にゃんぱす。
オイルソースの決め手は、オリーブオイルと茹で汁のエマルジョン化です。
にんにくは少々が調子いい、H-TECです。どうも。
材料がなければ仕事はできません。そんな短絡的な理由で明日は今年最後の有給休暇もらったので少し筆を持ってみることに。自由な社風に感謝。
EK4からCL1に乗り換えて、オイル交換の時期になって初めて気づいたんですが純正オイル指定ってMILD(10W-30)なんですね。で、みなさんの意見聞いてるとどうも5W-40が多数派な意見。
EKと同じVTECなのにどうして違うのかなーとかっていう持論から、じゃあ最近流行りの低燃費0W-20とかってホントにエンジンにいいの?とかって話を絡めながら駄文長くなること必至なのですが、またまたモノ好きの方がいれば少々お付き合いください。
オイルに求められる役割っていくつかあるんですが、主なものを上げると
減摩作用、冷却作用、緩衝作用、密封作用、防錆作用、清浄作用があります。とりわけこの中から一般的に関心の高い項目を選ぶなら、
減摩作用、密封作用、清浄作用あたりですかね。この辺がいわゆる「フィーリング」とか、「吹け上がりの良さ」とか「燃費向上」に直結してくるからですね。
じゃあ実際のところ何がどうなったらフィーリングやら燃費が変わるんだってばよ!っていう話ですが、ま、簡単に言うと流体の粘度って抵抗ですよね。とりわけ上記の
密封作用が大きくなればなるほど、抵抗が大きくなる。水を入れた注射器とハチミツを入れた注射器の重さの違いが想像できればOKです。ここまでは常識のおはなし。
こっからがホンダエンジンに関するおはなしです。(たいしたことないけど)
排気量あたりの馬力も圧縮比もそーんなに変わらないエンジンなのになぜB16AとH22Aでオイルがかわってくるのか。
おそらくですが、これはシリンダとピストンの特性に依存する部分ではないかと推察します。
ここで少しB16AとH22Aの内燃機諸元を比較してみたいと思います。
エンジン型式 | H22A |
種類 | 直列4気筒DOHC 16V |
排気量 | 2156cc |
ボア(内径) | 87.0mm |
ストローク(行程) | 90.7mm |
ボアストローク比 | 1.04 |
圧縮比 | 11.0 |
エンジン型式 | B16A |
種類 | 直列4気筒DOHC 16V |
排気量 | 1595cc |
ボア(内径) | 81.0mm |
ストローク(行程) | 77.4mm |
ボアストローク比 | 0.96 |
圧縮比 | 10.2 |
よく、「
ロングストローク」だとか「
ショートストローク」だとかって言いますが、上記の
ボア:ストロークが
ボア<ストロークとなるものが
ロングストローク、逆に
ボア>ストロークとなるものが
ショートストロークということになります。これが1:1に近づいてくると、
スクエアストロークなんて呼ばれたりしますね。ここまでは大丈夫でしょう。
というわけでデータをもとに定義すると、H22Aは
ロングストローク、B16Aは
ショートストロークということになります。
さて、この違いは当然エンジンの出力特性にも大きな影響を及ぼすわけですが(今日はその話は置いときますが)、これがオイル性能とどう関係するのかっていうことですね。
まずはストローク量の話からいきたいと思いますが、表を見るとH22Aが
90.7mm、B16Aが
77.4mmつまり、一行程あたり
13.3mmの行程差があります。仮に二つのエンジンを1000回転で回したとき、二つのエンジンのストローク差は
13,300mm(=13.3m)にも及ぶことになります。
一度の爆発でストロークの差がこれだけ生まれているわけですから、当然理論上H22Aの方がトルクが大きいエンジンと言えると思いますが、同時にエンジン内のしゅう動距離もそれだけ大きいということになります。直線の
しゅう動距離の差ががそれだけある上にボアも大きいわけですから、
しゅう動面積比となると2πr×ストロークの面積比となってきます。
さらに、このデータだけではわかりませんが、H22Aのエンジンサイズや写真などを見た限りでは恐らくH22Aのコンロッド長はB16Aのそれとさほど変わらないと思われます。となると、ストローク量が多い分
連かん比が下がり、ピストンがシリンダを横方向に打撃する力が強くなります。
この事実が何を意味するかというと、まったくの同回転数で二つのエンジンを回したとき、H22Aのほうが
