適当に乗っておkな試乗会的なものでも開かれれば行くんだけど。



2017年08月23日 イイね!

G'sの霊圧が……消えた……?


実は元ネタを知らなかった。知ったから得したわけでもないが。
暇つぶしにトヨタG'sの公式サイトを見に行って驚いた。
あれだけあったラインナップが見事に一掃されていたのである。
画面には赤文字で※G's全車種の販売は終了しました。とある。

これが一時的な弾切れなのか,G'sの完全終了なのかは分からない。
ただ,とりあえず筆者は後者なのかなと思っている。
このエグったらしい外見が好きだった人には残念だが,時代の流れだと思ってもらうしかない。
G'sブランドが消滅するというのは,トヨタのクルマづくりに対する本気度の現れに他ならない。
おそらくこれからのトヨタ車は,G'sというブランドを必要としなくなっていくだろうと思う。


そもそもG'sとは何かを知らない人のために一応説明しておこう。
といっても,リンクから飛んでABOUTを見れば分かる話なので,かいつまんで済まそう。

G'sとは,トヨタのスポーツコンバージョン車の総称だ。メーカー製チューニングカーといってもいい。
その理念は「SPORTSCARS for ALL すべての人に、スポーツカーのある楽しさを」である。
嫌々ファミリーカーに乗っている人たちに,運転して楽しいファミリーカーを届けることがモットーだ。
そのために,退屈なファミリーカーに,メーカーの知見と技術を活かしたカスタムが施されている。
そのほとんどは,ドライバーがクルマを意のままに操れるようにする目的でなされたものだ。

そのラインナップには,プリウスやアクア,ヴィッツ,はてはノア/ヴォクシーやハリアーまであった。
この顔ぶれを見るだけでも,トヨタの思いの真摯さが伝わってくるのではないだろうか。
これら車種の共通点は,トヨタ車の中でもとりわけ売れている車種だということだ。
それだけ多くの人に,家族を犠牲にしないドライブプレジャーを届けようという姿勢だと見える。

このG'sのキモは,他社ではあまり考えられないほどボディ補強を本気でやっていることだ。
まずはサイドシルのスポット増し打ち。打点数は多くないが,ポイントを押さえてやってある。
この作業は,普通のグレードと同じライン上で実施することでコストを抑えている。
そして各種補強バーやブレースの追加。それも,よそではあまり見ないような形状のものが並ぶ。
適当に横梁追加しときゃいいだろ的なお茶濁しではなく,必要だからこの形です感満載の補強だ。
どこからかノア/ヴォクシーの床下補強を探して見てもらえば,言っている意味が分かるだろう。
これらにより,G'sのボディは高レベルでバランスの取れた剛性を獲得している。

他には,お約束だがサスペンションも専用のものに変えられている。
全車もれなくローダウンさせられているところが気になるが,乗り心地と操縦性の評判はいい。
結構下がって見えるが,下げたところでちゃんとバランスは取ってあるのだろう。
それと,ギラギラした大径・扁平のタイヤ&ホイール。
性能のためにタイヤとホイールはセットでチューニングしたというこだわりようだ。
大径化と併せて「ユーザーの維持費ガン無視じゃねーか」と思うのは貧乏人の証拠だろうか。
好きな人には申し訳ないが,デザインの有様は個人的に納得いかない。
「G'sのデザインはドレスアップではなくチューンナップ」という文句が公式にある。
どこぞの蛇ではないが,その装飾には何のタクティカルアドバンテージもないと言いたくなる。
まぁ,言動不一致が気になるだけで,デザイン自体は個人の好みだからどうでもいいのだが。

これら全てを,通常グレードをベースにアフターでやろうとすれば,おそらく100万前後はする。
G'sはだいたいベース比50万以下で収まっている。セールス的には破格だ。
まぁユーザーサイドはそんなの知ったことではないので,これを高いと思うかは人それぞれ。
だがG'sは,このナリながら毎月わりとコンスタントに売れていたという。
運転する楽しさを求める層は,このご時世でもしっかり一定数いたということだろう。


