2021年01月16日
雪道と駆動形式と
『FRでスキー場に行ったの?良くFRで行こうと思ったね。スタッドレス履いてても坂道登れないでしょ。』
そんな事を度々言われる事があります。僕は滅多に動画の類を貼りませんが、面倒なので下記の動画を参考にしたいと思います。この動画はJAFがYoutubeに投稿してくれているものです。(多少はツッコミどころというか説明が足りない部分が無い訳でもありませんが、普通に説明に使うには十分以上だと思います。)
■ JAFユーザーテスト
今回のblogに取り上げる内容としては、
雪道に適した駆動形式はあるのか?という内容に対して書いていきます。
僕はGRヤリス(AWD:4WD車両のこと)が納車されるまで10年ほどNC型のロードスターを所有しており、その他にはFC(RX-7)も一時期所有していた事があります。運転免許を取得してからの大半をFR車両で過ごしていました。
友人のWRX STIやランサーエボリューションXなど運転させてもらう事も度々ありましたが、自分自身で購入した車は家族のアシ車としての軽自動車(FF)を除くとFRしか購入していませんでした。
山梨県という地域は降雪する事が割とあって長野県にも近く、比較的スキー場などのアクセスは恵まれています。そんな背景もあって小さい頃はスキー・・・会社に入ってからは会社の先輩の影響でスノーボードにハマり、最低でも1シーズンに2~3回は滑りに行きます。
僕がウインタースポーツをすると聞くと『ロードスターでスキー場なんて行けるの???』と言われる事が結構あります。行けます。装備があれば殆どのスキー場に行けます。超余裕です。イージーモードです。むしろ行けない方がおかしいです。
FRで雪道は危ない
そう仰る方が一定数いらっしゃいますが、それはFRの特性を理解しないで適当に運転しているか、運転が下手なだけです。FFに対してFRが劣っているかと言う話になれば大差はありません。
良く言われる『FRよりFFの方が重量配分の関係でトラクションが掛かりやすい』についてですが、時と場合に寄ります。平地ではそういった場合も確かにあるでしょうね。でもそれはトラクションを掛けやすいか否かと言う点で見た場合に有意差が出る程なのでしょうか。いいえ、そんな有意差はありません。
その程度の差では、有意差と言えるレベルではない為です。
FRでトラクションを掛けにくいと仰る方は「FRだとリアが滑ってしまって踏めない」と言う方が一定数いらっしゃいますが、もう一度書きます。『FRでの雪道の走らせ方を分かっていない(不慣れ)か、下手なだけです。』
もちろん状況によりますが、FFでもFRでも駆動輪をスリップさせながらトラクションを保つのが雪道での走らせ方になります。リアが思いっきり出てしまう(オーバーステア)ような踏み方はただの危険運転です。
恐らく、この手の発言をする方はFFだったら『アクセルを踏み込んでもリアが出ないから走りやすい』と言いたいのでしょうね。ちなみに電制(電子制御)が介入しなかった場合の、この走り方ではアンダーステアで曲がり切れずに膨らんで対向車線にまっしぐらです。
・・・とは言え、昨今の電子制御系はかなり優秀ですので、アクセルをある程度踏みっぱなしにするのは間違いでもないのですが。それを言い出すとFRも似たようなものですから、駆動形式において有利不利とは一概に言えません。
つまり、雪道を走行する際にFFかFRかなど些細な差でしかありません。
本当に必要とされるのは、もっと別の内容です。
それでは雪道を走る際にはどうすれば良いでしょうか。それは滑りやすい路面に対して、如何にトラクション(駆動力)を掛けれるかという事です。ごく当たり前の内容を下記に挙げますと・・・
① スタッドレスタイヤ(+チェーン)を履く
雪道に対してスタッドレスやチェーンを使う理由は、駆動輪が路面へときちんと駆動力をかけるためです。スタッドレスはタイヤのコンパウンドやタイヤパターンによって圧雪路などに対して一定速度の範囲内であれば効力を発揮します。
チェーンというのは、スパイクタイヤが大半の地域で使用出来なくなった現在において圧雪路などに対して最も効果的な道具です。スノーソックスやスプレータイプのチェーンを含める人がいらっしゃいますが、あれらは都心部などでの降雪時には役に立ちますが降雪量の多い地域・・・雪山などに行けるかと言われたら当たり前ですが無理があります。
樹脂チェーンなども金属チェーン同じで、スパイク同様に物理的に雪面に食い込ませることで(スリップを減らして)トラクションロスを抑えます。
当然ですがFFなのにリアタイヤに、FRなのにフロントタイヤにだけ装着しては、チェーンを装着する意味が殆どありません。
