
このクルマの登場は、日本ではバブルの真っ最中であったものの、直後に崩壊。また旧6シリーズからの大幅なコンセプトの変更(特に外観上)のため、更には初期モデルの細かなものから大物までのトラブル(不具合)の多さによって成功作とはならなかったBMWの8シリーズ(E31)です。
このカタログは、日本輸入開始から1年ほど経った91年のもので、12気筒の850iのみの掲載です。




このカタログは贅沢な造りでサイズも大きいのですが、最初の方のページは写真だけ。
言いたいことはたくさんあるはずですが、あくまでBMWらしくスマートな感じです。
とにかく当初は、デザイン(外装)についての評判があまり良くなかった記憶があります。
これには前モデルであるE24の6シリーズからの極端な変貌に、顧客層がついていけなかったような気も致します。
BMWからすれば、6シリーズを超えた新しいフラッグシップの創造であったのでしょうからE24からスッパリ断ち切ったデザインの採用は当然であったのでしょう。
自分は当時からダイナミックなこのデザイン、大好きでしたし、今、極希に走っている8を見るとダイナミックで迫力もあってイイなあ!と思います。


内装も特に凝ったイメージはありませんが、BMWらしいイメージを保ちながら新しさと高級GTらしい雰囲気を存分に持っているように見えます。


そして、メカ的に最大の特徴となるBMWが誇るV12エンジン。
これは、当時のスモール6(325や525などに搭載された)を2つ組み合わせたものとなり、排気量も5ℓとなっています。
先に登場したE32の7シリーズに750iで搭載されたものと同じなわけですが、当初よりDOHC化された「M8」が登場するのではないか?と噂されていたものです。
結局、M8のネーミングではありませんが850CSiというSOHCのまま排気量を5.6に上げた高性能バージョンが94年に発表されました。
また同じ年に、「ビッグ6」に変わるエンジンとして最新鋭のV8を載せた840iも登場しています。
確かにV12という偉大なエンジンの搭載はプレステージもありフラッグシップには不可欠であったと思いますが、このエンジン(というより、マネージメントを司るDME)がトラブルの元凶でもあったわけで・・・・・。
個人的にはこのV12に火が入る、セルモーターを回した時の音が堪らなく好きです!!

長く続いたセミトレから、マルチリンク、BMWが言うところの「インテグラル・リアアクスル」。
ここも、かなりウリな部分であるとは思うのですが、この2ページだけ、とサラッと流します(笑)
ライバル、メルセデスへの対抗ももちろんですがこの8シリーズの開発時期の頃(R31がデビューした頃)BMWが日産のスカイライン「HICAS」を買って実験してる、という噂をよく聞きましたが、これは本当だったのでしょう。
4輪操舵というものを、日本車がどう考えてるか?を調べる意味があったように感じます。
BMWとしては、4輪操舵という言葉に付きまとう後輪の動くことが焦点、といったことでなく、あくまで文字通り「4輪」がトータルでどういう動きを最適に持っていくか?の研究を続けていたのでしょう。

今となっては「普通」の4速オートマチック。
この91年頃からでしょうか、3シリーズや5シリーズの1部グレードに日本のJATCO製の5速ATが搭載されて話題にもなりましたね。

メカニズム、機能面の説明を誌面に載せたら膨大な説明書のようになるはずの様々な新機軸を搭載している8シリーズですがご覧の通り、カタログ上ではあくまでも短い文章でスマートに(笑)
スポーツカーではないのだから、「汗臭いのはNG」ということでしょうか。

このシート一体型「インテグラル・シートベルトシステム」は、構造などに違いはあるものの我がR129SLと同じような考えの安全装備。
登場時期もほぼ同じなので、偶然、似たクラスで似た事をライバル同士で開発していたということになりますか。

人間工学なる言葉は、この当時ここ日本でもよく聞かれたものです。
確かにこの頃までのドイツ車は、この面でも他の追随を許していなかったと思います。
この後は、多機能になるのと同時に段々と走行中に「目を離さず操作」がしづらくなる暗黒の時代、と感じるのは当方がオッサンのせいだからでしょうか(笑)

右ページの空白面がスゴいwww

歴史を「本当に」大切にするメーカーならでは。
機能面の紹介はあっさりしていても、メーカーの成り立ち、C.Iマークの由来などは、キッチリ説明しますw


モノグレードゆえに、スペック、装備の欄もいたってシンプル。
全長も当時の5シリーズとほぼ同じ(ちょっと8の方が長い)という立派なサイズでありながらリアシートは、極小。
もちろん贅沢なGTであるのだから、それで充分なのですがそういう贅沢さが今ひとつ理解されなかったようにも思えます。
ライバル(直接のライバルとは言えないかもしれませんが)メルセデスのR129は、全長もグッと短くコンパクトでもちろん実質2シーターではあるのですが、オープンカーという付加価値(?)のためか人気があったのとは対照的です。
そのR129に乗っている自分ですが、この8シリーズは本当に良い車であると思います。
内装なども1000万円級のクルマとしては、クールすぎて華がない、とも一般的には思われたようですが、その「なんでもなさ」が却って本物感を醸し出しているような気すらします。
あー欲しいなあ!!(←出た!欲しがり魔w)

日本発売時、放映された同じV12を搭載した750iとの「共演」CMです。
ブログ一覧 | 日記
Posted at
2014/12/12 21:22:22