このG'sに対して,否定的や批判的なコメントはあまり聞かない。
が,トヨタによるマッチポンプじゃないかという意地悪な見方もできるという意見はある。
退屈なファミリーカーをドライバーズカーに仕立て直すトヨタの技術力は確かに立派だ。
しかしそもそも,その退屈なファミリーカーを作ったのは誰かという話である。

世の中の多くは,そんな退屈なファミリーカーで特に不満も感じていないから。
これだけ手の込んだボディ補強も,乗っても気づかない人には無駄になるから。
だからベースはこんな感じで,一部の違いの分かる人に向けてG'sを作った。
……少し前までのトヨタを見る分には,確かにそんな風に思えた。

今となってみると,やらなかったというより,やりたくてもできなかったのではないか,と思う。
初代G'sの販売開始は2010年からだ。それもノア/ヴォクシーで始まっている。
その頃から,ファミリーカーにもドライブプレジャーを与えようと考える向きはいたと思われる。
G'sの生みの親があの成瀬弘氏であることを考えれば,潜在的シンパはそこそこいたはずだ。

しかし,標準グレードから運転して楽しいクルマにすることは結局できなかった。
G'sの補強バーを改めて見て欲しい。どれもすごいところを通っている。
必要なボディ剛性を出すには,こんな形にするしかなかった。
後付だからこんな形に,と思うかもしれないが,結局それはパッケージングの制約と同義だ。
パッケージングありきで考える以上,これと同スペックのモノコックはやはり作れない。
使える技術に開発体制にコスト,当時のトヨタに楽しいクルマを作れる下地はなかったのだ。
それでも「楽しいファミリーカーを」という声に,出血大サービスで出した答えがG'sなのではないか。
あまり売れるとコストがキツイので,エグい外観でフィルタリングを……は考えすぎか?


そして,ご存知の通り,今のトヨタにはその下地がある。
TNGA,トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャがまさにそれだ。
社長が掲げる「もっといいクルマ」の実現に向けた戦略の根幹をなす思想である。

TNGAの中核となっているのがコモンアーキテクチャ構想だ。
開発で直面するトレードオフの多くは,金さえかければ解決できることがままある。
そこでまずは,高性能で懐の深い良質なプラットフォームを1つ,資金を集中して開発する。
そうして作ったプラットフォームを複数の車種に使えば,開発コストは割り勘にできる。
TNGAのコモンアーキテクチャは,これを従来よりも広い車種で行おうというものだ。

同時に,開発体制についても全体的に最適化が図られている。
従来は各機能が優先順位に従ってコストを奪い合っていた。
これまでのトヨタ車を見るに,上位にいたのはパッケージングやユーティリティ,あと燃費だろう。
売価がさほどでもなく,コストに厳しいトヨタのこと,外様は有り合わせの技術で頑張るしかない。
今は「もっといいクルマ」を作ることを軸として,各部が納得行くまで議論をしているという。
どちらも譲れず,高次元で両立させるために新開発コンポーネントが必要なら,金をかけて作る。
そこでかかったコストはコモンアーキテクチャによる水平展開で回収する。

これ以上列挙すると偏頭痛が出ると思うので,そろそろ結論を書こう。
今のトヨタは,G's相当以上のクルマを,ベースグレードの値札で作り売ることが出来る。
少なくとも体制としては整っているし,TNGAとして出た車種の評判は概ね良好だ。
走る曲がる止まるが,トヨタ車とは思えないほどよく出来ていると異口同音に言われている。
デザインに対する賛否両論が渦巻くあたりまでG'sそっくりなのはなんともはや,だが。

ベース車両が良くなればなるほど,G'sの存在理由はなくなっていく。
G'sの歴代ベース車たちに比べれば,TNGA車のチューニングしろは確実に減っているだろう。
頑張れば更に良くすることも可能かもしれないが,コストに見合うほどの効果があるかは怪しい。
それに,トヨタが標榜する「もっといいクルマ」が万人に向けたものであるということもある。
わざわざG'sと銘打って,一部の物好きのためのカスタムカーを作るのは,この理念にそぐわない。
知恵の輪のような補強バーではなく,広い車種に使えるプラットフォームでボトムアップする。
これからのトヨタは高級金太郎飴になっていくのかもしれない。


