
ご無沙汰してます。
酷道っていうのを知ってます?
国道、すなわち国の管理下にある道路なのに、そうとは思われないような酷い道。
私は少し前から酷道なる概念を知って興味もあって、酷道というからにはそりゃー酷い道なんだろうなー、そそられるわ~と思いつつ、近場に無いしなかなか出かける機会もなかったんです。
行ってみたいなー・・・、と思っているだけでは行けないので、年末のある日、酷道ドライブ旅に行ってきました。
それも酷道マニアの間で、『日本三大酷道』として名高い、酷道425号線(死にGO線)という酷道に。
酷道425号線は三重県、奈良県、和歌山県をまたいで紀伊半島を横断する道路で、全線走破しようと思うと結構な距離があり、時間がかかりそうなので、全線の1/3程度を走るプランをたてた。
そして、さすがにFDで走破はムリだろうと考え、私が仕事で使っているサクシードを出動させることにした。
前日にネットで調べたところ、425号線は相当山奥を通る道、かつ、全線を通してガソリンスタンド、コンビニはもちろん、民家もないみたいなので、万一の場合を考え、出発前にバッテリーを新品に交換し、一通りのトラブルに対応できる工具類も積み込んだ。
そんな危険なところに一人で行くのはイヤなので、嫌がる友人2名をムリヤリ道連れにした。
なにしろ相当危険そうな道なので、朝7時に名古屋を出発。
どんなに遅くなっても夕方前には普通の道路に戻っておきたいからだ。
チナミに2名の道連れのうち、一人は整備士。
もう一人は車オタク。
私も基本的な車知識は持っているつもりだ。
工具も積んだし、これだけいればもしトラブッても何とかなるだろう。
高速に乗って2時間ほど走る。
名古屋方面からみて、三重県の一番奥のインターで降り、そこから国道42号線(←これはふつうの国道)(でもイヤな語呂)に入り1時間ほどさらに南下。
すると、THE酷道・425号線への分岐に辿り着いた。
酷道に入る前に、食糧と飲料を調達することにした。
昼の弁当の他、最悪の場合に備え、乾物系の日持ちする食糧と飲料とを多めに勝っておく。
クルマの燃料はこの時点で半分以上残っていたが、念のため満タンにしておくことも忘れない。
準備を万端に終え、いざ酷道へ。 425号線第一歩を踏み出す。
大概の、三重県側から425号線を目的として来る人は、この時点でゲッ・・・と思う。
42号線との分岐の角にある墓地に出迎えを受けるからだ。
42号線から425号線への分岐で墓地。
狙ってるとしか思えない。
さぁ行くか~、と気合いを入れなおした道連れたち。
ちょっと進むとさっそく林道のような道になってきた。
「おぉ!雰囲気でてきたね~」
「うわっ、いきなり砂利道だぁ!」
「ひゃー、もう携帯通じね~♪」
テンションが上がってきた俺たち。
テンションそのままにダートをどんどん進む。
これからどんな道が待っているのか、そんな期待と不安が俺たちを突き動かす。
ここで、俺たちは想像を絶する『酷道』の洗礼を受けることになる。
これが・・・酷道??
いくらなんでもこれはムリだろっ!!
