
機械自体は完璧な状態で戻ってきましたが、ソフトであるテープは全て劣化しているのでまず一度テープを走行させて粉を落とさなけばなりません。一度で綺麗になるかはわからないので汚れがつかなくなるまで何回もやらなければならないかも知れません。なにしろ40年以上前のテープなので何が起きるかは恐らく作ったメーカーの方でもわからないと思います 。
ここで思い出すのはCBSソニー、現ソニーミュージックが1973年のサンタナ日本公演の音源テープを40年振りくらいに掘り起こして入念にメンテナンスして復活させた出来事です。
なんとレコードをリリースした後そのマスターテープは忘れた去られて倉庫の片隅に放って置かれて探し出した時には劣化が進んで相当慎重な作業で復活したらしいです。この記事が出た時は大きいレコード会社でもそんな杜撰な管理の仕方をしていたのかと驚きました。大メーカーのソニーですらその体たらくなので、私のいい加減な保管の仕方でもまあまあ大丈夫だったのかなと逆に少しホッとしました。
その音源はレコードとSACDの両方持っています。レコード発売当時は人気イラストレーターだった横尾忠則の22面体ジャケットも大変話題になりました。SACD化に際してはジャケットがシングルレコードと同じサイズで22面体のオリジナルを完全再現されました。そういうジャケットを制作する専門の会社もあるらしく、技術の高さにも感心しました。
このレコードも完全にSACDも日本によるもので、しかも4チャンネル音声で記録されたものです。
音源が同じなので出てくる音も当然同じはずですが、SACDの方は拍手の部分は後方からクッキリ聴こえますが残響音は小さめです。
レコードの方は残響音もリアから結構出ているので何故これだけ違いがあるのか不思議ですがミックスの違いによるものか、技術の進歩が違いになっているのかはわかりません。アナログの曖昧さとデジタルの潔癖さ?の違いかとも思いますがよくはわかりません。
本当はこういう細かい事を誰かと語り合いたいのですが、少なくともネット上では見当たりません。
もともと4チャンネルユーザーが少なかった上に現在でもマルチチャンネルSACDなどという狭い(少ない)世界のソフトをマルチチャンネル再生装置で聴く人などとても少ないからでしょう。
世の中の趨勢は小さく手軽にしかも高音質に聴けるモノが出回っているので、一時は盛り上がったかに見えたマルチチャンネルが再び日の目をみる事はもうないのではないかと思っています。…などと思っていた2年ほど前、オンキョーからサウンドスフィアという、ワイヤレスで(スピーカーコード無しで)5.1チャンネル再生ができるコンパクトなシステムが出て、若い人にもサラウンド再生が流行ればイイなと期待しました。ところが今年になって老舗オーディオメーカーだったオンキョーは倒産してしまいました。これでまた振り出しに戻ってしまいました。やはり軽くて小さいモノの方が主流になって行くのでしょう。

話が大きく逸れてしまいましたが本来ならリビングのアンプに繋いでパイオニアのスピーカーで鳴らしたいところですが、ヴィンテージのテープたちが再生すると表面は磁性体の粉が、裏面はバックコートの成分の落ちたものがゴムのローラーにこびりついて汚れるのでまずはそれを落としてヘッドやピンチローラーを綿棒で掃除してやらなければならないからです。そのため、今は雑然とした自分の部屋で粉を落とす作業を地道にしています。
その作業が結構大変でやりにくいのです。知っている方は分かると思いますがオープンリールデッキの走行系はとても複雑で多くのパーツをテープが通過して再生されます。そのひとつひとつを専用のクリーニング液でこびりついた粉を拭き取っていきます。しかし拭き取る部分がカバーで覆われていてとてもやりにくいのです。オープンリールデッキの設計者はこれをどう思っているのか聞きたいところです。
カセットデッキの場合は自動でクリーニングしてくれるカセット型のクリーニングテープがあるのになぜオープンには無いのか?とても不思議です。大雑把には耳掃除用の綿棒で拭きますがテープの端にあたる部分はガイドするため角(コーナー)になっているのでとても拭き取りにくいのです。そこでその部分は歯間ブラシを使う事になりますが、それでもメカ全体を覆うカバーが邪魔をしてうまく拭けない部分があります。