というわけで,個人的には消えると思っているG's。
それが今回のラインナップ一掃をもってなのか,もう一幕あるかは分からない。
プリウス(PHV含)・C-HR・カムリ以外の車種は,未だにTNGAではないからだ。
プリウスとC-HRばかり出ている印象とはいえ,他の車種もまだハイレベルには売れている。
いじろうと思えばいじれないことはない。

しかし,最近のマイナーチェンジでは,どの車種も何かしらのボディ補強を伴って現れている。
この新しいボディをベースにしようとする時点で,すでにコストに見合わないかもしれない。
だとすると,やはりG'sはこのまま過去のものになっていくのだろう。
……まぁ,TNGAベースでまた元気に出てきたら,それはそれで興味があるのだが。



2017年08月16日 イイね!

旧東名ノススメ



旧東名……皆さん最近通っているだろうか。
特に静岡中央部には用のない,御殿場以東と愛知以西をひとっ飛びで移動する人たち。
なんとなく成り行きで新東名を通っているのではないだろうか。


新東名は,基本的には旧東名よりも快適な道路を目指して建設されているはずである。
距離が短い,道幅が広い,全線100km/h制限,勾配が緩やか,カーブも緩やか。
路面が綺麗というのもあるだろうが,これは運用開始時期の差もあるのでなんともいえないか。
今回の本筋とは関係ないが,PAの豪華さも優位点だ。トイレの綺麗さは死活問題である(ぇ)。
総括すれば,新東名は旧東名よりも疲れなくて燃費の良いルートということができる。

しかし,実際のところはどうだろうか。
新東名に乗り始めた頃から,私はなんとなくピンとこなかった。
どうも旧東名より燃費が悪くて疲れる気がしたのだ。
その印象は,ミラージュに乗り換えてから一層強くなっていった。

もっとも,昨年4月のLIVE GALAXYを最後に,私は高速で燃費を気にすることを止めている。
それと引き換えに,自分にとって心地いいペースで,極力疲れないよう走ることにした。
その結果,最近ではだいたいどの都市間高速を走っても同じような燃費になる。
なので,今更どっちが燃費が良くて疲れないかは,検証しようとしても私にはできない。

……ということに,走りきってから気づいたが後の祭りだった。
上記を検証しようとして,帰省の帰りに御殿場JCTを直進して旧東名を使ってみたのである。
燃費は,いつもと同じように走ったからだろう,結局いつもと同じくらいだった(渋滞分やや悪い)。
御殿場JCT以降の値は若干いい気もするが,新東名側の正確な値がないので感覚論にすぎない。
疲れの方も同様だ。どっちにしろ疲れないように走ってしまうからよく分からない。
そもそも定量評価できないものを比較することに無理があったと思う。




ただ,である。
そうはいっても,私は未だに「旧東名の方が燃費が良くて疲れない」論者である。
改めて旧東名を通ってみた体感も含め,そう思えるポイントをいくつか紹介する。
オススメ対象に当てはまる人は,無理に新東名を通らず旧東名に切り替えてはいかがだろう。


まず一番大きいのが路線の起伏だ。
新東名を走っていて「勾配が緩いはずなのにやけに上っている気がする」ことはないだろうか。
実はその感覚は正しい。新東名はほぼ上ってばかりの道路なのだ。
新東名は勾配を緩やかにするよう設計した結果,その弊害として坂自体が長い。
ダラダラ上ってダラダラ下るのを延々と繰り返すため,エネルギーロスが大きいのである。
要するに速度維持が難しいのだ。ここには上りか下りか分かりづらいことも手伝っている。
何も考えていないと,進入100km/h,頂上70km/h,下りきっても80km/h,なんてことがざらにある。
(エネルギー保存? 地を這う運動体では各種抵抗の関係でほぼ成立しないんだなぁこれが)

一方で旧東名。
走ってみると分かるが,旧東名は新東名に比べて平地が多く,淡々と走れる区間が長い。
そして起伏は,大した高低差ではないか,ガッと上ってガッと下りるかのいずれか。
こうした構造は,現実的にはエネルギーロスが小さく燃費に有利な傾向となる。
上りが急ということは,目で見て分かりやすいということでもあり,予備加速がしやすい。
そして上りで多少踏んでも,急な下りの重力加速でそれなりに速度を取り戻せる。
新東名レベルの緩い下り勾配ではこうはいかない。各種抵抗が重力を上回って加速してくれない。
旧東名くらいの勾配があって初めて,位置エネルギーは運動エネルギーになってくれるのだ。