俺たちは軽くパニックになった。
「これが酷道!?」
「いきなりこれかよ!?」
「イヤ、マジで死ぬぞ!」
いきなり挫折かと思った。
が、よ~く調てみるとこれはホントの『山の中』に入っていく道らしく、ほんの少し道を間違えたことが判明し、ホッと胸を撫で下ろした。
幸い予定コースから大きく外れてはいないので、すぐに正規ルートへ復帰し、今度こそ425号線に入ることができた。
モノモノしい言葉が並んでいるが、この後実際に走ってみると、そこらじゅうで小規模ながけ崩れや落石がたくさんあり、なかには通行に支障のでる場所ではなかったものの、上から落ちてきたと思しき巨大な岩がたくさん転がっていた。
が、FDではムリでも、サクシードなら大丈夫。
いざ425へ突入した。
たしかに国道とは思えないような道幅だ。
単なる山道にしか見えない国道をしばらく行くと、トンネルがあった。
恐ぇ・・・
掘りっぱなしだよトンネル・・・
掘りっぱなしトンネルを抜けてどんどん進む。
(しばらく写真でお楽しみください。)
国道の証拠
視線をすぐ左に移すとこんな山奥
謎の「女王の滝」
しかし「女王の滝」へ続くらしい道路はアスファルトがボコボコに剥がれ、さらにゲートで封鎖されていた。
「女王の滝」までいかなくても普通に滝が流れている。
しばらく行くとダム湖らしきものがあった。
ここから少し寄り道して奈良県道228号線へ向かう。
ここも『険道』として有名なところらしい。
アスファルトはボコボコ、草木ははみ出し放題。
荒れ具合からすると425線よりもさらに酷い印象だ。
ダム湖沿いに走ると、こんな吊り橋があった。
もちろん渡ってみる♪
ちょっと歩くと揺れる揺れる。
ワイヤーはこんなにサビサビだが大丈夫だろうか?
下は丸見え。。。
水面に映る影。
なんとなく高さがわかるだろうか。
用途不明の浮輪。
橋から落ちたらここに掴まれということだろうか。。。
橋の袂にこんな看板が。
とりあえずショットガンをぶち込まれることは無さそうで安心です。
吊り橋でひとしきり遊んで、さらに奥地へと進みますと
廃校舎が出迎えてくれます。
集落跡
実は険道に寄り道したのはここに来てみたかったから。
ここは普通に街で暮らしている者からすると、想像を絶する山奥で、周辺には山以外何もないのに、
ポツンと集落跡だけがあるのです。
現在ここで暮らしている人はいません。
しかし、ときどき帰ってきて掃除でもしているのでしょうか、荒れた感じはありませんでした。
先ほどの吊り橋のところでも感じていましたが、すごく違和感を感じます。
何がというと、音です。
見事なほど無音なんですね。
街で暮らしているとどんなに静かだと思うような夜でも、人のザワめきやクルマの走行音等が必ず耳に入りますよね。
しかしここでは我々が静かだと思う音よりもさらなる静寂に包まれています。
たとえば、ダム湖に小石を投げます。
ポチャン・・・と音をたてますが、その音の耳に残ること!
現実感がないというか・・・
非日常にも程があるといった感じです。
実はここの集落に、ほんの数年前までマニアの間で有名な郵便局がありました。
『東の川簡易郵便局』
曰く、『日本最後のオフライン郵便局』。
ここは山奥すぎて電話線が引けなかったらしく、したがってインターネットも無し。
昔ながらのやり方で郵便事業を続けていたらしい。
ちなみに電話は無線電話を使用していたとか。
郵政民営化により、惜しまれつつ閉鎖されたそうです。
できれば閉鎖前に来てみたかった。。。
ついでに学校にも訪問
ここで昼食の弁当を食べ、しばらく休憩。。。
425号線に戻り、さらに先へと進んだ。
延々と先ほどのような道が続く。
しばらく行くとダムの堰が見えてきました。
壁に沿って通路があるのがわかりますかね?
特別な許可を取り、通路を渡ってみます。
上からみてると大したことないと思えた壁のオーバーハングが、下から見ると、
グオオオオオ!っと覆いかぶさって圧迫してきます。
加えてこの通路、鉄板でできてるんですが、ところどころ隙間が空いてて恐いの何の。。。
こんな巨大な建造物を造る人間ってすごいな~、と変なところで感心してしまった。
今回のドライブで一番印象に残ったのはこのダムかもしれない。
『酷道』そのものも、吊り橋も、すごいインパクトがあったが、高所という原始的かつ直接的な恐怖はあまりにもダイレクトだった。
ダムで遊んでいると結構いい時間になたので、さてそろそろ行くかー、となった。
予定ルートで行けば、ほどなくして『まともな』国道に出る筈だ。
すでに名古屋から数百キロ走っているが、『酷道』はまだまだ続いている。
「さて、ここから帰るか?」
「このまま和歌山まで抜ける?」
「それもいいかもな。」
俺たちは、果てなく続く酷道を進んでいった。