2015年03月18日
(2015.3.18ジャイロセンサーは角加速度で無く角速度センサーとの御指摘をありがとうございました。少し勉強し直して、大幅に書き直しました。)
新型CX-5の以前から、マツダコネクト(マツコネ)のナビ機能はハードウェアが2Dジャイロだからダメなんだという話がそこかしこで出ています。ジャイロが載っていないとまで極言する人もいます。
2D、3Dジャイロって何でしょう?これらはGPS信号以外に車の位置情報を知るために使われる補正機能ですが、GPSは信号の獲得に時間がかかるのと精度がやや粗いので、むしろジャイロが優先的に使われているという話もあります。
では、ジャイロとは? これは角速度を測定するセンサーで、2軸の製品は2方向の角速度、3軸は3方向の角速度を把握できます。角速度というのは角度の時間あたり変化量です。例えば、1軸ジャイロは以前からカーナビに搭載されて水平回転の角速度を測定し、これを積分すると車の方角がわかります。この情報はGPSでは得られないためジャイロが必要なのです。地磁気センサー=コンパスは金属製の車、街中の環境では地磁気センサーは不正確ですので、代わりにジャイロ信号の積分、それとGPSから車の進行方向を得て、車の向きをより正確に判断する、というのが従来からのカーナビの役割です。(積分とは、変化量を次々足していく計算です。)
車の方角の計算なら、ジャイロは水平回転方向の1軸だけで足ります。他の軸としては左右に傾くロール、前後の傾斜をみるピッチがあります。左右の傾き情報は車の制御にとっては大切で車載コンピューターは検知するとしても、ナビには要らない情報です。前後の傾斜がわかると高架に上がったのか降りたのかがわかるのでこれを2軸目のジャイロで把握しても良いし、代わりに上下方向の加速度センサーあるいは傾斜角のセンサーでも計算可能なはずです。
それなのに、何で3軸ジャイロが載っているの?と感じた貴方は鋭いです。広告を見ると3軸じゃ無く、3Dジャイロと書かれています。3軸ジャイロの機能は一点を中心に自分がどう回ったかだけなので、奥行きも高さもありません。3軸ジャイロを載せる意味が無いのため、ナビには使われていないのです。3軸ジャイロセンサーチップ自体は、最近はMEMSという技術で小型化できたのでスマホに載りゲームに使われていたりします。しかし、これを振動の多い自動車に載せるとなると、耐久性が問題になります。普及型のジャイロセンサーはそれ自体が振動方式なので、外部の振動に弱いのです。しかもナビにとってロールという3軸目は必要無いわけです。
では、宣伝されている3Dジャイロとは何でしょう。
広告を見直すと、ケンウッドのMDV-737HUDで解説されている3Dジャイロセンサーは2Dジャイロ+Gセンサーと書かれていて、ジャイロとしては2Dでした。Gセンサーは名前から言えば、加速度センサーまたは傾斜計だと思われます。2軸ジャイロでなく2Dなところも注意です。http://kakaku.com/article/pr/12/03_mdv-737dt/p1.html
同社のMDV-Z702Wは高測3Dジャイロ3と書かれており、「新たな3Dセンサーを採用し、ジャイロセンサー、加速度センサーのより高分解能なデータを取得」と書かれているので、2D+加速度センサーなのだろうと思われます。http://www2.jvckenwood.com/products/carnavi/mdv_z702w_z702/navi/gyro.html
パイオニアは2Dジャイロセンサーと3軸加速度センサーの組み合わせです。ジャイロセンサーチップ2つと3軸加速度センサーチップ1つが組み合わされて5種類の情報を処理するようです。そういう目で見ると、ケンウッドの方にGセンサーもまた、必ずしも1軸の加速度センサーではなく3軸加速度センサーかもしれません。http://pioneer.jp/carrozzeria/portablenavi/avic_mp33/navigation/position.html
以上より、ケンウッド、パイオニアは2Dジャイロ+αを3Dジャイロと呼ぶようです。
その一方で、私の初期型CX-5のパイオニアc9p7 v6 650の説明書を見ると、3Dハイブリッドセンサー内蔵だそうです。その中身は
