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かたむ~のブログ一覧

2018年03月06日 イイね!

ヨーコントロール・バイ・ブレーキの話



ついに登場したエクリプスクロスのS-AWCは,ブレーキ制御によるシステムです。
その前のアウトランダーおよびPHEVの時代から基本的にはそうなのですが。
同じ名称でも,ランエボⅩに搭載されていたものとは結構異なる代物になっています。

ブレーキをつまんでトラクションやヨーを制御するくらいは,今時どのメーカーもやっています。
これらをして,今のS-AWCを簡素化だの廉価版だの手抜きだという見方も可能は可能でしょう。
が,要は狙った通りの挙動制御が出来るのなら,手法は問わないのが本当のエンジニアリング。
テクノロジーに固執するのは技術者の自己満に繋がるので,私はこれはこれでいいと思います。
実際にエクリプスクロスの先行試乗でも,4WD制御には好意的なコメントが多いようです。


が,しかし。
それはそれとして,やっぱりブレーキ制御はちょっとなぁ……と思う面もあるのは事実。
挙動そのものについてケチつける気はありません。乗ってもないしね。

私がイマイチしっくり来ていないのは,マイ信条でもある信頼性の部分。
「緻密な制御を消耗品に頼るのはどうなんだろう?」という疑念がどうしてもあるのです。
もっと言えば「容易にアフターパーツをブチ込める消耗品」でです。

悪路も走れる4WDのオールホイール制御を,ブレーキで成し遂げるのは確かにすごい。
すごいけど,逆に言えばそれだけ緻密で繊細な制動力制御をしているということでもあるわけで。
じゃあそれって,各輪の制動力特性が狂ったらおかしくなるんじゃないの?って気がするのです。

当然のことながら,摩耗が進んだり,多少ヒートアップしたり,くらいはテストしているでしょう。
が,それはあくまで純正のパッドと純正のローターにおいてのこと。
皆が皆,ディーラーと仲良くして,定期的にメンテナンスに持っていっているわけではありません。
クルマに興味ないビンボー人は,その辺の適当なパッドを付けることもあるでしょう。
逆に私みたいなクルマイジリストは,自分で好き勝手パッドを換えることもあるでしょう。
そういったメーカーのあずかり知らぬ仕様になった時,制御はどう働くのか?
初期制動ゴリゴリのパッドとローターを入れたら,ターンインでオーバーになったりする?

そういうことを考え始めると,ブレーキ制御によるヨーコントロールには不安を覚えてしまいます。
基本的に消耗品や経年劣化品を信用していませんからね。ケミカル類なんかもう下の下。
消耗や劣化が手応え足応えで分かるならまだしも,裏方制御じゃなぁ。
やっぱりガッツリ組み付けられた金属部品の方が,私は性に合っているのだと思います。


とか言いつつも,もしエクリプスクロスを買うとしたら,4WD買ってると思いますけどね。
なんか,ハイテクってカッコイイじゃん? オトコゴコロをくすぐるじゃん? って感じで。
根っこが戦闘機とか大好きなガキなので,それを連想させるものは好きなんですよねぇ。

……まぁ,でもでも,まず買わないと思いますけどね。
だってデカイし。デカすぎるし。横幅1800mmとかないわ。どこがコンパクトSUVなのかと。
正直,妻の実家の駐車場に入らない時点で選外。今のミラージュですらギリなのに。
そう考えると,よく3ナンバーのFTOをあのガレージに突っ込んでたな,俺。



2017年10月26日 イイね!

