2006年01月28日
さて、いよいよこのオペラも最終幕、第4幕です。
第3幕のアンフェール門での出来事から数ヶ月後、もとの屋根裏部屋が舞台です。
再び貧乏暮らしを始めた4人。
ロドルフォとマルチェッロは仕事をしていますが、
思い出されるのはかつての恋人のことばかり。
ロドルフォはムゼッタが、マルチェッロはミミがそれぞれ良い暮らしをしているのを
見たと言い、それを喜ぶふりをしますが、仕事に身が入るわけもなく、
ペンや絵筆に八つ当たりしながらも、昔を思い出しています。
<2重唱“ミミ、君はもう帰らない” O Mimi tu piu non torni>
(ロ)おおミミ、君はもう帰ってこない。
かわいい手、かぐわしい髪。
ああ、儚い僕の青春よ。
(マ)絵筆が勝手に色を混ぜてしまう。
空を、大地を、冬を、春を描きたいのに
絵筆は黒い瞳や生意気な唇を描いてしまう。
またムゼッタを描いてしまうのだ。
(ロ)枕の下にそっと置いた帽子よ。
おまえは僕達の幸せのすべてを知っている。
(マ)ムゼッタは楽しんでいると言うのに
僕の情けない心は、彼女を求めて待つのだ。
ショナールとコッリーネが、パンとニシンの塩漬けを持って帰ってきます。
4人は貴族の食卓ごっこや、舞踏会ごっこ、決闘ごっこをしてはしゃいでいます。
そこへムゼッタが駆け込んできます。
「ミミが来てるの、そこまで一緒に。ひどく具合が悪くて、
階段を上がっていて、もう立っていられなくなってるの。」
ロドルフォとマルチェッロはミミを連れに部屋を出て行き、
ショナールとコッリーネはベッドの用意をします。
ミミとロドルフォの再会。
ロドルフォはミミをベッドに連れて行きます。
ミミ「一緒にいてもいい?」
ロドルフォ「ああ、ずっと、ずっとだよ。」
ムゼッタは、マルチェッロにミミを連れてきた経緯を話します。
「ミミが子爵の息子のところから逃げ出して死にそうだって、人づてに聞いたの。
どこにいるのかと捜して、捜して・・・・・それでやっと見つけたの。
身体を引きずるようにして通りを歩いていたわ。私に言うのよ。
“もうだめ、死ぬの。私には分かる。あの人の傍で死にたい。連れて行ってくれる?”」
ミミは少し落ち着いて、楽しく過ごしたこの部屋を懐かしそうに見渡します。
ムゼッタは、何か飲み物はないかと尋ねますが、何もありません。
「何もないの? コーヒーも? ワインも?」
ミミの命が長くないのは誰の目にも明らか。
ミミは、手が冷たい、マフがあれば良いのにと言いながらも、久し振りに会う
ショナール、コッリーネ、マルチェッロに挨拶し、皆は笑顔でミミを迎えます。
ミミはマルチェッロを傍に呼び、言います。
「よく聞いてね。ムゼッタはとても良い人よ。」
ムゼッタは部屋に何もないと聞いて自分のはめているイヤリングを外し、
マルチェッロに言います。
「これを売って気付け薬を買って来て。お医者さんも呼んでね。
それから、聞いて。きっとこれがミミの最後の望みなのよ、かわいそうに。
私はマフを取って来るから、一緒に来て。」
コッリーネもミミの為に何かしようと、外套を売ることにします。
<コッリーネのアリア“古い外套よ” Vecchia zimarra>
古い外套よ、聞くがいい。
我は地に留まるが、汝は今、
聖なる山へと登らねばならん。
わが感謝を受けよ。
汝はその擦り切れた背中を
富にも権力にも
決して曲げはしなかった。
静かな洞窟のようなそのポケットには
哲学者や詩人達が訪れた。
楽しき日々の過ぎ去りし今、
汝に別れを告げよう。
さらば、わが忠実なる友よ。
さらば。
外套を手に部屋を出ようとした時に、ショナールに声をかけます。
「二人きりにしてやろうよ。」
ショナールは部屋を出る口実に、水差しを持っていきます。
二人きりになったミミとロドルフォは、出会った日のことを懐かしく語り合います。
ろうそくの火が消えてしまったことや鍵を失くしたこと。
ミミは、ロドルフォが見つけた鍵を隠してしまったことも知っていました。
それに対するロドルフォの言い訳は「運命に手を貸しただけさ。」
突然ミミは発作を起こしてしまいます。
慌てたロドルフォの声に、ショナールが飛び込んできます。
しばらくして発作の治まったミミが休んでいるところへ、
ムゼッタとマルチェッロが気付け薬とマフを持って帰ってきます。
ムゼッタがマフを渡すと、ミミはとても喜んでロドルフォに聞きます。
「これはあなたからのプレゼントなの?」
ロドルフォが口を開く前に、ムゼッタがすかさず「そうよ。」と答えます。
ミミは傍らで泣いているロドルフォに言います。
「ありがとう、こんな高価いものを。どうして泣いてるの?
私、具合がいいのよ。手が暖かい・・・・・眠るわね。」
こう言ってミミは目を閉じます。
そして、そのまま二度と目覚めることはありません。
ロドルフォはミミが眠っているものと思い、安心してマルチェッロに
医者が来るかどうか聞きます。
ムゼッタは祈ります。
「マリア様、哀れな娘にお恵みを。 どうか死なずに済むように。
私はお恵みをいただける身ではありませんが、ミミは天使のような娘です。」
この間にもロドルフォはミミの様子を何度も見に行きますが、
眠っていると信じていて、気がつきません。
祈るムゼッタにロドルフォは「僕はまだ望みを持っている。そんなに悪くみえるかい?」
ミミが息絶えていることに最初に気付いたのはショナール。
マルチェッロに言います。
「息がない。」
マルチェッロもベッドに近づきますが、それを確かめてすぐに離れます。
二人とも、望みを持っているロドルフォにかける言葉がありません。
そこへ、外套を売ったお金を持ってコッリーネが帰ってきます。
「様子はどうだ?」
そう聞くコッリーネにロドルフォは答えます。「こんなに落ち着いているよ。」
しかし、マルチェッロとショナールのただならぬ態度に気付き、
「どうしてそんなに僕を見るんだ? どういうことだ?」と問い詰めます。
マルチェッロはこらえきれなくなって叫びます。
「しっかりするんだ !!」
すべてを悟ったロドルフォは、ミミに駆け寄り、名前を呼び続けます。
二度と返事をすることのないミミに向かって、何度も何度も・・・・・。
ここで舞台は暗転。 第4幕の終わりです。
次回は番外編として、原作や実際のオペラの舞台について書いてみたいと思います。
参考資料
名作オペラブックス6『ボエーム』(音楽之友社)
オペラ・アリア 発音と解釈(音楽之友社)
スタンダード・オペラ鑑賞ブック イタリア・オペラ(上)(音楽之友社)
グスタフ・クーンのホールオペラ『ラ・ボエーム』(NHK)
Posted at 2006/01/28 14:42:32 | |
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