そこは目視もできないのでとてもイライラします。かようにオープンリールデッキというものは精神衛生上もよろしくない機械だと思います。そもそも精密なメカを掃除する方法が耳掃除や歯間ブラシという超アナログで原始的な方法しか無いのがどうかと思います。
それでも手放せないだけの魅力があるので自分には決して安くない費用をかけて治していただいたのですが…
この機械は、当時の技術としては…というレベルではなく、今のモノより高性能だと思える性能を持っていると思うからです。
ついでに言うと、掃除の為にヘッドが見やすいように低いテーブルに寝かした状態にして椅子に座って掃除しています。本来の使い方はオーディオラックなどに収めた状態で使うものだと思いますが、それだとまた掃除する時はきっとやりにくい体勢で顔をひん曲げながらやるんだろうなと想像してます。ハタから見たら多分滑稽な姿に写るのでしょう。
掃除道具一式 磁性体が当たるヘッド類は1と綿棒(紙の軸だと弱いので木の軸のものがよい)と歯間ブラシという超ローテクな道具。片側9か所×2で18か所も拭かなければならない。テープ裏面が当たるローラーは2と綿棒で地味に拭いていくしか方法がない。
そもそもオープンリールデッキを使うという事はそういう事なのだと思います。ウチのはそれでもまだ7号リールという小型機なのです。
標準は多分10号リール機だと思いますますがそれだと7号機の2倍くらいのサイズと動かすのが苦痛になるほどの重量になります。
GX-77は7号機の中でも特にコンパクトなので所有し続けられるギリギリのサイズだったのでなんとか今まで生きながらえてこれたのです。
GX-77の前はソニーのTC-6360Aという普及機を持っていました。これは多分ソニーのヒット商品で1モーターながら3ヘッドで値段の割に高性能なのが売りだったと思います。この機種にはもうひとつ特徴があって本体は木製のキャビネットに入っていますがキャビネットの前面がスラント(傾斜)していて立てて使うと本体が少し上を向くので低い位置に置いても操作がしやすかったのです。寝かせて使う場合は本体を引き抜き上下を逆さまにすると下の方が低くなり(自分の方を向く)どっちにしても使いやすくなっていました。こういう工夫はいかにも独創的な電気メーカーソニーらしいと思ったものです。
この製品の性能自体は良かったのですが、留守録音(タイマー)に対応して無かったのが自分にとってのネックで買い替える事になりました。今では死語のエアチェック(FM放送を聴いたり録音する事)をするには自分が居なくても電源が入って録音してくれる機能はどうしても欲しかったのです。

その時触手が動いたのが同じソニーのTC-6650という少し高級な機種でした。しかしその時は予算が無く一度諦めました。
その後しばらく経ってGX-77が出て高性能なスペックにも、オープンリールデッキの概念を覆すスタイルにも軽いショックを受けて絶対欲しい!と思いました。
なにしろ幅440ミリ高さ244ミリというサイズはアンプ、チューナーなどとほぼ同じでオーディオラックにも収まるのです。他のオープンリールには絶対できない芸当です。
TC-6360Aのサイズは幅は418ミリですが高さが392ミリもあるので単体でどこか別のところに置くしかないのです。
更に、このデッキに最適な超多機能タイマーが少し遅れて発売されました。DT-320という機種です。優れすぎていて自分ではとても説明しきれません。そこでネットの力を借りてこれを解説した記事を発見したので引用させてもらいます。
AKAI DT-320
¥34,800(1982年頃)
ウィークリー8プログラムと3系統のACアウトレットコントロールを搭載したオーディオタイマー。
マイコン技術を応用した1週間8プログラム機能を搭載しており、8パターンのタイマー予約が可能です。
各プログラムは1週間の望みの曜日を複数ランダムに指定できるため、ある曜日だけタイマー動作させることや、飛び飛びの曜日や毎日などのプログラムセットが可能です。
また、プログラムを毎週継続するRepeatや、1週間だけの動作にとどめるOne Timeの選択が可能です。