この違いは,とりわけ出力に余裕のない車種(ミラージュもそう)で顕著に効いてくる。
100km/h定地走行でいっぱいいっぱいの車種は,新東名は使わない方が無難だ。
新東名の上り坂でアクセルの踏み足し量が多い,またはエンジン回転がいちいち跳ね上がる。
このようなクルマに乗っている場合は,いっそ旧東名を通った方が楽なように思う。
逆に余力のあるクルマは,新東名をちょい調整で走りきれるため気にならないかもしれない。
燃費もあまり変わりないと思う,FTO乗ってた時の経験からすると。


次に風の影響。
通ったことのある人は分かると思うが,新東名の山間風は時に乱気流レベルになる。
前面および側面投影面積の大きい車種,重量の軽い車種にとっては深刻な脅威だ。
油断していると車線の端から端まで飛ばされることもある。
(前に目の前を走っていたトラックが急にのたうち回って肝を冷やした事がある)
そのくせ鯉のぼりがろくに設置されていないから,どれだけ吹いているかが見えない。
正直疲れる。有効な対策パーツがないか探してみたが,今のところ決定打がない。
このあたりは旧東名の方が圧倒的に楽だ。台風でも来ない限り何事もない。
大部分が真っ平らな市街地を通過していることが大きいのだろうと思う。


さらに,これは推測だが,路面の摩擦。
目に見えない勾配を勘違いしているのかもしれないが,新東名の路面はμが高い気がする。
新東名の設計速度は名目上120km/hだが,実際は140km/hを担保した構造になっている。
道路構造令にないこの速度を担保するため,路面にもひと工夫ある可能性はある。
そのために摩擦を強めた分,タイヤの摩擦抵抗が大きいのではないだろうか。
(※実際にサーキットなどでは一般道より高μな舗装がなされている例があります)
ちょっと明言できないので,また今度確認してみようと思う。
エアモニのタイヤ温度測定を使えば何か分かるかもしれないと考えている。


走行性能に関わる構造差だけでも,旧東名の方がいいと思える点はこれだけある。
まとめると,軽自動車,サブBセグ車,ミニバンなんかは旧東名の通行を推奨する。
P.W.Rの悪いクルマには,エンジンがショボかった頃からある道路の方が優しい。
あとはアクセルでの速度コントロールの難しいクルマも旧東名の方がいいかもしれない。
たとえパワーがあっても,勾配に対してアクセルをピタッと合わせられないと燃費には厳しい。
それに,アレコレ考えて神経使わないと燃費が出ないクルマは疲れるものだ。

それから,車種がどうではないが,ノロノロ走る人たちには是非とも旧東名に行ってほしい。
特に新東名を80km/h以下で走っている層,トラックに追い越しかけられるような人。
そんな速度で走るなら,一部80制限の旧東名でいいだろうに。
あまりに速度差があると事故の原因になることを頭の片隅に置いといてほしい。

あとは,トンネルが苦手な人。それとライトを点ける脳ミソのない連中。
調べて驚いたが,新東名のトンネル本数は旧東名の5倍もある。個々の距離も圧倒的に長い。
トンネルが疲れるという人は旧東名を通った方がいいかもしれない。この差はさすがに大きい。
(ちなみに私はこの感覚がよく分からない。大和トンネルで失速する心理がさっぱり理解できない)
旧東名のトンネルというと暗いイメージがあるが,実際のところ視認性は特に悪くなかった。
トンネル自体があまり広くないのと,ライトの配置間隔がちょうどいいのだと思う。
新東名のチラチラするライトよりも目に優しい感じがして,私は旧の方が好きだ。




今回の調査結果と提言は以上である。
いかがだっただろう。今度は旧東名を通ってみようと思ってもらえただろうか。
あのPAに寄りたい!などがなければ,無理に新東名を通るメリットはないと思う。
御殿場JCTでドキドキしながら左に逸れるくらいなら,大人しく直進しよう。

それに旧東名のPAだって,このところ改修工事が入って綺麗になってきているようだ。
昨日駒門PAに入ろうとして,PAが消滅していると思ったら,1km先に移転していて焦った。
さすがに新規開設だけあって綺麗だった。機会があったら寄ってみるといいと思う。
……まぁ,あのデザインされ過ぎなトイレはどうにかしてほしいが。


え? 連休始まる前に言え?
うん,まぁ,この前のビューティフル観劇の帰りに検証すりゃよかったんだけどねぇ。



2017年08月10日 イイね!

