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2011年11月20日 イイね!

サンバーのお勉強③

ボディ・デザインは佐々木達三で、スバル360のときのような苦労は一つもなくスムーズにデザインが決定された。フロントのデザインはスバル360の兄弟車ともいうべき愛嬌のあるものになり、フロント・バンパー部分にはナックルラインを入れて丈夫な面構えにした。力持ちに見えるデザインとなった。

スバル・サンバーは単純な箱形のクルマなので、雨樋のラインを決めれば、それだけで全体のバランスを検討することができた。フロント、ルーフ、ドア、荷台などは比較的自由にリファインが可能であったからだ。

キャビンのルーフはキャンバス・トップとした。過積載対策としてボディ自体の軽量化が必要だと考えたからである。

室田が創意工夫をしなければならなかったのが、スペアタイヤ、バッテリー、ガソリンタンクの配置であった。小さなトラックのレイアウトのなかで、きちんとおさまる場所を確保するのが大変であったし、前後の重量バランスに影響するからである。結局、スペアタイヤはフロントの助手席前に押し込み、バッテリーはエンジンルーム内部に置き、ガソリンタンクはシート下に置いた。

心配があったのは、ホイールベースがスバル360より狭まったことだった。そのため前後の重量配分がフロントに偏った。法定積載量の350Kgを積んだ状態では、フロントが若干重くなり、タイヤ空気圧の指定は前輪の方が高くなったのである。一方、空車状態ではリア・タイヤのキャンバーが極端に大きくなり、奇妙な格好になった。350Kgの積載状態では、リア・タイヤのキャンバーはゼロ近くなり、過積載では逆キャンバーになる。

1959年(昭和34年)9月下旬に最終モデルが決定され、試作第一号車が、12月25日に完成した。開発速度は実に速かった。

第一号試作車が完成した夜、百瀬と室田は早速試走に出ることにした。伊勢崎第二工場からほんの200mほど東から田園地帯が始まっていた。闇夜であり、一目を心配する必要はなかった。おおらかな時代だったのである。

運転は百瀬が担当し、室田は荷台に乗った。生まれたばかりのスバル・サンバーは、田んぼの中の農道を快調に走った。12月のからっ風は冷たかったが、試作完成の歓びで上気していた室田は乗り心地を楽しみ、冷たいはずの夜風が心地よいものに感じた。


続く。


「富士重工業 技術人間史より」
Posted at 2011/11/20 23:04:51 | コメント(0) | トラックバック(0) | クルマ
2011年11月20日 イイね!

サンバーのお勉強②

サンバーのお勉強②百瀬は、この松林の心配をありがたいと思った。だが、キャブオーバー型にしなければ広い積載スペースを確保できないことも事実であった。とにかく松林を説得しなければならないと思った百瀬は文献を漁った。ソ連のキャブオーバー型の農民車に関する安全を調査した論文には、ドライバーズ・シートが前方にあると危険の発見が早いので早期に危険回避ができると書いてあった。この論文内容を松林に伝えるとともに、スバル・サンバーのフロント外板を二重にすることを報告して、キャブオーバー型を採用する許可をもらった。この松林の意見は、スバル・サンバーの開発を続ける百瀬の脳裏にいつもこびりついていた。

スバル360と共通の設計思想をもつ軽四輪トラックとなれば、百瀬は、まず乗員二名が楽に座れる空間を確保することを最優先にして発想することにした。人間優先の設計思想である。

ドライバーがゆったりとして運転姿勢をとり、かつ楽に運転操作ができるためにペダル類をオフセットさせないためには、フロント・タイヤのホイールハウスの出っ張りを室内にもってくるわけにはいかなかった。そこでフロント・タイヤの上にシートが位置するレイアウトを考えた。フロント・サスペンションは、スバル360と同じシステムのトレーリングアームとすれば、実現可能なレイアウトだった。このキャビンのレイアウトは助手席のレッグ・スペースを大きく確保することになった。人間ひとりがもぐり込むことができるほどの空間があり、小さな荷物を置くことが可能なスペースとなったのである。また、この大きなスペースは衝突安全性向上に寄与する空間となった。