ピストンとシリンダの摩擦し合う時間が長いうえに摩擦力も強いということになります。
ここまでくると結論が見えてきますね。そう、H22Aのほうがより油膜性能が高く、なおかつ打撃から保護する性能が高いオイルが求められる。ということです。
そうすると上記にあった
密封作用、
緩衝作用の高いオイルが必要になってきます。
油脂の専門家ではないので詳しいことはわかりませんが、当然SAEグレードの高いオイルのほうが粘度が高いわけですから、油膜の力も強く、衝撃を吸収する力も大きいと言えると思います。
これがEK4とCL1のオイル粘度の違いの理由だと、個人的に推察します。
もちろんね、この論争にはいろんな落としどころがあって、例えばレース車両なんか1レースでオイル全量抜いたりピストンの精度出し直したりするよ。って話になってくれば、モストプライオリティはフリクションロスの低減や、カーボン、スラッジを極力かき落としてやるってところになってくるので一概に上記の理論が通るわけではありません。
私が学生のときは、学校のレース部がEG6でレースに出て、1レース限りのカリカリチューンだったB16Aをとにかくブン回すために0W-20を入れた…なんて話も聞いたことがあります。
さて、一通りを踏まえたうえで2つ目のテーマ、最近軒並み量販店で人気の
低燃費オイル(0W-20とか)ですが、アレは本当に入れていいのかい?という話です。
結構どこも大きく売り出しているので、個人的には本当に大丈夫なのかなあと疑問に思っていたのですが、どうやらあれはオイルや自動車各メーカーの策略ってものが絡んでいるようです。
端的に言うと、粘度の低いオイルを入れて燃費走行をすれば確実に燃費は良くなります。最初に述べたようにオイルというのは基本的に抵抗ですから、抵抗がなければエンジンの能力をロスせずに引き出してやれる。という簡単なおはなしです。
メーカーはどうやらユーザーの燃費記録をモニタリングしているらしく、そのデータを取るためには低燃費オイルを推奨するようにしているかもしれない。という情報を少し聞いたことがあります。(真偽は知りませんが。)となると、当然数字に表れる低粘度オイルを勧めてくることになるでしょう。
でも、粘度の低いオイルを長期に渡って使用するとどうなるか。もうだいたいわかる話なんですが、減摩作用、緩衝作用、密封作用、洗浄作用、このあたりがどれも低下してきてしまうことになります。となれば、シリンダとピストンの引っかきによるダメージは増えますし、機密低下による混合気抜け(クランク下へのガソリン落ち)、さらに洗浄作用低下によるカーボン・スラッジの堆積…どれもエンジンに致命傷を与えかねないファクターです。
うーん、ここまで見てみると、一概にどっちがいいとも言えんなあ…と思いますが、正直なところ長く乗りたいクルマなら、目先の燃費にとらわれずに適正オイルを入れたほうがいいのかも。なんて思います。もちろん最近のミラーサイクルエンジンやそれに類する低圧縮高膨張エンジンなんかはトルクピークも低いと思うのでメーカー推奨が0W-20ならそれでいいと思うんですが、一般のオットーサイクルエンジンなんかはやっぱり5W-30あたりが普通かと思います。
最後に個人的な意見ですが、オイルってそのもの特性がそのままアクセルフィールに反映されやすい要素の一つだと思うんです。フリクションロスの少ないオイルを入れれば当然吹け上がりは良くなる。でも反面気密性は?出力は落ちてない?とか、メリットとデメリットは必ず表裏一体でついてくるものです。だから、そのフィーリングの裏に隠された事実はいかなるものか。そんなところを見極めてくのがカーライフ上級者なのかなと。
ま、そこまで試したこともそんなにないんですけどね。
前回はボディ、駆動関係の話だったので今回はエンジンの話で。
仕事がないと夜更しが過ぎますね。それでは。
※2013/12/15 追記
よーく考えてみたんですが、上記の計算にひとつ簡単な間違いがありました。1回転あたり2行程ですので、しゅう動距離差は×2となり26,600mm(=26.6m)ですね。
ま、もっとも同回転数までの到達時間はストロークが大きくなればなるほど遅くなるので同回転という前提自体がすこしロジック的すぎるんですが。
もしかすると、これだけロングストロークなのに高回転も両立させるというH22Aの特性が、H22Aユーザ間でも有名なオイル食いにつながる部分もあるのかもしれませんね。