マツダの「3種のジン技」



マツダが発表した新型エンジンが話題になっている(大浜さんのテンションが急上昇してて草)。
その名も「SKYACTIV-X」……Xという厨二臭さがなんともたまらない。
まぁこのXは,戦闘機にもよくある試作コードみたいなものだと思うので,正式名はまた別だろう。

このSKIACTIV-Xの正体は,一般的にはHCCIと呼称される形式のエンジンだ。
世の中一般でないものを一般的というのも語弊があるが,理論としては別に新しいものでもない。
ついでにいえば,HCCIの研究に取り組んでいたのはマツダだけではない。
単にマツダ以外が,別の技術を持っていたり金と頭が足りなかったりで挫折しただけである。
より厳密な話をすると,マツダが発表したのは,HCCIの発展型または改良型といえるタイプだ。
技術的な課題をクリアした実用型といってもいいだろう。


このHCCIのことを,メディアでは「ガソリンとディーゼルを合わせたようなもの」と紹介している。
本質的にはそのいずれとも異なるものであるが,大雑把なイメージとしては間違っていない。
HCCIを知る前に,まずはガソリンエンジンとディーゼルエンジンの仕組みについて復習しておく。
一部の理屈については,前々回掲載の記事を参照していただければ幸いである。
正直タイミングが良くてびっくりしている。

まずはガソリンエンジンのサイクルを順に追っていこう。なるべく分かり易くを心がける。
①吸気行程
  ガソリンエンジンにおいて取り入れるのは,燃料と空気の混合気だ。
  この時の燃料濃度は,あとの燃焼の便を考えて,理想的とされる比率より基本やや多めである。
②圧縮行程
  ①で取り入れた混合気を圧縮し,温度と密度を上げて着火に備える。
  あまり圧縮しすぎると,圧縮熱で混合気が自己着火してしまうためほどほどにする。
  この自己着火(プレイグニションまたはノッキングと呼ぶ)が起きるとエンジンが壊れることもある。
③燃焼工程
  ②で圧縮した混合気に,点火プラグの火花で火を点け燃焼を開始させる。
  混合気の燃焼に伴う膨張によってピストンを押し下げ,動力とする。
  この時,混合気の燃焼は(僅かだが)時間をかけて,プラグを中心に放射状に広がっていく。
  これによりHCやNOxなどが発生することもあるが,ディーゼルに比べれば量は絶対的に少ない。
④排気行程
  今回の文脈では特に説明することもないので省略。

続いてディーゼルエンジンのサイクルである。
①吸気行程
  ディーゼルエンジンにおいては,燃料を含まないただの空気のみを取り込む。
②圧縮行程
  ①で取り入れた空気を圧縮し加熱する(燃料の発火点より上の温度まで加熱される)。
  原理の違いを考えれば当然だが,圧縮比は基本的にガソリンエンジンより高い。
  最近流行りの低圧縮比ディーゼル(マツダで14.0)でも高圧縮比ガソリンより高い(せいぜい12.0)。
  圧縮するのが空気だけなので,高圧縮比でもノッキングの心配はない。
③燃焼工程
  ②で圧縮して高温となった空気に,インジェクターから燃料を噴射する。
  発火点を超えた温度の空気に触れた燃料は,順次発火し膨張していく。
  順次発火となるため,燃焼が不均一とならざるを得ず,NOxやPMなどの発生が避けられない。
  一般的にガソリンエンジンよりも排気が汚いエンジンとされ,各種の処理装置で対応している。
④排気行程
  今回の文脈では特に説明することもないので省略。大事でもないのに2度(ry