キャビンの構想が終わると、自動的に全体のシルエットがまとまった。人間が乗るスペース以外は荷台であり、それはできるだけ広く大きく有効なスペースでなければならない。リア・エンジンはヘッドを後方に向けた状態で傾けて搭載しようと検討をした。水平近くまで傾けてみたが、しかし荷台を真っ平らにすることはできなかった。シートの下にエンジンを搭載すれば荷台を低くフラットにすることが可能であったが、リアエンジン・リアドライブを選択した以上は、そのコンセプトに従って技術を深めていくのが王道である。

こうして全体のシルエットを構想してみると、スバル・サンバーの開発には、スバル360のキャリアのみならずバス・ボディ設計の経験を生かすことができると思われた。

ボディ構造や動力性能は、積載量を予想しながら構想された。積載量は法定数字で、トラックで350Kg、バンで250Kgである。だが、この数字は非現実的なものであった。過積載されることは、予想しなければならない現実だからである。積載量350Kgのトラックに1tほどの荷物が積まれることさえある。

そこでスバル・サンバーを、丈夫でねじれ剛性のあるボディ構造にするためには、中空角材の鉄フレームをボディに組み入れることにした。法定積載量の三倍弱まで荷物が積まれる可能性があるのだから、相当に丈夫な車体が必要であった。得意のフレームレス・モノコックボディを採用することは不可能だと判断したのである。

サスペンション形式はスバル360と基本的に同じタイプであったが材質変更などで大幅に強化された。トーションバーはフレームのクロスメンバーの中に入れることにした。

エンジンはトルクを太くするセッティングをほどこすことにしたが、それには限界があり、トランスミッションのギア比を低く設定する必要があった。

こうして百瀬はスバル・サンバーの初期構想をまとめると、開発スタッフに開発構想として発表し、具体的に設計コンセプトを煮詰めていく作業に入った。開発スタッフはスバル360と同じであり、エンジンは三鷹の技術部設計二課の菊池庄治たち、ボディ構造は室田公三、サスペンションは小口芳門、実験は家弓正矢がそれぞれチーフとなった。

この開発部隊は、スバル360の市場要望の対応などで忙しく、スバル・サンバーの開発設計が始動したのは1959年(昭和34年)になってからであった。すでに市場にはライバルが登場していた。愛知機械の軽四輪ピックアップのコニー、くろがね自動車のリアエンジン・リアドライブ、4ストローク・エンジン、キャブオーバー型のくろがね・ベビーであった。

スバル・サンバーの開発は、ボディが新規設計となったが、エンジン関係、駆動系、サスペンションについてはスバル360のものに改良、改造をほどこす範囲の開発にとどまった。

室田公三は、その時の開発陣の動きをこう語っている。

「スバル360に続く貨物車を機構上実績のあるリアエンジン・リアドライブにすることは当然のことで、議論の余地がありませんでした。リア・エンジンにするとエンジンルーム部分の荷台床が高くなってしまいますが、他の部分の荷台を思い切り低くすることができます。むしろ若干議論になったのは、ボディ構造についてです。スバル360と同じようなフレームレス一体構造にするか、フレーム付きにするかという点でした。これも荷台床を低くするというメリットを打ち出すために、フレームを入れようというふうに素直な結論が出てきました。荷台をモノコック式にすると、どうしても高くなってしまいますから、フレームが必要なことは明らかでした」

室田が設計したフレームは、通常のコの字断面ではなく、中空角材による箱形断面を採用していた。これはねじり剛性を十分なものにするためである。スバル360のときと同じように、室田の設計は、強度や剛性が必要な部分は入念に設計しベースをきちんと固める方法であった。


続く。


「富士重工業 技術人間史より」
Posted at 2011/11/20 22:27:43 | コメント(0) | トラックバック(0) | クルマ
2011年11月20日 イイね!

サンバーのお勉強①

1958年(昭和33年)春、スバル360を市場に送り出した伊勢崎の技術部第二設計課は、翌年には、開発コードネームK151型の設計開発に着手した。

K151型は360CCエンジンの小さな多目的トラックである。

商品名はスバル・サンバーという。

サンバー(アルファベット表記はSamberまたはSambur)は、インドに産する鹿科の動物名で、東南アジア産の鹿の中ではいちばん大きな種類で平均体長は約2mあり、川の近くに生息し、ドロ遊びが大好きなので「水鹿」のニックネームがある。そのスタイルが力強く、駿足なイメージにあふれているところから、K151型の車名に選ばれた。