CVTの価値を問うな



「CVTだからダメなんだ」と切り捨てるのは,浅はかな思考停止ではないかと思う。

よく言われるCVT批判その1。
CVTは車速とエンジン回転が一致しないから気持ち悪い……フムフム。
そんなことを言ったら,電気自動車や,ましてシリーズハイブリッドなんてどうなる。
風切り音やタイヤ音まで封じ込められていたって,そっちじゃ同じことを言わないだろう。
最近では,遮音のせいかCVTが市民権を得たのか,あまり聞かなくなってきた気がする。

よく言われるCVT批判その2。
アクセルペダルを踏むとエンジンが遅れて吹け上がるラグが嫌……なるほど。
踏んでも思った加速をしない。踏量に対してtoo muchなのかtoo littleなのかは車種それぞれだ。
あとは,逆に離しても減速しない方。酷いと離している最中に加速"感"を味わえるものもある。
要するに,アクセルペダル踏量と車両の加速度の不一致が不快感だということだ。
現象としては分かる。駄菓子菓子,である。
それ,本当にCVTのせいなのか?と考えたことがあるだろうか。

長くしすぎると誰も読まなくなるので,とっとと結論を書こう。
そういう場合,エンジンの方にだいたい問題がある。
その問題とは,トルクが細いこと,とりわけ低中速域が不当に痩せているパターンが多い。
ペダルのちょい足しに対してすら,スロットル開度だけでは応えられないくらい低速がひょろひょろ。
そんなエンジンとひっつけられて,それでもCVTが頑張った結果がこんな感じなのである。
回転数そのままでは力が出ないのならば,馬力が得られるところまで回転を上げるしかない。
とはいっても変速には時間がかかるから,結果遅れて加速するようなことになってしまうのだ。

CVT車のドライバビリティを,トランスミッションだけ捕まえて云々するのは空論だと思う。
エンジンとCVTを合わせてパワートレインとして扱うのが,本来あるべき考え方ではないか。
アクセル操作に対してリニアな加速をさせるには,エンジンもCVTも等しく頑張らなくてはいけない。

むしろ現状を基準に考えるなら,エンジンこそ頑張る必要があるといえる。
お受験対策で燃料をケチるんじゃない。低速からちゃんとトルクを出せと。
まずはエンジンの力だけで加速しようとし,それをCVTがこっそり補助する,くらいで全然構わない。
というより,有段だろうが無断だろうが,変速機というのはもともとそういうものではなかったか。
CVTだけ特別扱いして,魔法の道具か何かと勘違いして,酷使をしすぎなのだ。

その辺を間違えなければ,CVTにはもっと可能性がある。まだ終わりではない。
だが残念なのは,エンジンに関しては一廉の見識のあるマツダが,CVTを見限っていることだ。
例えば,SKYACTIV-XとCVTが組み合わさったら面白いんじゃないか,と思う。
まぁ,伝達効率の話を引き合いに出されるとぐうの音も出ないのだが。

ともあれ,多段ATやAMTが成長してきても,CVTがそんなすぐに終わることもないだろう。
今のままのパーなドライバビリティを引っ張るか,一旗揚げにかかるか。
個人的事情から言えば,CVT車との付き合いもこの先長くなりそうなので,頑張りに期待。

そこで最後に,CVTの制御について,私がいつも思っていることをひとつ。
減速時制御に対するクレーム,と同時に提案だ。

アクセル緩めると高速側に寄っていく制御,なんとかならん?

緩やかに離していった時は,それでも構わないだろう。
ドライバーとしても定速走行に移ろうとしてそういう操作をするのだから,そこは意図通りだ。
だが,パッと離した時にまで同じことをされるのは非常に困る。
エンブレが効いて欲しいと思っているのに,減速度がガクンと目減りするのは恐怖でしかない。

ゆっくり抜くのとパッと抜くのでは,その後に期待する動きは全く違う。
そのぐらい分かって,変速を制御してくれないものか。どうなんだ,制御書いてるやつ。
私の要望は上に書いたそのままだ。
ゆっくり離したら変速比アップ&コースティング,パッと離したら変速比ステイ。
スポーツモードとかじゃなく,Dレンジの時点でこうなる制御にしてくれ。マジで。
そんなに難しいことじゃないだろう。MTを手本にしろと言っているだけなのだから。



2017年08月19日 イイね!