圧縮比とは,吸い込んだ気体をどれだけ圧縮するかの値だ。
同時に燃焼した混合気がどれだけ膨張できるかという値でもある。
この値が大きいほど,燃料からエネルギーを取り出しやすく,かつ動力に変換しやすい。
ただし大きくしたらしたで,ガソリン/ディーゼルそれぞれ問題が発生する。


さて,こうした内容を踏まえた上で,いよいよHCCIの話に辿り着く。
HCCIとは,Homogeneous Charge Compression Ignitionの略だ。
日本語では予混合圧縮着火……記事によって表記ゆれ多し。
その仕組みは以下の通りだ。ほとんど読んで字のごとくだといっていい。
①吸気行程
  ガソリンエンジンと同様に,燃料と空気の混合気を取り入れる。
  ただし燃料濃度はガソリンエンジンと比較して薄く,理想的な比率で混合することができる。
  理論上はそれよりもさらに薄くすることも可能とされる(リーンバーン=希薄燃焼)。
②圧縮行程
  ①で取り入れた混合気を圧縮し加熱する。
  圧縮比は,ガソリンエンジンはもちろんディーゼルエンジンよりも高いとされる。
  昔どこかで20.0とか見たような見なかったような……とりあえずすごく高い。
  目標は「圧縮後の温度が混合気の発火点に至るところ」。
③燃焼工程
  ②で圧縮された混合気が,ピストンが一番上に来たところで自然発火する。
  発火は混合気全体でほぼ同時に開始するため,原理的には均一燃焼となる。
④排気行程
  (ry

HCCIでは,これまでのガソリンエンジンで忌み嫌われてきた混合気の自然発火を動力とする。
ものすごく乱暴な説明をすれば「ノッキングで動くエンジン」ということができる。
なお,この原理の上ではディーゼル燃料でも成立はするが,普通はガソリンを使う。
燃料の揮発性の高さゆえに,軽油よりガソリンの方が緻密な混合気を作れるためだ。

この方式の何がそんなにいいのか。
いっぱいあるからこそこれだけ騒がれているわけで,ひとまず仕組みの上から順に見ていこう。

まずはリーンバーンができること。
これまでの火花点火のガソリンエンジンでも,リーンバーンに挑戦した例は数多い。
三菱の黒歴史GDIを始め,その頃の直噴ガソリン勢は果敢にこれに挑み,悉く煤まみれになった。
極度に希薄化された燃料混合気は,プラグの火花ごときでは燃えてくれなかったのだ。
それに対しHCCIでは,断熱圧縮によって混合気そのものの温度を発火点にまで持っていく。
発火点に到達した燃料は,周りにたんまりある酸素と結合して元気に燃えてくれる。
これまでエスプレッソやレギュラーでしか動かなかったのが,アメリカンで動くようになったのだ。

次に,圧縮比を従来より大幅に上げられること。
ノッキングを避けるために上げられなかった圧縮比も,それを動力とするなら話は逆になる。
前述の通り,圧縮比を高めれば高めるほど,内燃機関としては高効率になる。
加えていえば,高圧縮比化することによりリーンバーンでも十分なパワーを出すことができる。

最後に,排ガス規制物質の排出量を大幅に減らすことが出来ること。
③のところで書いたとおり,混合気は全体が同時に発火点に達するため,一斉に燃える。
その結果,不均一燃焼に起因して発生するNOxやPMなどの発生量が大きく抑えられる。
リーンバーン化されていればCO2の排出量も低減可能と,排ガス性能が非常にいいのだ。
そして,複雑怪奇な後処理機構を積まなくていいので重量を抑えられるオマケつき。


HCCIは,内燃機関としては理想の形であることから,自動車メーカー各社も熱心に研究はした。
にもかかわらず,世に出てくるまで長かったということは,問題というか課題も重かったということ。

HCCIは,本質的にはいつ混合気が燃え始めるかわからない方式でもある。
全ては燃料のみぞ知る……ではないが,十分なお膳立てをしないと燃焼タイミングが合わない。
気温,気圧,ガソリンの質,エンジン部品のバランス……少しでも狂えば狙い通りに燃えない。
気温と気圧くらいならどうにかなるが,ガソリンの質はどうだろう。エンジンの摩耗は?
極端な話,レギュラー指定なんて摩訶不思議なラベルが貼られてもおかしくないのだ。
ひどいとENEOSに限るとか。流石に冗談だが。