百瀬はK151型開発の動機をこう語っている。

「戦後のモータリゼーションの現実はトラックの普及だと言えました。しかも、小さなトラックが急速に発達した。1954年(昭和29年)の第1回東京モーターショーは3輪トラックの展示が多かった。戦後復興から経済成長へと、商売の道具、生活の道具として必要だったのですね。ですから我々も日本の狭い道を走り回る軽トラックを開発すれば、これは安定して成長する商品になるだろうと考えたのです。スバル360の開発が終わって、すぐに軽トラックの開発を始めました」

第1回東京モーターショーが開催された時代は、軽三輪トラックが一世を風靡していた。戦前では自転車で運んでいた荷物を、戦後はバイクモーターや小型オートバイではこぶようになった。戦後復興が進んでいくと、軽三輪トラックの時代になったのである。代表的な車種は「町のヘリコプター」の宣伝で有名になったダイハツ・ミゼットであった。この軽三輪トラックの普及に目を付けたトヨタ自動車は、1954年に四輪小型トラックのSKB型トヨペット・ライトトラックを発表した。セミキャブオーバー型で995cc直列4気筒27馬力エンジンを搭載した、合理的設計の積載量1tのトラックであった。発売初期は軽三輪トラック市場に食い込むことが出来なかったが、価格値下げを行い軽三輪トラックとの価格差を解消して販売上の競争力をもった。

また販売体制を整備し、小規模運送業者との懇談会結成、市場での早朝展示、農協への巡回訪問、駅頭チラシ配りなどのきめ細かい販売政策が実施された。愛称を全国公募するコマーシャル展開で「トヨエース」のニックネームをつけるなどの努力が続けられ、1957年(昭和32年)には年間二万台を販売する大ヒット商品となった。このトヨエースのヒットに刺激されたプリンス自動車はプリンス・キャブオーバートラックを発売し、日産自動車もニッサン・キャブオールを発売してブームに拍車をかけた。小型トラックの普及により軽三輪トラックの販売台数は下降線をたどるようになった。トヨエースの登場は、日本のモータリゼーションの歴史におけるキャブオーバー型トラックの登場と言い換えてもさしつかえないほどの衝撃をあたえた。

まさにこのような時期にスバル・サンバーの開発が始まったのである。この軽四輪トラックは、時代遅れとなった軽三輪トラックの市場に狙いを定めた。

「我々も軽三輪の研究を熱心にやっていた時代がありました。軽三輪は簡単な構造で、ドアはないし、キャンバス・トップという屋根のあるスクーター的なものでしたが、動力性能は悪くなかった。道具として考えれば実用一本でよいのかもしれませんが、最大の欠点は安定性が悪すぎるという結論でした」

百瀬は、スバル・サンバーを軽四輪トラック、しかもリアエンジン・リアドライブとして企画構想を開始していた。ボディは二種類で、トラックとバンである。トラックは二人乗り、バンは四人乗りを可能として考えられた。

「乗員と積荷のスペースを確保したうえで、エンジンの位置をどこにするか。これが最大のテーマでした。我々の具体的な選択としては、シートの下に置くか、リアエンジンにするかというものです。つまりプロペラシャフトをもったリアドライブにするか、リアエンジン・リアドライブにするか、という選択でした。スバル360の開発を経験した我々としては、生産設備や生産性を考慮するとリアエンジン・リアドライブにする方がベストと考えました。スバル360は登板性能も高いですから、軽トラックとしては有利ではないかという見解もありました。そうした理由からスバル360との共通の設計思想でやろうという結論が出てきたのです」

スタイルはキャブオーバー以外にには考えられなかった。それまでの軽四輪トラックはボンネット型が主流であり、そのために荷物積載スペースが小さかったのである。そのため、新しいイメージの軽四輪トラックを作るのならキャブオーバー・スタイルしかあり得なかった。

しかし、このスタイルには松林敏夫常務から強い意見が出された。

「ボンネットがないと、衝突したときにドライバーが危険ではないか」

という心配である。


続く。


「富士重工業 技術人間史より」
Posted at 2011/11/20 20:00:38 | コメント(0) | トラックバック(0) | クルマ

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「SUBARU製最後のサンバ一なのだ👍しかもWRブルー😍ちょっとイメージチェンジ😅
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何シテル?   07/30 22:36
石川県をこよなく愛するrs30b4です。 休みになれば、どこか走ってます。 SUBARU全般とBOXER6が大好きです。 RS30は、 ...

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