厳密にコーナリング時などを考慮すると無意味ではありません。『トラクションを掛ける』と言う意味では駆動輪に使用しなければ意味は無いのは事実ですが、車の非駆動輪にチェーンを装着する事は『バイクのスパイクタイヤ』と同じでコーナリング中の非駆動輪をグリップさせることで姿勢の安定に繋がるからです。
そういった意味では、FFでもFRでもチェーンは前後に装着するのが良いと思います。もっとも・・・値段とか考えると頭が痛くなりますけれどね。
② LSD(可能なら機械式LSD※)を入れる
※ LSD=デフと呼ばれます。また、オープンデフと言うのは
一般的にデフが入っていない状態です。
次にLSDと言うのは、車の内輪差が発生した際に調整する部品を指します。(曲がる時に外側と内側では当然ですがタイヤの回転数が変わります。その差を調整する部品です)一般的にはLSDが入っていないオープンデフの車両が大半ですが・・・こうした車両は左右どちらかがスリップした場合にアクセルを踏み込んでも、空転するタイヤが早く回るだけで駆動力が伝達しなくなってしまいます。
特に機械式などのLSDが入った車両はトラクションが非常に強く、左右どちらのタイヤがスリップしても駆動力を失い難いのです。
③ AWD(4WD)車両に乗る
JAFの動画を見て頂ければ、雪道に対してAWDが強いのを分かって頂けたと思います。AWD車両はFFやFRに対してトラクションが掛かりやすいのです。前が滑っても後ろが、後ろが滑っても前にトラクションが掛かっていれば車が前に進んでくれるからです。
④ ある程度の車高
当然ですが車高短の車が雪道を走行するには適していません。フロントバンパーの除雪機能が最大限に発揮されて、除雪車に☆大☆変☆身☆してしまうからです。もれなくフロントバンパーが割れ、色んな意味で悲惨な結末が待っています。
念の為に書いておきますが、フロントバンパーなどに雪の抵抗が掛かると単純にブレーキを掛けずとも減速してしまいます。雪がパウダースノーだろうが何であろうが抵抗が大きくなれば、最終的には止まってしまいます。
SUV系が有利とされるのは、雪の抵抗を殆ど考えなくても済むという・・・この辺りが理由でもありますね。
■ まとめ
そんな訳で最強とも言える組み合わせは、機械式LSDを組んだAWD車両にスタッドレスタイヤを履かせてチェーンを付けた状態です。まさに鬼に金棒です。左右どちらかがスリップしても機械式LSDでトラクションロスが減り、前後どちらがスリップしても反対側にトラクションがかかっているからです。
これにはFFだろうと、FRだろうと、MRだろうと、RRだろうと勝ち目はありません・・・そんな無敵に思える組み合わせであっても、どうにもならない状態が存在します。
重さです。
AWD車両の大半は構造上の都合によって、車重が増えてしまいます。安全装備の義務や衝突安全時の対策などフレームに制約が無かった当時の設計で、恐ろしく軽かったGC型のインプレッサWRXであっても1220 kg付近です。
話が少し脱線してしまいますが、軽量なAWD車両としてこれを比較対象の例に考えれば、現在の制約だらけで雁字搦めにされた中で装備重量込み1280 kgで市販可能にしたGRヤリスの異常性が良く分かると思います。
ちなみにランサーエボリューションやインプレッサWRX STI系列は、上記の制約などの都合もあって重量がどんどん増えていき最終的にはどちらも1500 kg級になっています。極一部の競技モデルで軽量化を施されたモデルもありますが1400 kg級と言うには無理があり、四捨五入せずとも殆ど1500 kg級の車である事に変わりはなく、限定モデルで販売数量などが決まっている為に一般的に気軽に買える車ではありません。現在では更にプレミア価格です。
そういった意味では、最軽量なGC型WRX STIとGRヤリスでは、約60 kgの差がありますがGC型は1200 kg級・・・GRヤリスは1300 kg級というところでしょうか。それですら、同条件で設計した現行型において1500 kg級と1300 kg級で200 kgもの差が出るのは驚異的だと思います。
無理だと思うけどスバルさんも同じぐらい本気で似たような車を作ってみてはどうですかね。(三菱には既に期待もしていない)技術開発が疎かになっていて、名機だったEJ20に最後までしがみついていたメーカーには無理だと思いますが。本気だったらFA20の環境側面を改良出来たんじゃないですかね?まぁ、この辺りが資本力とメーカーの本気度合いというやつでしょう。
話を戻しますが、JAFの動画にもある通り重量が多い車には重さに見合った慣性が働いてしまいます。これはブレーキをどこまで強化したところで雪道に対しては無力です。これは車がブレーキをかけた時に減速する仕組みを考えれば、結局はタイヤと地面の摩擦力に依存するからです。それ故に軽い車ほど慣性モーメントが少なく制動距離も減らすことが可能な訳です。