まだある。稼動範囲が狭いのだ。
ノッキングについて思い出してみよう。
ハイオク指定の高圧縮比エンジンにレギュラーを入れてぶん回すと,ノッキングでオシャカになる。
しかし,比較的低回転だけで走る分にはノッキングは起こらないか起きづらい。
断熱圧縮された空気の温度は,圧縮比と,圧縮速度に依存するためだ。
この2つの条件がピッタリ合って,燃焼室の温度が混合気の発火点を超えるとノッキングが起きる。
HCCIの場合,ピストン上死点で温度キッチリになるような,圧縮比×速度下でしか稼働できない。
そして,その領域は回転数全体の中でも狭い範囲にしかなかった。
回転の上下変動が激しい自動車用エンジンとしては致命的な欠点だといえる。

メーカー各社とも,そんなことにはすぐに気づいた。
気づいて,どうしてもHCCIで稼働できない領域は,従来通りプラグ点火で動かそうと試みた。
考えてみて欲しい。
圧縮比20.0で自然発火させるリーンバーンと,11.0で火花点火させるストイキ~リッチバーン。
そんな滑らかに都合よくシフトチェンジできるものではない。というよりできなかった。
多くのメーカーがここで挫折して,「内燃機関は終わり」と捨て台詞を吐きHVだEVだに走ったのだ。


が,マツダはそれを乗り越えて,点火プラグ補助型のHCCIエンジンを発表してきた。
詳しい技術は謎に包まれているから,ここからはほぼ私の想像になる。
その点を踏まえて読んでいただきたい。
あとから「アイツの言ってたことガセじゃねぇか」と言われても知らないのであしからず。

まず大前提として,マツダは制限のあるHCCI領域を,どの回転域に合わせてくるか。
これはもう異論もないだろう。低~中回転域に決まっている。
どこのバカが,燃費が飛躍的に向上する技術のスイートスポットを高回転に合わせるのか。
中域より下はHCCI,上もできるだけ頑張りつつ,限界を超えたらプラグで,というところだろう。
とはいえ,低~中といっても広い。そのスイートスポットをどう広げるのか。

先程,HCCIは圧縮比×速度によって稼動域に制約があると書いた。
速度の方はどうにもならないが,圧縮比を可変できる技術はすでにある。
アトキンソンサイクルまたはミラーサイクルにおける,吸気バルブ遅閉じの術だ。
圧縮行程の頭部分まで吸気バルブを開け続けることで,混合気をインテークへ一部逃がす。
これにより実質的な圧縮比が低下して圧縮圧力が減少し,圧縮にエネルギーを食われない。
しかも燃焼する際には数値上の圧縮比分キッチリ膨張できるため,エネルギー効率がいい。
……長くなったが,要するに吸気バルブを遅閉じすれば,圧縮比は下げることが出来る。
これを使って適応領域を広げたのではないだろうか。

「高回転域で吸気吹き戻しなんかしたらトルク不足でストールするんじゃねーの?」
と思った人もいるかもしれない。バルブ遅閉じは基本的にトルクダウンに繋がる。
しかしここがHCCIのいいところで,最終的な温度さえ合っていれば燃料の多少に影響されない。
高回転域では,バルブを遅閉じする代わりに,混合気の燃料濃度を上げることで埋め合わせる。
もとがリーンバーンなら,酸素は掃いて捨てるほどいる。少々燃料が増えても問題はない。
ただし,あまり雑に増量をすると,吹き戻りでインテークがベタベタになるが……。

さらに高回転では,この調子で燃料を濃くしつつ,バルブタイミングをどんどん遅閉じにしていく。
またアクセル開度に対しても,全開付近では混合割合はストイキ~ややリッチになるようにする。
それらにつれて,必要になる少し手前から,上死点ちょい遅くらいでのプラグ点火を始めておく。
おそらくなのだが,HCCIとプラグ点火では,音か何かが違うと思うのだ。
それを検知して,今のはプラグで点いたな?と思ったら切り替えるとか。
ディーゼル音低減技術を入れてくるようなメーカーだけに,やってきそうな気がするのだが。
……え? 逆切り替えはどうするのかって?
考えてみて欲しい。高回転高負荷から低回転低負荷にアクセル踏みながら移行するだろうか。
アクセルを抜くか,せめて緩めるだろう。その一瞬で燃料カットして切り替えればいい。
マツダの燃料噴射制御があればそのくらい出来るでしょう,たぶん。

