
前回の続きですが、
なんでフィギュアメーカーって延期延期と延期が多かったり、
試作品と違う物が製品として販売されてしまうんでしょう?
小さなレストランでさえ、30分も待たされたらイライラしますし、
お待たせしてスミマセンでしたの一言もありますよね。
しかもメニューの写真と違う感じの物だったら、苦情とか言われます。
じゃぁ、写真を実際の料理でやりましょうって事になりますよね。
でもフィギュアメーカーは遅れても平気で延期?何それ的に遅れるし、
試作品と製品が違ってもパッケージや予約の画像はずーっと試作そのままだったりする訳です。
なぜ?
なぜに、フィギュアメーカーはこんなにも延期と試作品からの劣化に悩まされるんだろう。
一つは通常の工業製品と違って、
許容範囲の差異がハッキリしてるからです。
PCや時計に電卓や服なんかは、
この形って決まってたり、結構あいまいでもOKです。
それは細かい造型でないし、デザインとして許容範囲が広いから。
フィギュアは造型は細かいわ、許容範囲(目の位置や顔の輪郭でキャラの味が変わる)が狭いわで結構ガチガチなんです。
それには中国国内の労働事情がかなり複雑に絡んでいるんです。

中国は日本と違って、仕事を点々と移るスタイルが主流です。
日本のように正社員で固定とか派遣で固定っていうスタイルではないし、
(その会社内で役に立ってるかどうかは別として)長く勤め上げる事、転職転職よりも一つの仕事をコツコツとと長く勤めて長老的な存在に美徳を感じ、
派遣の人が正社員と同じ仕事を安い給料でも我慢に我慢を重ねて、
漸く正社員になってサービス残業にも我慢して会社に忠誠を尽くすなど、
日本人は勤務の長さに重きを置きますが、中国では違います。
まず、サービス残業なんてありえない。
奴隷じゃないんだからという事で、普通に反発が起きます。
安い給料を我慢してというのもありえない。
同じような地域で他に百元でも高い給料のところがあれば、仕事初めのその日の内に退社して次へ移ります。
きつい仕事で安い給料を我慢して・・・というのはありえない。
ちょっとでもしんどいと思ったら次へと決断(諦め)も早い。
会社の為に仕事をしているなんてありえない。
家族の為に美味しいものを家族と一緒に食べ、自分や家族の欲しい物を買う為、家族がより良い生活をする為に仕事をしている。
家庭や自分の生活を犠牲にして会社で仕事をなんて人間の生活ではないという考え。
*全てあくまでも個人の感想です。

これらの仕事に対する考えが違うという事と、
5月の長期休暇と9月下旬~10月の中国の建国記念日休みと旧正月の休みが非常に大切だという事。
この年3回の長期休暇は日本人の休暇感覚(家でぼーっとしたり遊びに行ったり)と違い、
ヨーロッパ系に近い休暇の取り方です。
この休みの為に仕事してると言っても過言ではないぐらいで、
中国の工場では、この休日にやむを得ず出勤することがあった場合、
法令により通常の給与の3倍以上支払わないといけません。
この金額は、下手すれば日本のバイトの日当半分に近い金額となります。
で、この年3回の休暇が曲者なんです。

沿岸部の工場地域で働いている人の80%は他の地域から来ている人です。
ちなみに沿岸部の工場の一般的な給与は3000~3500元です。
また所得税は省や直轄市によって違うようですが、
3000元を超えるとがっぽり取られます。
日本円で40000円ぐらい、物価が1/10ですから結構高給かと。
沿岸部の物価は高いですが、それでも日本の1/5ぐらいです。
という事は物価換算で20万ぐらいはちゃんともらってる感じになります。
ですが、年3回の休暇で地元に帰ると、4万*4ヶ月で16万円、
地元の物価は非常に安いですから、日本人の感覚にすると、160万円以上!
農村部から来ている場合だと自給自足もあって、
生活にそんなに現金が必要無くもっと物価が安く1/20の物価なので半年で320万円!!
という事は、一年も仕事をすれば、地元でなんかやった方がいいやって事になります。
一年沿岸部で仕事をして、地元に戻ってその地域で仕事を探しその地域の給料でやったとしても、
全然余裕の生活が出来るんです。