地震雷火事親父



×親父
○大山風
どうでもよー。


外で雷が鳴っています。さっき近くに落ちました。
安全な室内から見ている分にはキレイダナーとかスゴイオトダナーで済むんですが。
徒歩やチャリ乗ってる時,しかも付近に待避所がない場合だと一気に脅威です。
斜め上空の積乱雲内で雲放電しているのを見上げつつダッシュするしかありません。


ところで,皆さんはこんな話を聞いたことがありませんか。
「自動車は雷に打たれても大丈夫」
定説のように言われているけど,ほんまかいな。

確かに,自動車に雷が直撃しても乗員に影響はないと言われています。
電流は車体表面を通りサスペンションとタイヤ経由で地面に流れ,乗員には辿り着きません。
詳しくはファラデーケージとか静電シールドとかで調べてもらえればいいと思います。
あまりにも外板の近くにいるとその限りではありませんが,今時のクルマなら大丈夫でしょう。
オープンカーは……ご愁傷様です。
まぁオープンカーで雷雨の中を無理に疾走はしないでしょう,普通の人なら。


が,この流れでは,自動車自体がどうなるかについては不問に付されている気がします。
なんとなく「人間が平気ならクルマも平気だろ。飛行機だって大丈夫そうだし」と思ってませんか。
必ずではありませんが,車両そのものは何らかのダメージを追うと思っておいた方がいいです。
ちょっと焦げるくらいから自走不能なレベルまで,その程度は様々ですが。
(※飛行機が基本的に無事なのはサイズの問題。たまに損傷もするよ)

例えばタイヤ。
雷の電流はタイヤから地面に流れると先ほど言いました。
この時,高圧の大電流の通過によってタイヤが過熱し,バーストに至る場合があります。
1本だけならどうにかなりますが,エネルギー量を考えると数本逝くと考えるのが妥当でしょう。
そうなると,もはや舵もブレーキも全く効きません。慣性で移動する鉄のカゴに早変わりです。
破けたタイヤの抵抗で減速していくとはいえ,自分の意志での停止は諦めるしかありません。

あとは各種電子部品。
外板の容量を超えるレベルの電流が入れば,内部の電装品に行くこともなくはありません。
オシャカになる可能性があるものとしては,とりあえずエンジン。
運が良くてもストール。タイミングや流れどころが悪いとブローすることも。
それと灯火類。夜道で死んだらお手上げです。
パワステやブレーキサーボ……はバーストしてる時点で関係ないか。

電装品の中でもっとも致命的なのがエアバッグ類です。
車体外周部に存在するセンサーや,車体中心にあるエアバッグECU。
あとはそれら検知機器類と,エアバッグそのものに電力を供給する電源(エンジンorバッテリー)。
これらもれなく電気作動式です。どれか1つでも死んだらエアバッグは開きません。
(※流れで言っとくと,エンジンOFFだとエアバッグ開かないから,普段の停車中も注意な)
当然シートベルトのプリテンショナも動きません。リトラクタのロック機構だけが頼り。
走行中にこうなったら,もう両手をハンドルに突っ張って耐えるしかありません。


これら全てが,高速道路上で起こったとしたらまさに大惨事です。
舵もブレーキも効かない真っ暗な棺桶の中で,緩衝材抜きの人体耐久試験をする羽目になります。
どんなに屈強な人間でも普通に死ぬレベル。胸より上バッキバキだろうな……。

というわけで,雷が鳴り始めたら,自動車は雷が当たっても大丈夫だぁなどと油断しないように。
当たりそうと思ったら速やかに安全な屋内へ避難するのが基本です。高速道路では即PAへ。
仮に上記のような損傷がなくても,一時的な難聴や失明により事故に至る場合もありますしね。
あとはびっくりして操作ミスするとか。直撃の音はすごいですからね~。


ちなみに。
雷は高いところに落ちるっていうのも不正確な説明ですので注意。
雷雲に近い方が電気を流しやすくて雷が落ちやすいのは事実ですが,あくまで落ちやすいだけ。
うまいことイオンの通り道ができていたりすると,建物無視で地面に落ちることもありますから。
空港のエプロンや海面に落ちる映像がYoutubeに転がってるので,興味があればどうぞ。

そういえば,走行中のクルマは,様々な摩擦によりプラスに帯電するってトヨタが言ってたっけ。
そして雷はその特性上,プラスに帯電するものに落ちやすかったような。
というわけで,平地を高速で走っている時は特に気をつけましょうね~。


……謎動画の告知よりこっちを昼間に上げるべきだったよなぁ。



2017年06月16日 イイね!