A/B/Cの3系統のACアウトレットコントロールを搭載しています。
これはACアウトが各プログラムごとに、A+C、B+C、A+B+Cの3通りの組み合わせでコントロールできるため、複数のデッキやチューナーを組み合わせて留守録音や目覚し再生が可能です。
トリプルディスプレイ機能を搭載しており、時刻表示は、秒単位までの現時刻、タイマーのON時刻、OFF時刻の3種類が表示できます。
また、プログラムナンバーやACアウト、曜日、Repeatなどの全てのインプット情報を大型の2色FL管で集中ディスプレイできます。
ディスプレイには2色FL管を採用しています。
ワンタッチプログラムチェック機能を搭載しており、プログラムナンバーのキーを押すだけでプログラム内容が確認できます。
センサーライトガイドシステムを搭載しています。
操作キー及びディスプレイは操作手順にしたがって左から右へレイアウトされており、次に操作すべきキーが点灯します。しかもキー操作に対応するディスプレイ箇所が点滅するため、確実な設定が可能です。
キー操作を電子音で確認するタッチトーン機構を採用しています。
現時刻表示は12/24時間の2ウェイ表示式となっています。
また、プログラムディスプレイスイッチでプログラム部分の表示のみを消すこともでき、高精度なクォーツ時計としても使用できます。
オートディマーセンサーを装備しており、部屋の明るさに応じてディスプレイの明るさを自動調整します。
プログラム修正が簡単に行えるフォワード方向、リバース方向のシフトキーを採用しています。
99分まで1分刻みにセットできるスリープタイマー機構を搭載しています。
ワンタッチ0秒リセット機構を搭載しており、現時刻をセットした時に時報と同時にセコンドセットキーを押すことで簡単に秒合わせができます。
メモリーセーブ機構を搭載しており、単一曜日をOne Timeで指定したプログラムはタイマー動作終了後もメモリー内容が保持されます。ただし、メモリーされているだけでタイマー動作はしません。
オートプログラムキャンセル機構を搭載しており、複数曜日指定のOne Timeプログラムは、その週の最後のタイマー動作終了後にメモリーが自動的にキャンセルされ、空きプログラムとなります。
自動復帰機構を搭載しており、インプット操作を途中で中止した場合、一定時間が経過するとそのプログラムは自動的にキャンセルされます。
メモリーバックアップバッテリーを内臓しており、停電時や電源切断時に30分間以上メモリー内容が保持されます。
別売りのクォーツシンセサイザーチューナーAT-S61と組み合わせることで、プログラムセット時にAT-S61のプリセットステーションがコントロールできます。DT-320側ではFM/AMのバンド選択も可能となっており、バンド選択をしたのちFM/AM各5局までの選局予約を時刻予約と共にセットできます。
目も眩むような凄さでここまでくると、ご飯を炊くためのタイマー(昔そういうのがあったと思う)などと同じカテゴリーの電気製品に分類するのが失礼なほどの立派な人格者?だと思います。こんなに長い説明文を必要とするタイマーが他にあるでしょうか?
主役のGX-77自体よりこっちの方が凄いと思えるほどの後世に残したい「作品」と言っていいと思います。
ところでこの機種にはシルバーとブラックの2種類あってどっちも気に入っていましたがオープンリールデッキで黒は珍しく、コンパクトなデザインが更に引き締まって見えるので少し高いのが痛かったですが(4000円)奮発して黒にしました。
アンプなどにはシルバーとブラックの2種類ある例がたまにありますが値段の差があることはあまり無いように思います。その点もプレミア感があって愛着がより深くなる要因です。

椅子に座って台に上を向いて乗せてヘッドがよく見えるようにして掃除しています。
Λ(ラムダ)ローディングという画期的なメカでシンメトリーに配置したヘッド類の中心にローディングローラーを追加する事でテープの装填がとても楽になった。(普通のデッキにはない)
Posted at 2022/12/04 06:25:52 | |
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