ちなみに,上記の話の中からスロットルバルブの制御は綺麗に省いてある。
というのは,HCCIエンジンにスロットルバルブはいらないだろうと思ったからだ。
HCCIの原理を考えれば,吸い込んできた空気に必要な分だけ燃料を噴けばそれで終いだ。
ならば,わざわざスロットルバルブを設けて吸気量を調整する必要がない。ディーゼルと一緒だ。
出力制御は燃料噴射とバルブタイミング,あとプラグのON/OFFで行ければ無駄がないと思う。

まぁ,今パッと考えた程度だとこんな感じで思いついた。合っているかは知らない。
妄想働かせて疲れたので,残りは軽く行こう。
吸気温度,これはおそらくクールドEGR等で制御してくると思われる。
エンジンの摩耗……現実問題,そんなにすり減っていくとも思えないけど。
燃料の質……おっと,これは問題だ。

途上国を除いても,燃料のオクタン価問題は残念ながらついて回る。
欧州ではレギュラー指定される向こうの大衆車が,日本でハイオク指定される件だ。
これは日米と欧州で未だに相容れない。なぜかは知らないが。
ともかく,HCCIは今までのエンジン以上にオクタン価にうるさいと思われる。
少なくとも日米仕様と欧州仕様の2種類のエンジンができることになる。
……と思ったが,よく考えたら今のSKYACTIV-Gの時点であったわ,この類別。
ならきっと大した問題にはならないだろう。以上,終了。


さて,こうして三種の神器ならぬ"3種のジン技"を得たマツダ。
トヨタとの資本業務提携の上で,これまで以上に先進国重視の戦略になるだろうと思われる。
具体的には,既にブランドイメージが確立済みの欧州と,CX-9で本腰を入れる米国だ。
ここに申し訳程度の国内を加えれば,マツダの標榜する「世界シェア2%」は達成できるだろう。

特に,欧州においてこのHCCIエンジンは重要だ。
欧州はディーゼル偏重の市場として知られているが,その理由は低燃費ただ一点だ。
日本のように軽油が安いからではない(あちらはほぼ同額)。
逆に考えれば,ディーゼルより燃費がいいガソリン車が出れば普通に乗り換えてくれる。
そういうガソリン車がないからディーゼル市場になったわけで,まさにブルーオーシャンだ。
しかも,今年9月から施行されるEURO6の後期規制も追い風となる可能性が高い。
既存のディーゼルがNOxで,直噴ガソリンがPMでヒイヒイ言い始める中,HCCIなら何処吹く風。
販売台数規模によっては,排ガスの余剰枠を売ることも可能かもしれない。
売り出し方と初期品質にかかっているところだが,夢が広がる話ではある。

そして,こうして得たあぶく銭で何をするか。
トヨタとの資本業務提携下における,米国のZEV対応技術または車種の共同開発だろう。
マツダはビークルダイナミクスについては長者でも,電気関係にはほぼ門外漢だ。
世界のトヨタと電動車両の共同開発で渡り合うのに,金があるに越したことはない。
新しいことを始めてどれだけのものが仕上がるかは,結局のところ金だ。先行研究開発費。
金をかけたからいいというものではないが,そこの金をケチっていいものはできない。

なんとなくそれなりに仕上がった電動車両がどうも多い気がするこの頃。
ビークルダイナミクスの鬼がガチで作ってくる電動車両がそのようなものか,興味はある。
その前座かもしれないが,新型エンジンには同じくらいの夢があると思っている。


まぁ,こんな感じで妄想が広がるくらいには,個人的にはビッグニュースでしたとさ。
……こんなクソ真面目でヘビーな記事を書くキャラだったっけか,俺。



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何シテル?   08/28 21:29
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