さて、待つ事しばし。特急南紀1号は定刻に、松阪駅4番線に入線。
停車時間は1分足らずなので、乗り遅れに注意…(笑)
『グワァァーー~!』
豪快なディーゼルサウンドを轟かせ、電車にも負けず劣らずの加速。
元来気動車は電車に比べ、出力面で劣り、同じ特急列車でも、所要時間に大差があった。
しかしJRになってから、各社共に新手のエンジンを開発、搭載し、今では電車に対しても遜色無い性能を誇る気動車ばかりだ。
このキハ85系に搭載されているのは、英カミンズ社のC-DMF14HZ型。排気量14,000cc、直列6気筒インタークーラーターボで350馬力。これが1両に対し、2基搭載されている。
爽快な走りに酔いしれているのも束の間。徳和を通過。
その昔、倭姫命が大切にしていた櫛を落とした事をルーツとする、歴史に名高い櫛田川を渡り、多気の場内進号機が見える頃、徐々に速度を落としていく。
多気定時到着。ここで南紀1号とお別れだ。
発車後しばらくして、下り新宮方にある引上線で待機していた、0943発 新宮ゆき329Cとなるキハ11型300番台が、ゆっくりと入線してきた。
正直なところ、隣の留置線で休んでいた、国鉄時代に製作されたキハ40,48型を期待してたのだが…
何故なら、キハ40,48型は、現在、伊勢運輸区及び美濃太田運輸区に在籍し、前者は参宮線、紀勢本線のローカル、後者は、主に高山本線のローカル運用に就いて居るが、それも来年3月のダイヤ改正で、いよいよお別れとなりそうだ。
武豊線電化による、キハ75系の余剰分及び、新型気動車キハ25の増備により、完全淘汰される見通しである。
唯一、三重県内のJR線でも、国鉄時代の雰囲気を味わうことの出来た、参宮線、紀勢本線…。
それも間もなく見納めとなりそうだ。
発車時間が近付くと、スポーツウェアに身を包み、大きなバッグを持った男子高校生が、ドヤドヤと乗り込んで来た。おそらく、野球部の練習試合だろう。多気の一つ向こう…高校野球で有名な相可高校がある、相可まで行くのだろう…。
定刻に発車。ワンマンなので、本業?の運転操縦に加え、ドア扱い、改札に運賃収受等、運転士は大変だ。
分岐点付近。直進しているのが参宮線で、右へカーブしているのが紀勢本線。
ステンレスボディが眩しいキハ11型300番台の2両編成は、併走する国道42号線を左手に見ながら、しばらく田園地帯を淡々と走る。線路脇に、彼岸花が咲いている・・・。
相可停車。先程の高校生の一団が、大挙して下車。
一気に閑散とした車内。見渡せば、うたた寝するおじいちゃん。持参したみかんをむしりながら、世間話に花を咲かせるお婆ちゃん達…。何とも長閑だ…(笑)
三々五々、思い思いの姿勢でくつろいでいる。そして我々父娘を乗せた新宮ゆき329Cは、次第に
大台山地の麓へ分け入って行く…。
『パパぁ。そろそろ食べようよ!』
『お・・・おお! そうやな。食べよ食べよ!』
先程からやんちゃ姫、駅弁の中身がすごく気になるようだ・・・(^^)
そろそろ三瀬谷も近い・・・。乗客の動きが落ち着いてきたので、ぼちぼち始めよう(^^)
『うわぁ!! おいしそ~!! いただきまーす!』
こちらはしばらく、カップ酒をヤリながら、車窓の景色を楽しむ。
そして一息ついて、やんちゃ姫と向かい合って、駅弁をいただく。
列車は相変わらず、時速60~70㌔で右に左にカーブしながら、山間の小径を南へ向かう。
三瀬谷1013到着。5分停車。特急停車駅なのに無人という・・・。今し当たり前なのか・・・。
イイ食べっぷりだ・・・(^^)
3つ先の伊勢柏崎でも5分停車。ここで対向の南紀4号(3004D)をやり過ごす・・・。
駅弁をつつきながら、ゆっくりした時空が流れる。
『ごちそうさまぁ!!』
完食である(^^)
美味しい牛乳で有名な大内山。
梅ヶ谷を過ぎ、荷坂隧道へ・・・。
トンネル内のサミットを越えれば、紀伊長島へ向け、急峻な荷坂峠を駆け下りる。
連続するトンネルがなくなる頃・・・
熊野灘が見え隠れする。
紀伊長島1100着。28分の大休止。多気からハンドルを握ってきた運転士も、ここで交替。