>内蔵の 3Dハイブリッドセンサーは、走った距離を車の車速パルスから、曲がった方向を振動ジャイロセンサーで、路面の傾斜を傾斜計(Gセンサー)で 、それぞれ検出して、現在地を割り出しています。
つまり、ジャイロは方向=水平回転だけの1軸のセンサーで、高速に乗った降りたは傾斜計(Gセンサー)という別なセンサーの働きです。傾斜と車速がわかれば、3角関数で上下の位置がわかり、これで高架を認識するわけです。車の位置は1軸ジャイロと車速がわかれば割り出せますね。すなわち、1軸ジャイロと傾斜計(Gセンサー)、車速信号の3つの情報があれば、上下の情報を含む車の位置がわかることになります。それをパイオニアc9p7 v6 650では、3Dハイブリッドセンサー搭載とうたうわけです。
3Dジャイロ、3Dハイブリッドセンサー、、3Dの意味がわからなくなりませんか。
ではマツコネの2Dとは、、詳細は明らかになっていません。しかし、少なくとも水平回転検知はジャイロでしょうし、車速のほか車体の傾斜センサーを利用しているという話があります。それなら明らかに高架の上下が把握できることでしょう。
ついでに言えば車速信号がとれないようなナビ(スマホでもポータブルでも)では、情報が1つ足りない分をナビ並みに補完するために前後方向の加速度センサーが必要でしょう。車速信号を省いた方が手軽に設置できて売れるので、加速度センサーを1つ増やして3Dジャイロをうたうのだと思われます。逆に、車から車速と傾斜情報が得られる場合は、1軸センサーで充分なナビゲーションが出来るでしょう。これがある意味、ナビと車が一体化しているメリットと言えます。
結論ですが、ここまで勉強しても、3Dジャイロという造語に載せられて、3Dじゃないから時代遅れだと言えるでしょうか。実際に高低差をキャッチできている現在のマツコネを、3Dじゃないから高低差がわからないはず、ハードを交換しない限り直らないと決めつけて良いものでしょうか。マツコネでは情報がおかしい場合、3Dジャイロじゃないからなのか、高低地図やGPS信号との照合にあるのかは、ユーザーにはわからないと思います。ソフトの設計をさぼって高低差を割り出していなかったというならまずいでしょうが、ナビの動作を見る限りそれはありません。
素人の私がエンジニアのようなことを言うのは僭越ですが、センサーからの信号処理はハードウェアの処理能力とソフトウェアに拠ります。ジャイロセンサーは角速度センサーですから、これを積分しないと方角情報にたどり着けません。加速度センサーも積分しないと上下の位置情報になりません。つまり、ナビに入ってくるセンサーの信号をモニターして「常に」計算に回さないといけないわけで、計算機は大忙しです。ところがカーナビには音楽だ、映像だ、フルセグだ、検索だ、ハンズフリーだ、音声コマンドだ、車載コンピュータ群とのCAN通信だ、ナビ画面表示だとリアルタイムでしなければならない仕事がたくさんありますし、その反面、60Wのノートパソコンほどの電力消費も難しい省電力の問題があります。定価15〜20万程度なのにGPSもジャイロも音声認識も載せて頑張っているナビが、高速道路の上か下かで間違ったって、目くじらを立てる事では無いと思いますし、そのまま走るだけで道を再認識して、ドライバーについて来られたら、よしよし良い子だで良いんじゃないかと、私は思っています。
余談ですが、GPSは上空の衛星の信号だから、高架の上か下かはわからないと思い込んでいる方に、GPSは電波の到達する遅延を測定するシステムなので、左右の位置精度の半分くらいの精度で、上下も測定できます。というより、上下の情報によっては、位置情報が狂ってしまいます。この方のブログがわかりやすいです。http://www.yamareco.com/modules/diary/57094-detail-57570
逆に言えば、ナビが高さの情報を持つことで初めてGPSが水平方向の正確な位置情報を示すと言えます。
Posted at 2015/03/18 04:47:13 | |
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