
エンジンブローしたKSR110の修理、
ここと
ここの続きです。
今回は、腰下の組み付けを行います。
大きな作業の流れとしては、「クランクシャフト」の圧入、「トランスミッション」の組み付け、「シフト外部機構」の組み付け、「クラッチ」「フライホイール」の組み付けとなります。
腰下は、機構が複雑で組み立ての中でも一番気を使う作業となります。
クランクケースは一度組んだら気軽にバラせるものではないので…。
モンキーの時もそうでしたが、腰下組み立ては特に慎重に行う必要があります。
やはり、そんな時に強い見方はこれ…

整備書です。このバイクの前ユーザーであったのでいじるために新車購入時これも買ってました。
各部品の「摩耗限界」や「締め付けトルク」「組み付け順番」も細かに書いてあるので手元にあると心強いです。
特にクランクケースへのボルトの締め付けは相手がアルミなのでオーバートルクでボルト締付けを行うと簡単にタップがダメになります。
トルク管理は必須です。
再組み付け時に必要な純正部品は最低限買っておきました…。

KSRのクランクケースのガスケットは紙でなく液体ガスケットを使用するので「
液体ガスケット」。
オイルパイプのバンジョーボルトについてる「
銅ワッシャ」。
トランスミッションのアウトプットシャフトの「
オイルシール」。
シフトシャフトの「
オイルシール」。
バラしたときに右クランクケースのアウトプットシャフトベアリングを回してみるとコリコリ感があったのでそこの「
ベアリング」。
カワサキホームページの純正パーツページはとても充実しておりこのような細かな部品もすぐに検索することができ注文もできます。とても優秀です。
まず右クランクケースのトランスミッションのアウトプットシャフトを支えるコリコリ感のある
ベアリング交換をします。

本当はここでも「ベアリングプーラー」などの特工(特殊工具)なるものでベアリングを抜き差しするのが本当なのですが、持っていません…。
クランクケースに入っているベアリングは外輪支持なので外輪に力を加え抜き差しを行わなければなりません。
今回は、ソケットレンチの「ソケット」を使って抜き差しを行いました。
手元にあった24mmのソケットが外輪にぴったりで、ソケットを外輪にあわせプラハンでたたき抜き差しします。軽い力で抜けたり挿入できると思います。強い力でたたくとクランクケースにキズが入ったりカジってしまうので軽い力でトントンとまっすぐと地道に…。
今回は、新品の「
クランクシャフト」に交換します。

前回の作業でクランクケースから古いクランクシャフトは抜いていますので新品のクランクAssyをクランクケースに挿入してやります。
このエンジンはモンキーと違い、クランクシャフトベアリングとクランクケースはインローで圧入されているので簡単には挿入できません。クランクシャフトを打撃するのは厳禁だし、無理やり入れるとキズ・かじりが発生してしまいます。
サービスマニュアルには「プレスを使って…」とサラッと書いてありますが、そんなものはありません。
今回やったやり方は、まずクランクケースをストーブ前で暖めてやりました。
一方のクランクシャフトはこの1月の寒空に放置し冷やしています。

こうすることで部品間の温度差でクランクケースは「膨張」となり、クランクシャフトのベアリングは「収縮」となります、クリアランスを増やして圧入させるやり方です。
部品間の膨張率を利用してクリアランスを確保し圧入する工業用語では「焼きばめ」って呼ばれています。
作業時は雪が降っていたんでクランクシャフトはキンキンに冷えて収縮してると思う。
クランクケース側は、ストーブの熱なんでほとんど膨張してないと思う…。
結局は「焼きばめ」もどきです。気持ちの問題…w
以上で準備した「クランクシャフト」と「クランクケース」を「クランクシャフトインストーラー」という特工を使用して挿入してやります。

純正のKSRは遠心クラッチで1次側の遠心クラッチがクランクシャフトに直付けしてあるためにシャフトが妙に長いです…。持っていた「クランクシャフトインストーラー」では長さが足らなかったため、ホームセンターで買った塩ビのパイプのジョイントを下にかませて使用しました。
部品をセットしセンターのボルトを締め付けるとジワジワとクランクケースにシャフトが入っていってくれます。そんなに力は要らないはずです。
入りました…。
次は、「
ミッション」を組んでいきます。
今回組むミッションは、「タケガワ 5速クロスミッション」です。

純正のKSRは「アップ4速」のギアパターンとなっています。
いろんなバイク乗っていていきなりこれに乗ると戸惑うんですよね。
今回のこのキットをつけると「ダウン1速・アップ4速」の5速となり普通のバイクのギアパターンとなります。
このキットは単純に1速ギアが増えるのでクランクケースにギア逃がしが必要になってきます。それは
前回のバラシで加工済です。
キットの説明書とサービスマニュアルを照らせあわしながら組んでいきます。
子部品も結構あるのでここは慎重に…。
この先は、クランクケースを閉めるので忘れ物はないか最終チェックを行い、左クランクケースを閉めてやります。
クランクケースのあわせ面は紙ガスケットでなく「
液体ガスケット」の仕様となっています。
組み合わせ面の洗浄し脱脂して液体ガスケットを塗布してやります。

ここは、サービスマニュアル通りに左クランクケースをプラハンでたたきクランクケースを合わせてやります。
クランクケースの組み付けボルトはサービスマニュアルでは「締付け順番」「締付けトルク」「ネジロック剤」の塗布ボルトなど事細かに記載されているので間違いなく確実に締めていきます。
組み合わせ後、クランクシャフト・トランスミッションのドライブシャフト・アプトプットシャフトがスムーズに回転するか確認します。
多分ポン付けで組むと左右のケースのセンターがあっておらず、クランクシャフトは回転が渋くなっていると思うので写真の矢印の部分をプラハンでたたくと馴染みが出てケースの芯だしが行え、クランクシャフトがスムーズに回るようになると思います。
あとは「
キックスターター」「
シフト外部機構」をマニュアル通りに組んでやります。

組み終わると、シフトペダルを仮組みしてギアがシフトされるか確認します。
ちゃんとダウン1・アップ4のシフトがされていることを確認できました。
クランクケースのシリンダスタッドボルトの取り付けタップがあまり良くなかったのでリタップしておきました。
左側に「
カムチェーン」とテンショナーガイド諸々を組んで、「
フライホイール」を取り付けて…。
右側は「
オイルポンプ」「
ドリブンギア」「
クラッチ」を取り付けて…。

このエンジンは、新車購入時に1次側クラッチ(遠心クラッチ)は取っ払ってレバー式油圧クラッチに変えています。
なので、クランクに重量物のクラッチが付いていません。これによってレスポンスは良くなったけど、下のトルクがスカスカになる傾向にあります。
キャブのスロー系でごまかせる範囲ですけど…。
これで一応「腰下」完成です♪
構造は何回もバラシを行っている、モンキーやカブなどの「ホンダ横型」とほぼ同じですが、ちょっとKSRの方が難易度が高いです(特工使用箇所が多い)。
だけど細かい部品のつくりもしっかりしている。ベースエンジンとしてはやはりいい素材。
所詮モンキーは50ccですからね〜。