運転免許を取った初めての夏・・・あの娘と泳いだ想い出の古里海岸・・・。
尾鷲1157着。3分停車。
矢ノ川橋梁を渡り、尾鷲市街へ別れを告げる。
大曽根浦を過ぎると、再び海岸沿いに出る。
第二行野浦隧道抜け、ロックシェードをくぐりながら、海が見え隠れする。
第一行野浦隧道、白浜隧道、九鬼隧道と抜け、九鬼1212着。多気ゆき普通328Cと行き違い。
発車後すぐに、名柄隧道(2605m)へ・・・。
三木里は、元々あった行き違い設備が撤去されている。
そして間もなく、亥ヶ谷隧道(2839m)へ。
賀田到着。
海を眺めながら・・・。
次の二木島まで、曽根隧道(2933m) 通過中。
やんちゃ姫、ちょっぴりおねむモード・・・(^^)
この辺りは2500m級のトンネルが連続。紀勢本線きっての隘路で、いちばん最後に開通(1959)した
区間だ。
因みに曽根隧道は、紀勢本線内で最長トンネルでもある。
二木島を過ぎて、この区間最後の長大トンネル・・・逢神坂隧道(2534m)を抜け・・・
県内の海水浴場で、トップレベルと言われる新鹿海水浴場を見ながら・・・
斜面にちょこんと置かれただけのホーム、波田須。
大泊を過ぎれば、熊野市は目前だ・・・。
熊野市1242着。折り返し復路は、22分後に出発(笑)の、特急南紀6号。
コイツを逃すと、少々面倒な事になる・・・(苦笑)
市内観光もへったくれも有ったものではない・・・(爆)
これでイイのだ。駅弁つつきながらのんびり列車の旅・・・当初の目的は、ほぼ達成されたのだから・・・(^^;
熊野市駅前。
息付く暇もなく、特急南紀6号が入線。
自由席争奪戦?が始まるも、こちらは子連れで、瞬発力に劣る・・・。
若者ペアのスピードには勝てず、ハナ差で確保出来ず・・・(ToT)
そのまま黙っていれば良いのに、その若者達は、勝ち誇った顔でこちらを睨み・・・『早い者勝ちさ!!』
なるほど・・・。
自由席に関しては、確かにそうだろう。反論はしない。
ならば・・・
極上の居住性は、速さ以外でしか入手出来ない事を教えてあげよう・・・。
極上の居住性、ここにあり♪
次の停車駅は尾鷲。車内放送終了後すぐに車掌室へお邪魔し、乗変手続き及び精算。
そして車掌氏・・・『お客様。この1番ABCD席は、車掌割り当てとなっていますので、ご安心下さい。』
子連れに対し、暖かい御配慮、感謝感激である。
深くリクライニングするシートにご満悦のやんちゃ姫。足がオットマンに届いていないのはご愛敬・・・(^^)
リラックスして、少ししたら、先程の若者がやってきた。
飲み物を求めに、前の自由席車から来たのだ。このグリーン車デッキには、飲み物の自販機が備え付けられている。
ポカンとした面持ちで、再び私を見つめる・・・。
『フッ・・・お兄さん・・・。速さだけでは、手に負えない事もあるよね・・・』
ああ~スッキリしたぁ♪
2750円の追加出費は少し痛かったが・・・(^^;
先程の行野浦を右手に・・・。桃頭島が見える。
リラックスしながら、絶景を楽しむ列車の旅は最高だ。
尾鷲三田火力発電所の建屋。なかなかお洒落だ。
『ヤッサホ~ラエ~♪』 今にも尾鷲節が聞こえてきそうなイラスト。
紀伊長島を出ると、荷坂峠が控えている。
その昔、キハ80系にて運行されていた時代の特急南紀は、この区間はフルノッチ(全開)でも、時速30㌔程しか出ず、喘ぎながら登っていたものだ。
しかし、強大なパワーの、このキハ85系は、急勾配などものともせず、時速70㌔以上で楽に登っていく・・・。
三瀬谷ダムの峡谷を渡る。
往路の倍以上の速さだ・・・(^^)
松阪を過ぎ、伊勢平野を北上。
少し陽が傾き・・・
伊勢鉄道線に入り、玉垣運輸区の横を猛然とかすめる。
鈴鹿駅発車。この旅もいよいよ終わりかと思うと、何気に寂しさがこみ上げてくる。
減速しながら、四日市貨物駅のヤードを横目に・・・
1533、定刻に四日市到着。
やんちゃ姫が見つけた、熊野市駅前での戦利品??(^^)
長文お付き合い下さり、ありがとうございました・・・m(__)m