パンズ・ラビリンス Pan's Labyrinth

2006年（第79回）アカデミー賞、撮影賞美術賞、メイクアップ賞受賞の、ギレルモ・デル・トロによる
メキシコ・スペイン・アメリカ合作映画。PG-12



手のひらに目がある怪奇な生き物が出てくるシーンしか知らず、こんなストーリーとは・・・。

「1944年のスペイン。内戦終結後もフランコ政権に反発する人々がゲリラ闘争を繰り広げる。
父を亡くした少女オフェリアは、臨月の母カルメンと共にこの山奥へとやって来る。
この地でゲリラの鎮圧にあたるビダル将軍と母が再婚したために。ただただ冷酷で残忍な義父。
その夜、彼女は昆虫の姿をした不思議な妖精に導かれ、謎めいた迷宮へと足を踏み入れる。
そこでオフェリアを出迎えたパン＜牧神＞は、彼女が地底の魔法の国のプリンセスの生まれ変わりで、満月の夜までに３つの試練を乗り越えれば、魔法の国に帰ることが出来ると告げる。
オフェリアはその言葉を信じて、与えられた３つの試練に立ち向かう・・・」



現実の冷酷で残忍な義父の怖さと空想？の世界の恐ろしげな妖怪？。

少女が森に一人足を踏み入れると道祖神（石像）が出てくるシーンで、アニメ「千と千尋の神隠し」
を連想したら、やっぱり・・・。

監督が日本のアニメや怪獣映画の大ファンで、『千と千尋の神隠し』に影響を受けて作った。
「一人の少女がある目的のために試練や困難を乗り越えていく」という点は『千と千尋の神隠し』と共通していますね。さらに『パンズ・ラビリンス』をよく見ていると、冒頭の山道のシーンや１番目の試練のシーンなど、明らかに『千と千尋の神隠し』にオマージュを捧げている場面も出てきます。」
https://www.cinemawith-alc.com/2015/09/fauno.htmlより引用

・・でも、ずっと「千と千尋の神隠し」より怖い「パンズ・ラビリンス 」。

以下ネタバレ



手のひらに目がある怪奇な生き物、ペイルマンという妖怪は、ゴヤ作『我が子を食らうサトゥルヌス』をモチーフにしたとか、でも自分には『千と千尋の神隠し』の「カオナシ」だと思った。



ペイルマンという妖怪登場の際、壁面に描かれた絵は、ペイルマンだが、それは実は、ローマ神話に登場するサトゥルヌスになぞらえたもの。
サトゥルヌスは、時間の神様だそうで、オフェリアが、地下の穴倉に入るとき、置く砂時計の砂が刻々と落ちていくところや、大佐が懐中時計を何度も見るシーンは、それを匂わせているのだろうか。

サトゥルヌス（ギリシア神話のクロノスに相当）が将来、自分の子に殺されるという予言に恐れを抱き5人の子を次々に呑み込んでいったという伝承・・・ラストで大佐が連れ子のオフィリアを[撃ち殺す」、これのことだったか。だが、実子は、ゲリラ兵たちが父親のことを隠して生かして、こういう。あんたの息子には、あんたの名さえ教えない！」・・・でも、凶暴な血は受け継がれていく？


この映画で、一番ギョっとしたシーンは、大佐が切り裂かれた口を自分で縫うシーン。
映画で赤い血がいたるところで出てくる、妖精がペイルマンという妖怪に食べられたときの口の周り、母親が下血するとき、銃で撃たれるとき、なのに、実際、口を切り裂かれたら出血がひどいのに、ぜんぜん出ない、しばらくたってから縫うのに、やはり血が出ない、おぞましい光景だけど、血が出ないのは、縫うところを見せる演出だろう。