KITAGのブログ一覧

新年になってから、ロドスタに火を入れてなかったし、家族サービスもそろそろよかろうと思い、妻に「ちょっと走ってくる。」と宣言し出発。

目的地は、六日市の温泉「ゆらら」である。ここは自宅から５０キロ少々の道のりで、途中信号もほとんど無く、いつ走っても約１時間で到着する。

気温１０度、市内の外れでオープンにして、久しぶりに開放感を味わう。妻のベリーサも快適だが、こちらの快適さは次元が違う。ついついペースが上がるのを気にしながらの走行となった。

「ゆらら」に到着してみれば、駐車場は一杯である。今日は１月３日、年末年始の疲れを取ろうという人が多いのだろう。早い人は明日から仕事かな。
湯船につかって、ぼんやりと窓の外を見ていると色々なことが頭をめぐる。

正月かぁ、俺が子供の頃は、正月は本当に特別な日だった。

御餅：１２月の２９日か３０日には、近所の家で組内合同の餅つきがあった。石臼と杵、もち米を蒸す湯気がもうもうとあたりを包む。コンロではあんこが煮えている。親父達が交代で杵をふるう。母達は餅をこねる。子供達は出来上がったばかりのお餅にあんこを一杯入れてほおばる。いったいどれくらいついたのだろう。今となっては知る由もない。当時は鏡餅も一緒に作っていた。一升餅、５合餅と巨大な鏡餅をいくつも作って神棚や床の間にお供えしていた。今は鏡餅は綺麗な箱に入ってスーパーで売っている。お餅も同じだ。

おせち料理：大晦日、母は紅白歌合戦を横目で見ながら、せっせと作っていた。年越しそばを食べるとき、出来上がったおせち料理のおこぼれを貰った。年を越える頃になると、丸い大きなお皿や重箱に、色々な料理が所狭しと並んでいた。明日はこれが食べれるんだとわくわくした記憶がある。今は元旦にスーパーの特設会場で、諭吉様と交換に持って帰るものらしい。

凧揚げ独楽回し：元旦、お年玉を貰うと近所の駄菓子屋に走っていった。凧や独楽を買うためである。凧糸を何本もつないで誰が一番高く上がるか競争した。風が無いときは走って何とか揚げようと頑張った。自転車を持っているブルジョアは自転車で走って揚げていた。悔しかった。独楽は糸の巻き方や回し方を上級生から習った。凧を買うお金が無いときは、近所の竹を切ってきて骨組みを作り、半紙を貼って自分で作って揚げていた。

お店：正月３が日は基本的に店は開いてなかった。食べるものはおせち料理とお餅だけ。ブルジョアの家にはカステラがあったらしい。自分の家では、ストーブの上で焼いたするめかフライパンで炒った豆ぐらいだった。今は元旦の朝からスーパーが開店し、ショーケースにはいつもどおりの品物が並んでいる。

トラック：正月にはトラックは走っていなかった。いや走る必要が無かったのだろう。正月が終わると、初荷式をして「初荷」と書かれたのぼりをトラックに立てて、一斉に道路に繰り出していった。これは必ずニュースにもなっていた。今年は元旦に実家に帰ったので車を運転したが、ローソンやファミマと表示されたトラックや何だか分からない大型トラックが、いつもより少ないとはいえ走っていた。

正月は、今やクリスマスと同じ単なるイベントになってしまったような気がする。余程心して年を越さないと、気持ちも何も新たにならない。昔は何も考えなくても、自然に１年が終わって年が変わるということの重大さを感じていたように思う。伝統やしきたりは時代とともに変化するものだし、今が悪いと思っているわけではないが、たった４０年前に当たり前だったことが、すっかり変わってしまったことに改めて驚いただけである。今の社会システムを維持するために、いったい何人の人が年末年始を返上して働いているのかと思うと、申し訳ない気持ちになる。

私達一人一人が少しずつ我慢すれば、もっと多くの人が、行く年に感謝し、来る新年に思いをはせることができるのにと思う。こんなことを考えるのはオヤジのたわごとなのかなぁ。

なんて考えているうちに日が西に傾いてきた。今日はこれくらいで許してやるかと帰路についた。帰りも同じ道を快調にぶっ飛ばす。愛車の調子も絶好調だ。

帰る道すがらロドスタが私にそっとつぶやいた。
「昔は、５０近いおっさんは、こんなことして無かったよ。」

「うるさい！　黙って走れ！」