たまに専門家でも間違えてるから困る…



自動車会社のプレスリリース,自動車雑誌,あるいは数々のネット記事でも。
未だにしょっちゅう見かける表現がこれである。


「高張力鋼板を多用することで軽量高剛性なボディを実現」


……う~む。

実のところ,開発ストーリーをかいつまんだのであれば,この表現は間違いではない。
制約あふれる市販車で,軽量高剛性なボディを作るのに高張力鋼板が欠かせないのは事実だ。
が,そういった行間読み一切抜きでこの表現を見た時,貴方ならどう思うだろう?

「鉄板を高張力鋼板ってのにすると軽くなって剛性上がるんだ!」

文系の諸兄は多分こうなるだろう。
無理もない。
時々理系の技術者でもこう思っている人がいるくらいだ。
私も「剛性足らんから板厚盛って」と言ったら「ハイテン化じゃダメ?」と言われたことがある。
……まぁ,塑性はしてないんすよ,って絵の説明を若干端折った私も悪いのだが。




さて,一部愚痴を交えつつ問題提起をしてみたが,今回の話題は高張力鋼についてである。
早速だが,高張力鋼とは何か,皆さんは正しく理解できているだろうか。

高張力鋼は,開発職の間ではハイテンという呼び方をされることの方が多い気がする。
私としては,高張力鋼という誤解を招きやすい呼称より,原義に近いハイテンの方が好きである。
ハイテン……High Tensile Strength Steelの略だ。
本当はHigh Tensile Strength(高引張強度)であって,High Tension(高張力)ではないのだ。
重箱の隅つつきのようだが,ここは意外と大事だと私は思っている。

悲しいかな「高張力鋼にすると剛性が上がる」と思っている人が多い。
強度と剛性の区別がついていない人が,技術屋の中にもいるのは事実だ。
剛性とは,ある重さをぶら下げた時にバネがどれだけ伸びるかの話。
強度とは,バネにどれだけ力をかけたらビヨビヨになって戻らなくなるか,または切れるかの話。
ざっくりした表現だが概ねこんな感じだ。全然別物であることが分かるだろう。
そして高張力鋼は,一般鋼(レトロニム)に対して,強度は高いが剛性は基本変わらない。
重いものをぶら下げてもダメにならないだけで,伸びにくくなるわけではないのだ。
よって,高張力鋼に変えただけでポンと剛性が上がるなんてことはない。勘違いである。

あるのだが,昔の誰かさんが「高張力」と訳してしまったせいで勘違いは絶えない。
高張力と言われたら,なんとなく伸びにくいのかな?と思ってしまうのも無理はないと思う。
そもそも張力と引張強度は,文字が似ているだけでさっぱり別物だ。
張力をWikipediaで調べるとこんな感じだ。ただの力である。強度要素は皆無だ。
いっそ高強度鋼って書いてくれりゃいいのにねぇ。
(と思ったら高強度鋼って表記もちゃんと存在する……統一しろよややこしいな~もお~)


とまぁ,こんな感じでハイテン(以下ハイテンで統一)とは何ぞやというのは分かったと思う。
次に,何ゆえ自動車にハイテンが使われ,使用範囲が拡大されているか見てみよう。
といっても,高強度と言っている時点で分かるだろう。強度を上げたいからだ。
なぜ強度を上げたいか。理由の多くは衝突安全性能向上のためだ。
どういうわけか分からないが,自動車に求められる衝突安全性能のレベルは年々高まっていく。
人間って年々強度低下していってるんだろうか?と最近真剣に疑っている。