という事で、中国の工場は人の流入流出が異常に激しい。
毎日100人単位で新人が来て、熟練工(熟練と言っても半年ぐらいです)が辞めて行きます。
で、年3回の長期休暇の時は全体の3割が戻って来ない。
大きい工場だと5000~7000人居ますので、1500~2100人居なくなる。
単純に3割減産ってことです。(実際には5割以上の減産のダメージ)
戻って来ないってどう言う事?と思いますが、そのまま帰省して仕事に来ない。
休暇後に戻って来るように戻って来た人用に追加特別給与も用意している工場もあります。
と言う事で、フィギュアメーカーの工場も同じく、
旧正月と建国記念日前後にはどかっと人が入れ替わる事があるってことです。
で、他の工場に移らないような対策をしていないところだと、
4ヶ月に1回品質がリセットされるので、いつまでたっても品質が向上しない。
さらに技術を持った人は給料が思ったように上昇しないと、他の工場から引き抜きや自分で売り込みななどをして移籍します。
と言う事で、人材による品質の向上は見込めないので、
機械や自動化、作業方法のマニュアル化、作業手順の見直しなどで、技術や品質向上を図るしかないんです。
人を育てるんじゃないんです、管理している人間や機械の作業効率アップ性能アップで乗り切るんです。
*まぁ、こんな事日本でも当たり前じゃんとなりますが。
と言う事で、長々と書きましたが、
延期延期はなぜ起こるのか?は、この年3回の長期休暇が原因で、
生産量ががくっと計画からズレてしまう事。
下記の試作品からの劣化にも関連しますが、
新技術や新しい機械の導入などでも延期が発生します。
詳しくは↓で。
じゃ、試作品と違うのは?と、
これは技術・品質ノウハウの蓄積が4ヶ月毎にリセットされるからです。
試作品はじっくり時間をかけて日本などで開発します。
劣化が激しいのは、金型メーカー含めてこのような状況にあると言う事。
如何に工程数を減らして作業効率良く製品が出来上がるか、
そっちに重点を置くと試作と差が激しい劣化が発生。
じゃ、工程数はそこそこで、それを補う為に細かい塗装は機械にやらせてしまおう。
組み立て工程を減らすために繋ぎ目無しにしようってやると、
費用は掛かるし、その機械がこなれるまで時間がかかります。
結局思ったように稼動するまで時間が掛かり延期にせざるをえない。
とこんな具合です。
じゃぁ、せめて予約の写真やパッケージは本来の製品版を使って欲しい。
と思いますが、メーカーさんも商売、あえて劣化した製品を載せて、
すでにガンガン造ってる大量生産品の製品の販売数、予約の数を減らす訳にはいかないのです。
数を減らせば減らすほど逆に単価が高くなるので、製品の値段もぐっと上がります。
と言う事で、画像も発売直前にしか公開しないのは、そんな理由があると思います。
でも、そこは日本のメーカーの日本の人が管理している工場だから品質は上がるはずと思いますが、
100%日本メーカーさんの工場は実際ゼロです。
*アルターさんの上海申華模型工場は別パターンなので省きます。

中国では合弁会社でないと外資系は設立できないので、
メーカーさんの工場といえども中国のメーカーと中国51:日本49の割合で工場を作るので、
中々上手くコントロールできません。管理者や上部の人間は一定数が中国人になります。
早め早めの人員補給と作業手順のマニュアル化で素人でも次の日からできる体制、
中国人との会話コミニュケーション能力、他よりもいい給与、どれかが疎かになるとアウトです。
*最近では上記+社内食堂の料理の質

と言う事で、中国での工場の内部事情がちょっと解かった所で、
延期延期の理由と、試作品との違い質の劣化は何故か?
糞長い文章でだらだらと説明しましたが、少し解ったような気がしませんか?
自分の好きなオーキッドシードさんはブログで頻繁に中国の工場へ製品の品質チェックをしに行っています。
そして、試作品の出来具合や製品の改良された所も紹介しています。
新技術導入などの機械導入も積極的に紹介しています。
この為、オーキッドシードさんは試作品からの劣化が少ないメーカーの一つだと自身を持って言えるメーカーさんです。
だから延期されてもオーキッドシードさんのフィギュアは本当に待ち遠しい。
オーキッドシードさんのフィギュア(一部紹介)
次も長くなりますが、
フィギュアの正規品じゃない物((ニセモノ)が、
ヤフオクなどで流通しているのは何故?を書きたいと思います。