2020年08月23日
VIDEO OPTIONなど動画内容からGRヤリスを考える - ①
引き続いてVIDEO OPTION 動画など出回ってる内容を元に
GRヤリスのエンジンについて考えていきたいと思います。
かなりマニアックな話になるので、暇だから見てやるかという方だけどうぞ(汗
もしくは納車まで自分の車がどんな車なのか、どんな風に弄れるか考えたい方で・・・ちょっと勉強してみるのも良いかも?と思う方は見てやって下さい。(間違ってる部分もあるかもしれませんけどネ)
■ ローラーロッカーアームの採用
① エボⅠ - Ⅸまでに搭載されたエンジンである [ 4G63 ] と同様に
ローラーロッカーアームを採用している。
始めにロッカーアームとは、カムシャフトのカム山の形状に沿ってバルプを押すための部品です。もちろんロッカーアーム自体を用いない直打ち式(むしろ直打ち式が主流と言えました)もあります。部品増加になる分だけコストも増え、ロッカーアーム自体が及ぼすメリット・デメリットがあります。
高出力のエンジンを作る際にキモになってくるのが、カムシャフトのカム山形状とリフト量(カムプロフィール)です。NAだろうがTBだろうがSCだろうが一緒です。強いて言えばNAエンジン車では過給機を搭載していない為、大幅な出力向上には特に大事なのが、カムシャフトのカムプロフィールになります。
カムシャフトを交換(カムプロフィールを変更)することで、エンジンの(正確にはシリンダー内の)吸排気のタイミングが変わり・・・エンジンが持っていたキャラクターが大幅に変わるためです。純正状態では高回転時の最高出力よりも下道を含めた日常の使いやすさ・・・低回転重視のトルクが重視されますが、カムプロフィールを変える事で競技走行時(高回転重視)の最高出力・トルク向上を重視したエンジンに変える事が出来ます。(もちろん、可能なら現車合わせでのECUマップの書き換えなどが必須です)
雑談ですが社外品のカムシャフトを交換して高出力化するというのは、割とオーソドックスな方法です。純正で高出力が売りな『皆大好きホンダのVTEC』は、カムシャフトのプロフィールを低回転・高回転で切り替える事で実現しています。
当然ホンダだけではなく、各社で似たような構造を採用しています。トヨタのVVTi、スバルのAVCS、三菱のMIVEC、日立のVTC、マツダのS-VTなど詳細は違いますが似たような事はやってますね。(何か画期的な良い構造を作れば、他社が解析して真似をするのはいつの時代も一緒です)
このカムプロフィールを活かすための部品が、ロッカーアームとなります。
ロッカーアームを用いる事のメリットは、カムシャフトへの抵抗(負荷)が少なくなる点にあります。直打ち式ではエンジンオイルなどが潤滑させていますが、バルプスプリング自体の反力をカムシャフト自体で受けてしまうためにカムシャフト自体の回転抵抗となってしまいます。
もう一つは個人的にはこちらが最大のメリットだと思うのですが、直打ち式ではカムシャフトのカム山自体が直接リフト量に関わってくるので限界があるのに対して、てこの原理を用いるためにカムシャフトのカム山高さに合わせたバルブの動作量(リフト量)を直打ち式よりも増やすことが出来ます。
また、カムプロフィール設計の自由度としても、ハイカムのような形状とせずにリフト量を稼げることからカム本体の回転慣性モーメントにおいても有利に働きます。形状面に関しても、凹面形状を可能とするのは最大のメリットと言えるでしょう。
デメリットとしては、ロッカーアーム自体を加える必要があるため、部品点数が増える上にエンジンの設計に制約を受けてしまいます。大きさに関してもシリンダーヘッド部が大きくなってしまうためエンジンルームのレイアウトに影響が出てしまいます。
上記に挙げたエンジンの設計部分に関して追記すると、ロッカーアーム自体が動作する事で慣性が働き、下手な設計をすると高回転時の抵抗となる可能性があります。・・・もっとも抵抗となるのは昔の話で、様々な研究や開発が行われた結果として、極端な例を挙げると高出力のエンジンを必要とするF1のエンジンにはスイングアーム式のロッカーアームが採用されています。
エボⅠ - Ⅸ に使用されたエンジン [ 4G63 ] にも採用されていたローラーロッカーアームと言うのは、分類上ではロッカーアームのシーソー型・スイングアーム型共にあります。所謂、てこの原理での [ 力点 ] 部分にベアリングローラーを内蔵させる事で、ロッカーアームとカム山間の摩擦抵抗を最小限に減らすタイプです。
昨今では、低粘度のオイルを使用した車種が主流となってきている為、ローラーロッカーアームのメリットが大きくなってきており、今後も採用例が増えていくという。
ローラーロッカータイプを使用している車種は、低燃費向けにも使用され始めた事もあり増えているようですが・・・むしろ燃費の良さは出力向上にも繋がります。バイクの世界でも実はロッカーアームの採用が増えてきており、スイングアーム型のフィンガーフォロワータイプがスズキのGSX-R1000Rなどに採用されるなどの例もありますね。
■ バルプスプリングにテーパースプリングを採用
こちらに関しては、正直なところ僕だけではちょっと良く分かりません・・・。カットモデルからGフォースの田澤さんが指摘したようにバルプスプリングにテーパースプリングが採用されていました。テーパースプリングのメリットとしては、コイルスプリングと比べてストローク量(リフト量)を稼げるところにありますが・・・。
バルプ自体のストロークを確保する意味は・・・?