雪道では路面の摩擦力が低下する為に1200 kgの車と1500 kgの車では、同条件のスタッドレスやチェーンを装着していてもはっきりとした差が出てしまいます。(1200 kgの車の方が短い距離で止まる事が出来ます)これは雪道を走る際にコーナーを曲がる時にも大きく関係してきます。特に下りのコーナーですね。
割と見かける事の多い光景ですが、雪道で事故を起こしている車には意外とAWD車両が居ませんか??・・・そうですね。もっと具体的に書くとコーナーなどで側溝に落ちていたり、ガードレールに刺さっていたりでしょうか。
上記の大半はAWDにスタッドレスだからと過信した結果です。登りに対してAWDの優位性は揺るぎませんが、下りに関しては別です。駆動形式による有意差は殆どありません。
さて、上記の内容を踏まえた上で機械式LSDが組まれたFR駆動のロードスター(1100 kg)でスタッドレスタイヤにチェーンを携帯していた場合、雪道を走行する際に何か問題になるでしょうか。僕には、特に問題を感じた事がありません。
余程の急斜面であっても、多少の助走が付いていればアクセル踏みっぱなしで登って行けます。下りも車体の軽さから慣性が少なくて済み、コーナー前のブレーキ時に4輪全てで路面を掴む事になるのでFRは雪道において曲げやすいのです。そもそも下りのコーナーでスピードを出すのは自殺願望のあるバカがやることです。
そもそも雪道を走る際に必要な事は一定以上の速度を保つことが重要です。『タイヤがたまにスリップするから減速が必要』な訳ではありません。雪道が滑るのは至極当然のことです。
話が脱線してしまいますが、これはどれほど高価で優秀なスタッドレスタイヤを履いていようが、金属チェーンを使用していようが同じことです。そして、先ほどは一定以上の速度を保つことと書きましたが、保つという事は速度を上げ過ぎてもいけません。
これも当然のことですが、スタッドレスタイヤにもチェーンにも使用する速度域という物があり、その速度域の範囲内で使用しなければ意味がありません。具体的には50 km/hまでの速度で運用するようにと書かれているチェーンで80 km/h以上で走行したらどうなるでしょうか?チェーンが切れます。
スタッドレスタイヤだからとアイスバーンが点在するような雪道を50 - 60 km/h以上で走れるか?走る事は出来ますが、何かあった時に止まれません。曲がれません。雪が降った時にスタッドレスタイヤ装着車が事故を起こしているのは、原産地不明の速度超過で走行している頭の悪い輩100 %です。(巻き込まれた場合は除きます)
各メーカーが製造しているスタッドレスタイヤの商品説明には、氷上テスト時の条件が脚注にて、しっかりと記入されています。例えばBSの新型VRX2では氷上ブレーキ試験において下記のように詳細が記載されています。
制動初速度:25 km/h
タイヤサイズ:195/65R15 91Q
リム:15×6.5J
制動方法:ABSブレーキ
車両:プリウス(DAA-ZVW55)
排気量:1797cc
駆動方式:前輪駆動
空気圧:フロント250kPa/リア240kPa
乗員:1名乗車相当
ちなみに氷上コーナリング時のテスト条件の速度は13 - 20 km/hです。実際に一般道で、そこまでスピードを落とさずに曲がる事は殆どありませんが、メーカーが販売するまでに検証した結果として最もパフォーマンスを発揮する速度域がその辺りであるという事です。
こういった事情を正確に把握した上で運転する事が重要です。
同じ条件であればFRだろうがFFだろうが問題を感じる事はないでしょう。
ただ、諄いようですが個人的には『軽量である事』が前提です。1700 kg近くあるクラウンやスカイラインで同じことをしろと言われても、ブレーキに対して車体が慣性で止まれないためにやりたくはありません。これはSUVのRAV4やX4と言ったAWD車両であっても同様にやりたくはありません。
ちなみにこの辺りの点から導き出される最強の車とは、ぶっちゃければジムニーです。ホイールハウスの隙間も十分でチェーン脱着がし易く、軽くて、降雪量の多い地域でも雪の抵抗を受けにくく、AWD車両です。フルタイムAWDではありませんが、十分過ぎるほどに走破性が高い小さな巨人です。ジムニーシエラだったら更に良いかもしれませんね。
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Posted at
2021/01/16 23:58:42
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