ともかく。
衝突時に乗員を守るためには,運動エネルギーを吸収してやる必要がある。
金属に限らず物体は変形することで内部にエネルギーを吸収できるが,限度がある。
上で,バネを引っ張りすぎるとビヨビヨになって戻らなくなると言った。これを塑性という。
金属は,この塑性状態になるとエネルギー吸収能力がガクンと低下するのだ。
形状その他が同じでも,塑性しにくい材料を使ってやればエネルギー吸収量は増える。
というわけでハイテンのお出ましとなる。

逆に,材料をハイテン化することで,エネルギー吸収能力をそのままに板を薄くすることができる。
板を薄く出来るということはすなわち軽量化につながる。
昨今の自動車は装備が雪だるまのように膨らむ一方,排ガス他の規制で重量は制限される。
その上で衝突安全性能を維持したいなら,ハイテン化して薄板にするしかない。
引張強度を更に上げれば,もっと薄板に出来る(単純計算上は)。
そんなわけで今では超ハイテンに超々ハイテンにウルトラハイテンと絶賛インフレ中である。

じゃあどんどんハイテンにしてどんどん薄くすればいいのか,というとそんなわけはない。
というより,薄くすることで悲鳴を上げ始める機能はゴマンとある。
基本的に,鋼板の薄板化は剛性の低下にストレートにつながる。
断面積は減るし断面モーメントは下がる,メンバーがグニャグニャして操縦性はがたがたになる。
屋根が薄けりゃ雨音は煩いし,床が薄けりゃ路面振動で地震のごとく揺れる。
挙げればキリがないくらい弊害だらけだ。

メンバーの剛性なんて,断面形状で工夫すりゃいいんじゃないの?
構造力学を知っていればそう思うかもしれないが,ここでハイテンの特性が邪魔をする。
ハイテンは強度が高い分,延性が低い。要するに成形が難しいのだ。
生半可なプレス機では,狙った形状にならずうにょ~んと戻ってしまう。
何度かプレスを繰り返せば狙いのカタチになるかもしれないが,下手すると今度は割れる。
複雑なプレスラインなどもってのほかで,プレス機上げてみたら裂きイカになっていたりする。
最近は,特に国内サプライヤはこの辺の対策に熱心で,かなり解決はされてきている。
が,外国,とりわけ技術途上のASEAN他の工場には関係のない話だ。

つまるところ,ハイテンの多用は高剛性ボディになるどころか,間違えると剛性低下を招くのだ。
それでも技術屋は,適材適所にハイテンを使って軽くしつつ,肝は押さえて剛性を出している。
強度と剛性,コストと重量,複数の要目をバランスさせて最適化する地道な作業だ。
「高張力鋼板を多用することで軽量高剛性なボディを実現」なんて1文では済まない。
この文章を見て「高い材料使って良くしたんでしょ」と安易に思わないで欲しい。


最後に,ハイテンを使った軽量高剛性ボディの作り方を紹介しておこう。

一番の正攻法は「剛性は要らないけど強度は要る部品を薄板ハイテン化する」ことだ。
そして,薄板にして浮いた分の重量を振り分けて,必要な箇所の剛性を出していく。
発想としてはオーソドックスだと思うが,効果も微妙でやや時代遅れ感がある。
「剛性は要らないけど強度は要る」なんて妙ちくりんな部品はそんなにはない。
せいぜい270MPa~440MPa級の部品を590MPa級にするくらいのレベルの話だ。
ミラージュの作り方なんかまさにそんな感じである。
上記の文章もこの作り方を前提にして書いてある。

そうした地道なプラスマイナス法に代えて,最近にわかに流行っている手法がある。
ダイハツのDモノコックというのがまさにそれである。
なんと,通常270MPa級で作られるサイドアウターパネル(最外板)をまるっとハイテンにしたのだ。
そしてさらに,ハイテンにして板厚を下げたのかと思ったら,逆に厚くしてある(1.5倍)。
従来ただの板だったサイドアウターパネルを,剛性部材かつ強度部材にしてしまったわけだ。
結果,サイドストラクチャーの内部から補強部品を排除することに成功。
おかげで,アウターが厚板化で重くなったにも関わらず,トータルでは見事軽くなったそうだ。
自動車設計の常識からすると突飛だが,構造力学的には極めて理にかなった方法だ。
これを思いついた設計サイドもすごいが,実現しカタチにしてみせた生産技術サイドも大概だ。