高回転型のエンジンに使われるダブルスプリングでもなく、サージング対策の不等ピッチスプリングでもない。動画中では良く分からなかったけれど・・・もしかしたら不等ピッチのテーパースプリングなのかもしれないけれど、動画中では良く分からない。
仮に、不等ピッチのテーパースプリングだったと仮定した場合、必要とする出力特性を得るためのストロークが必要となり、不等ピッチの特性によって低~高回転までを1つでカバーするスプリングを作ろうとした・・・とか??
ダブルスプリングと同じ効果を1つのスプリングで済ませられれば、ダブルスプリングのように2つも要らなくなって1気筒で4ヵ所 数 g の軽量化になる(全部で12ヵ所の軽量化)・・・けど、そこまでは考えて無さそうな気がする。
※ こっそり追記
バルプのストローク量を増やすメリットですが、カムシャフトのリフト量を増やすのと同じ効果があります。バルプがストロークした距離が増えれば、単純にシリンダーの吸排気ポートが開いている時間が増えるからです。もちろん、やり過ぎるのは良くないので吸排気のバランス次第なんですが、ここで重要になってくるのは吸気側と排気側が共に開いている状態で、オーバーラップと言いますが・・・このオーバーラップ量の匙加減が重要なのです。
時間にしてしまえば刹那とも言えるような時間ですが、ハイカムと言われるパーツはリフト量などのカムプロフィールを変えて、オーバーラップ量を純正と比べて増やしています。純正のカムシャフトで、ハイカム並みのオーバーラップ量を得るためにストローク量を増やして、疑似的にハイカムを入れたようなフィーリングにしているのではないか?と思ったんです。
ただ、書いておいてアレなんですが、流石に飛躍し過ぎというか純正でそこまでやらんだろうと思って書かなかったんですけれど。あにさんから高回転時における出力向上に寄与するんじゃないかとコメント頂きまして『・・・やっぱりそうなのかな?』と思ったので、やっぱりこっそり追記した次第です(笑
ただ、あくまでも『不等ピッチのテーパースプリング1つだけ』であればの話なので、僕の想像の域を出ません。また、不等ピッチでは初期の入力から次第にバネの特性が変化しますので・・・その辺りを含めて考えると初期の低フリクション→高回転時での戻りの初速向上なのかな?というレベルです。ストロークが増えた分だけオーバーラップ量は増えますが、単純にバルプも通常より更に早く戻らねばなりません。ピストンはクランクシャフトの回転で往復してくれますが、バルプはスプリングの力で戻る訳です。
この辺りは、その内にトヨタの開発さんとかがプロジェクトX的な
ドキュメンタリー番組などで解説してくれると凄く嬉しいですねwww
■ レーザークラッドバルブシートが非採用!?
動画を見ていて「あれ?」ってなったのがレーザークラッドバルブシートではなかったこと。今さらになって気が付いて、この数年のトレンドじゃなかった??と調べてみたところMotor fan TECHやCar Watchの記事で既に取り上げられていました。(完全に見落としてた・・・)
こちらに関しては『今回のクルマは世界中で競技に使っていただいたり、レースに使っていただいたり、多分カスタマイズされるニーズがあるのだろうなと思っています。そこがレーザークラッドだとやりにくいです。例えばシートを打ち替えるであるとか、そういった保守、メンテ、チューニングを含めてのものになります。そのような余地を今回は、残したということです。そのために“少しの工夫”で乗り越えています。詳細は量産まで待ってください』(参考:Car Watch)・・・との事でした。
何とも言えませんが、GRヤリスがローラーロッカーアームとテーパーバルプスプリングの組み合わせを採用した理由は、1.6 L エンジンに対する高出力化へのアプローチだけではなく、SP規格 0W-20のオイルを使用していることにも関係がありそうですね。
あくまでも想像でしかものを言えませんが、環境側面からSP規格の低粘度オイルを使った上で、弊害として出てくる混合もしくは境界潤滑領域での低フリクション性を低~高回転までカバー可能な設計が必要となったのか?でしょうか。
・・・むしろ、レーザークラッドバルブシートを使わなかった理由などを加味すると、量産車として最適化をしていった結果としてそれぞれに採用する必要があったと表現するべきなのかもしれません。
次は足回りについてでしょうか。
その他にも気が付いたことなんかがあったら、
だらだらと書いていこうと思います。
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GRヤリス | 日記
Posted at
2020/08/23 18:46:17
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