ちなみにマツダの場合,似たようなことをフロアあたりでやっている。
フロアの場合,材料強度上げても振動問題で薄くできないから無駄,と思われていた。
そこをマツダは「板厚そのまま強度上げて衝突時に頑張らせよう」と考えたらしい。
そうしたら乗員区画の骨格はそんなに頑張らなくても良くなったそうだ。
当然,ボディ剛性に関わる部分は部分でマツダらしくちゃんと配慮されている。

どちらの例も,やっていることは本当の意味でのモノコック化だ。
無理に骨を通して継ぎ接ぎするより,高強度の外殻でぐるっと包んでしまう。
あるいは,これこそがハイテンの正しい使い方なのかもしれない。


こんな感じで,どこの自動車メーカーの技術者もとにかく頑張って頭を捻っている。
もはやハイテンなくしてクルマは作れない時代に突入しているのだ。
そのハイテンも決して万能ではなく,付き合うには高い知見と発想力が求められる。
強度と剛性を混同している場合ではない。

2015年06月18日 イイね!

【クルマの基本】分かりやすい(多分)馬力とトルクの話

本シリーズは,クルマについて回る分かりづらい数字の類を,
できるだけ分かりやすく表現しようとするものです。

導出過程は計算式を用いて進めていきますが,
結論はドライバーにとって直感的に使いやすいものにしたいと思います。


計算式はあまり具体的な数字を出さないようにし,
計算演習じみたことにはならないようにします。

必要に応じてグラフを使用することもありますが,
単位にはこだわらず,したがって本来必要な定数を省くこともあります。
ぱっと見でイメージできればイイや,くらいの感覚です。








*第1回 馬力とトルク


クルマの動力性能を語る上で欠かせない2つの数字。

それが馬力とトルクである。



では,馬力とトルクが,クルマの加速・最高速にどのように関係するのか,
簡潔に説明しろと言われてもなかなか出来ないのではないだろうか。



一般的に多くなされる説明は次のようなものだろう。

・馬力はトルク×回転数で表される(厳密には更に定数をかける)。
・トルクは加速,馬力は最高速に影響する。
・パワーウェイトレシオは(日本式では)小さいほうが加速がいい。


正直,これらは合っているようで合っていない。

実際,このレベルの認識しかなかった頃の私は訳が分からなかった。

訳が分からなくなるのは,出てくる変数が多すぎるため,
そして変数と変数が互いに影響しあいすぎているためである。

・馬力=ENGトルク×ENG回転数
・車速=ENG回転数÷変速比÷最終減速比×タイヤ周長
・出力軸トルク=ENGトルク×変速比×最終減速比
・推進力=???
・空気抵抗=車速×???




……シフトアップした瞬間に計算が飛ぶこと請け合いである。



何かもっと,運転しながらでも直感的に分かりやすい表現はないか。

各変数の単位系・意味を考え,辿り着いた結論がこちらである。





「横軸が車速,縦軸が馬力のグラフ」


シフトアップの回転数は任せる(最高出力回転数でもいいしレブリミットでもいい)が,
次のようなグラフを書いてみればいいのである。



(かなりざっくりだが,後期型NIVEC仕様のFTOのグラフ)



このグラフに至った理屈を説明していこう。


まず,馬力=ENGトルク×ENG回転数,これはいいだろう。
(なんで?と思った方はググってください,不必要に長くしたくないので…)

そして,この馬力というのは非常に考えるのが楽な代物で,
ENGで計ろうが出力軸で計ろうが同じなのである。

馬力とは仕事率である,という定義からすれば当然なのだが,
計算式を2つ書いてみればより納得できるだろう。

出力軸トルク =ENGトルク×変速比×最終減速比
出力軸回転数=ENG回転数÷変速比÷最終減速比
出力軸馬力  =出力軸トルク×出力軸回転数
         =ENGトルク×ENG回転数
         =ENG馬力                   QED「495年の波紋」



で,馬力は仕事率である,ということであるが,
この仕事率というのは,単位時間あたりになされる仕事のこと,
そして仕事というのは力の大きさと移動距離の掛け算である。

すなわち,馬力をENGトルクを用いない式で表現すると,

馬力=推進力×移動距離÷時間
   =推進力×速度

となる。

本来であればENGトルクにあれやこれやをかけて求めることになる推進力(と加速度)が,
この考え方だと馬力と車速から逆算的に求める事ができるのである。



この式からすると「トルクは加速に~~」という表現は正しくなく,
正確には「同じ車速に対し大きい馬力を発生している方が加速がいい」となる。


そして,この考え方からすると,「パワーバンドだけ使って走る」のも必ずしも正解ではない。

最高出力発生回転数でシフトアップした場合と,
レブリミットまで引っ張ってシフトアップした場合,
グラフを重ねて書いてみるとこうなるからだ。



赤が最高出力発生回転数でシフトアップ,青がレブリミットでシフトアップした場合だ。
(若干グラフが汚いのはご容赦願いたい,回転数を500刻みにしてしまったもんで)。

同時に,縦軸を推進力に変換したグラフも書いてみた。



明らかに赤のグラフはシフトアップでの馬力・推進力の落ち込みが激しい。
つまりシフトアップで加速がもたつき,遅いということになる。
ということはこのクルマの場合,レブリミットまで引っ張った方が理論上は速いということになる。
(ちなみに高回転型NAはだいたいこの傾向を持つ,というか最高出力がレブリミット寸前)




また,この考え方からは「パワーウェイトレシオが小さい方が加速がいい」わけではないことも分かる。
(ピークパワーから算出しているレシオなので,この考え方がなくてもなんとなくは分かるが…)



赤が最高出力180馬力のNAエンジン,
緑が最高出力160馬力のダウンサイジングターボのイメージである。
(多分コルトVersionRがこんな感じ)

車重が同じであれば,パワーウェイトレシオで表現すると赤の方がハイスペックに見えるが,
実際の加速力は緑の方が優れていることになる。



ただし,それはあくまでも150km/h以下の中速域までの話で,
170km/hを超えるぐらいからは赤の方がわずかに逆転を始める。

クルマに限らず最高速というものは,推進力<抵抗となったときのものであるから,
空力特性が等しいなら,赤より緑の方が先に空気抵抗に負けて速度が頭打ちになることだろう。

一概にそうともいえない部分はあるものの,
「馬力は最高速に影響する」というのはこうしてみると確かに正しい。




ひと通り世間で言われていることについて検証してみたところで,
今回のまとめに入りたいと思う(眠くなってきましたスミマセン)。



①クルマの加速・最高速を考えるには,ENGトルクは見る必要なし,馬力だけでいい。
②ただし,馬力はピークパワーだけでなく全域の性能曲線を意識する。
③有段変速機なら,各車速に対してもっとも馬力を発生できるようシフトアップする。
④そうなるようにしているのが最近の多段変速機,理論上の理想はCVT(伝達効率がよければ)

こんなところで,今回は終了とする。











……とまぁいかがだったでしょう。

ぶっちゃけ分かりやすさ分かりにくさよりグダり感が半端ないorz
いや実際眠くなってきてグダグダしてしまったのは反省してますが。

実のところ今回のは「車速-馬力グラフ」という考え方を公表したかったのが全てなので,
それ以外の内容は無理矢理裏を取って書いたというか……。



え~,次回講座をやるときはもっとキリッと書きます。

スミマセン,仕事で追い詰められすぎて頭ん中がブロー寸前なんで,
今夜はこれで失礼させていただきます。

明日は有給とったし。


おやすも……Zzz

プロフィール

「ノーブレーキどころかフル加速で信号無視して側突はさすがに草も生えない。どこを見ていたというのか。」
何シテル?   08/28 21:29
人生うまく行かないことばかり。 エコカーで非エコ運動して鬱憤発散。 GANREFはじめました https://ganref.jp/m/h-kata_l...
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